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R.I.P. 及川公生No. 325

基本はライブ録音です by オノセイゲン

録音エンジニアの大先輩、及川公生さんの録音現場は何度か見せてもらったことがあります。1978年ボクは音響ハウスの映写係をしていました。お手本となるベテランの録音エンジニアやミュージシャンがお客さんとして録音しにくるわけですが、セッティングを見るだけでも新人アシスタントにとっては、お手本となります。音を聞いてなるほどと納得するわけです。ても本当のことを言うと及川さんのセッティングはよく覚えていません。と言いますか、すごく普通だったのを覚えています。マイクとは正直なもので、その通りに録音されます。つまり下手な色付けやデフォルメはせずに、演奏で起こっていることをそのまま録れば、及川さんの録音になります。そこには音楽があり、あのマイキングを分析するなら、言われてみれば当たり前に「いい演奏をいい音で」捉えられているのです。ジャズのレコーディングの理想的なやり方で、しかもこれがいちばん素晴らしい仕上がりになります。あとからではなく、ミュージシャンのライブ演奏と同時に一発録音でいい音のマスターテープが出来上がります。

及川さんの学生や若い方への指導もとてもいい評判を聞きます。ボク自身は習ったことはありませんが、今にして思えば基本は若い頃に見た及川公生さんの方法と同じなのです。80年代に入りボクの場合はビル・ラズウェルや近藤等則といったいわゆる普通の音ではない、ロックでもないテクノでもない、言うなれば新しいスタイルを求められました。リアルタイムに空間の響きやサンプリングやテープコラージュをモンタージュしていくやり方です。それでも基本はライブ録音です。目の前で起こっている「いい演奏をいい音で」そのまま録れば永遠に名盤が残るのです。


録音エンジニアとして渡辺貞夫「ELIS」(85)、清水靖晃「うたかたの日々」(82)、坂本龍一「戦場のメリークリスマス」(82)、ジョン・ゾーン、マーク・リボウほか多数のアーティストのプロジェクトに参加。一方でスイス、モントルー・ジャズフェス4回出演、『COMME des GARÇONS SEIGEN ONO』ほかアルバム多数。アーティストとして40周年を迎えた。「SACDといい音のVinylレコード」の推進者。
Saidera Records、Saidera Paradiso Ltd.主宰

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