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My Pick 2023このディスク2023(海外編)No. 309

#02 『Peter Brotzmann / Sabu Toyozumi – TRIANGLE, LIVE AT OHM, 1987』
『ペーター・ブロッツマン/ サブ豊住-トライアングル〜ライヴ・アット・オーム』

text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌

NoBusiness Records NBCD 160

Peter Brötzmann – tenor saxophone, tarogato
Sabu Toyozumi – drums

1. Spinal Column  7:21
2. Toh-ro  8:00
3. Yuh-ru Yuru  5:52
4. Membrane System 2:31
5. Triangle 3:24
6. Valentine Chocolate  4:29
7. Depth of Focus. 4:19
8. Peter & Sabu’s Points   6:55

Recorded live on December 4th, 1987 at OHM, Koiwa, Tokyo, Japan by OHM Hiroshi
All music by Peter Brötzmann and Sabu Toyozumi
Mastered by Arūnas Zujus at MAMAstudios
Design by Oskaras Anosovas
Photos by Tatsuo Minami (of Sabu Toyozumi) & Kazue Yokoi (of Peter Brötzmann). Photo of Sabu Toyozumi and Peter Brötzmann by Aya Ogawa
Cover art by Sabu Toyozumi


リトアニアのインディ NoBusiness Recordsと防府のインディ ChapChap Recordsが手を携えたシリーズ第2期の終盤を飾る1作、奇しくもペーター・ブロッツマン(本年:2023年6月22日没)の遺作ともなった。このシリーズはもっと評価されて然るべきと思われる。

以下、All About Jazzに掲載された Mark Corrotoのレヴュー抄訳。
『Triangle-Live At OHM, 1987』は、ペーター・ブレッツマンの来日公演を収録したもの。フリー・ジャズの巨匠、サブ豊住との共演である。彼らはこれが初共演ではない。この2人は、『Live In Japan 1982』(Improvised Company,1999年)、『Live In Okayama 1987』(Improvised Company,2000年)などもリリースしているが現在入手不可能。。
リトアニアのNoBusiness Recordsのおかげで、1987年12月に東京で行われた演奏の記録を手に入れることができるのだ。NBRはすでに、マッツ・グスタフソン、ポール・ラザフォード、ワダダ・レオ・スミス、阿部薫、佐藤允彦、高橋悠治とのデュオを含む、豊住のアルバムをリリースしてきた。ブロッツマンの生誕2年後、1943年に生まれたこの日本人ドラマーは、サックス奏者のペーターとは極めてパラレルなキャリアを歩んできた。フリー・ジャズとノイズを探求する彼は、ミシャ・メンゲルベルグ、灰野敬二、大友良英、バール・フィリップス、ハン・ベニンク、フレッド・ヴァン・ホフらとも共演してきた。
ここでの豊住のアプローチは、ペダル・スティール・ギタリストのヘザー・リーに似ている。リーのように、彼はペーターの逞しいサウンドに対抗しようとしてブロッツマンに真っ向勝負を挑むことはない。ブロッツマンを中心とした安定したアタックを維持し、偉大なブロッツマンのアプローチをしばしば和らげるのが、彼のアプローチであり、サックス奏者に確かな効果をもたらしている。タイトル曲では、豊住の静かなパルスがサックス奏者によってコピーされる。ブロッツマンがホーンの高音域を探っているときでさえ、ドラムはためらい、サックス奏者もためらう。豊住が演奏に空間を使っていることから、ブロッツマンがテナー・サックスからタロガトーに持ち替えたのも、この影響を受けていると考えられる。「Valentine Chocolate」、「Toh-ro」、「Depth Of Focus」はこの楽器タロガトーをフィーチャーしているが、ブロッツマンはしばしば2つの楽器を持ち替えている。彼らが対決するのは、短い <Membrane System>である。豊住の激しいドラミングがペーターの特徴的なマシンガン・アタックに火をつける。しかし待たれよ、ドラムがサックスを優しく静かな終結へと導くのだ。この2人の巨匠が互いの音楽をリスペクトしていることを証明するマジックがここに見て取れる。


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稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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