音の先にあるもの by 千葉史絵
Text by Fumie Chiba 千葉史絵
先日亡くなられたPalle Danielsson氏のご冥福を心よりお祈りいたします。
この追悼特集に一筆書かせていただくにあたり、氏や氏の音楽に詳しい方がたくさんいらっしゃる中で大変恐縮ですが、私なりに彼の音源や曲についての思いを綴らせていただきます。
私がPalle氏(以下敬称略)の演奏をはじめて聴いたのはKeith Jarrettリーダーの、ヨーロピアンカルテットのアルバム「My Song」からになります。ご存知のとおり、同カルテットは「Belonging」の方が先にリリースされているので、私は遡って「Belonging」を聴いたことになります。そしてこのカルテットが大好きになった私は、その後「Personal Mountain」を聞くにいたります。Keithのピアノが大好きな私が彼のアルバムの中でも「Death and the Flower」「Melody at night with you」と同じくらい聴いているのが、「my song」でKeithのピアノをトランスクライブしながら幾度となく聴いて、歌心溢れるPalleのベースといえば真っ先に思い浮かぶアルバムになりました。
これを書きながら、他にどんな作品に参加されているのか、自分が聴いてきた中で記憶を辿っていったら一つの繋がりが見えてきました。
Keith Jarrett,John Taylor, Michel Petruccianiといった私の好きなピアニストたちと共演しているということ。
Michel PetruccianiはEliot Zigmund(ds)とのトリオ作「Pianism」で、John TaylorとはMartin France(ds)とのトリオ作「Angel of the Presense」が好きで、そしてこのアルバムでは私の大好きなKenny Wheelerの曲、<Introduction to No Particular song>が入っているのがKenny Wheeler好きとしては嬉しくて何度もリピートしてしまうほどの思い出のアルバム。
私はこれらを聴いた時は知らなかったのだけど、後にKenny Wheelerの<Everbody’s Song But My Own>の歌詞を調べるのにいろんな方の演奏を聴き漁っていた時、YouTube でこの曲をJohn TaylorとPalleとPeter Erskineのトリオで演奏しているライブの映像にばったり行き当たりました。それはそれは自由に羽ばたくJohnのピアノに空間を持ちながらより添うPalleのベースと、ドラムの素敵なトリオでした。(「Peter Erskine Trio / Live at Jazz Baltica」としてDVDで発売されている。)
このトリオでのCD 「Time Being」,「You Never Know」もお勧めのアルバムです。
残念ながら私がPalleの演奏で聴いたのはこの辺りだけなのですが、彼のリーダーアルバムもヨーロピアンカルテットでも私がまだ通ってこなかった盤もあるので、これから聴いていきたいなと思っています。
数々の名盤での演奏を通して彼のあたたかく懐深いベースが、ピアノやドラムとの会話や距離、音楽の物語を進めるには、ということを私に教えてくれたことに、そしてたくさんの素晴らしい音楽を残してくれたことに、心から感謝を込めて。
R.I.P. Palle Danielsson.
千葉史絵 Fumie Chiba : ピアニスト、作編曲家。
埼玉県出身。6歳よりクラシックピアノを始める。大学卒業後ジャズピアノを大石学氏、西由貴子氏に師事。作曲を現代音楽作曲家の池田悟氏に師事。
現在都内ライブハウスでオリジナルやスタンダードのライブを行う。ヤマハPMS講師。
2009年6月27日、トリオでアルバム「Tip of dream」発売。
2009年横濱JAZZ プロムナードコンペティションにて自己のトリオで出場、JAZZクラブ賞受賞。
2012年9月John Lennon Songwriting Contestにてオリジナル曲“Echo”がファイナリスト入賞。
2013年7月T-TOC Records CADENZAレーベルよりトリオのCD『Echoes』発売。
2014年International Songwriting Competitionにてオリジナル曲“ringlight”がセミファイナル受賞
2015年7月、ソロからセプテットまでの編成で臨んだミニアルバム『Rougequeue』発売。
2016年、all originalで管楽器とボイスを含めたセクステットで録音した『Beautiful days 』発売。
2017年International songwriting competition にて“朝焼けの歌(ASAYAKE)”がセミファイナル受賞。
ウサギ好き。カレー好き。整理整頓が苦手なA型。
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