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R.I.P. 杉田誠一No. 324

杉田誠一さんへ  by 川島 誠

撮影:潮来辰典

杉田誠一さん
先程連絡があり、杉田さんの訃報をきいた。

8月21まで杉田さんから連絡があり、毎日のように近況報告を受けて、時々、痛みに耐えられず、痛い!とだけメッセージが届いた。
Bitches Brewの今後をどうしたら良いか、僕に継いでくれないかとか、いろんな相談を受けていた。
復活Liveは僕と纐纈之雅代さんの共演がみたいとずっと言ってたので、必ず実現しましょう、一度面会に行きますねと言ったあの電話が、最後の会話になってしまった。
その後、纐纈さんと8月末に一緒にお見舞いに行ったのだけど、その日がちょうどオペになってしまって、会えずに手紙だけ置いてきた。
術後こちらから、何度も連絡したのだけど、返信はなく、きっとリハビリ頑張ってるのだと信じて、快気祝いに杉田さんが大好きだった白楽の鰯料理屋に行って景虎やりましょうねと、メッセージを残し、返信をずっと待ってたんだけど。
9月9日に、杉田さんは亡くなった。
享年79。

心より深くご冥福をお祈り致します。

僕が最初にBitches Brewを訪れたのは、友人にゲスト参加してほしいと言われてきたのが初めて。
杉田さんの独特な目つきを覚えてる。
見透かされてる感じがした。
その後すぐ杉田さんから、浦邊雅祥さんと共演しないかと誘われて行なわれたDUO。
あれが僕にとっては今までで最高の試練と経験になった。
浦邊さんは僕が最も尊敬する先輩で、まさかこんな形でいきなり共演する事になるとは思わなかったけど、「Bitches Brewはこういう”場”なんだよ」という杉田さんの言葉が記憶に残っている。

それから「ソロをやる場として使って欲しい」と杉田さんに言われて、月に一度ステージに立った。

Bitches Brewには厳しさがある。
狭い空間だけど、床の木の鳴りが他には無い、なんか冷たくキーンと響く良い反響があった。
自分の音を真っ直ぐに見直すことができる、あの空間が僕は大好きだった。

ある日、杉田さんとちょっとした事で、口喧嘩になった。
僕は当時、今もあまり変わらないけど、、僕のステージを観に来るお客さんは2、3人で、0の日もたまにあったので、お店に迷惑がかからないかと、杉田さんにその事を相談したら、「観たいのは俺なんだから、そんな事気にするな!そんな気持ちでいるならステージにもう立つな」と真剣に叱られた。

それから僕は、しばらくの間Bitches Brewのステージには立たなかった。

当時の僕は、ほんとに何もわかってなくて、その言葉の意味もわからないまま、ただただ、自分に対してとても悔しい気持ちになり、、今はまだあそこでは吹けない。他で色々現場踏んで成長したら、またいつか絶対杉田さんが驚ろくような音を聴かせてやる!と思い、気づくと4年半が経っていた。

ある日、「あ、ソロをBitches Brewで吹きたい」と急にあの場所で自分の音を聴きたくなって、勇気を出して杉田さんに連絡した。
杉田さんの一言目は「待ってたよ」だった。
ぼくはそれからソロのホームとして、Bitches Brewのステージに立つ覚悟をした。
いつだったか、お客さん0の時があって、杉田さんが「今日はもういいんじゃない」と言い出して、冷蔵庫から景虎出してきて、「今日は吞もう、ゆっくり話したい」と言って、僕も”そうですね”と言って
近くのマグロ問屋まで刺身を買いに行って、最高に楽しい、ただの呑み会をした。

杉田さんの言葉はどこか品がある。
言葉にしない時は真剣に見てる。
杉田さんはきっと僕の音の変化を一番わかってたんだと思う。

それから長い間、ソロのホームとして何度もあの床に這いつくばり、その度に杉田さんのあの笑い声と、厳しい眼差しが僕の中には残っていった。

今は本当にさみしいけど、ぼくらはあなたにいつまでも音を届けます。
それしかできないからね。

杉田さん、、長い間ほんとにありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
今度鰯と景虎やりに、白楽に行きます。
いつものように一緒に店の景虎全部呑み干しちゃいましょうね。

3月3日 自宅にて

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川島誠 Makoto Kawashima (Alto sax)

1981年4月10日生まれ。 2008年からアルトサックスの即興演奏をはじめ、2015年、P.S.F. Recordsからソロ・アルバム『HOMO SACER』を発表する。 自己のレーベルHomosacer Records(ホモ・サケルレコード)主宰。
横浜白楽Cafe&Bar BitchesBrew  月一レギュラーソロ公演
埼玉県坂戸市 「高坂橋」にて定例公演等
ソロを中心に国内外で活動を続けている 。

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