音の綺麗さとダイナミクス by 伊藤 潔
text by Kiyoshi Ito 伊藤 潔
ジャックが亡くなったと聞き、驚きと残念な気持ちになりました。彼は、僕のプロデュースで2枚のアルバムに付き合ってくれました。その思い出を書いてみます。
最初のアルバムは、1970年4月、僕がCBSソニーのA&Rだった時、ジャックのリーダー・アルバム『Have You Herard?』です。
ベニー・モーピン、ゲイリー・ピーコック、市川秀男のメンバーで、都市センター・ホールで録音しました(まだ会社のスタジオが無かった)。上司の金井さんの援助もあり、ドラマーのアルバムを作ることになりました。ジャックと相談してベースは2月に録音した『Eastward』のゲイリーで勿論 OK、ピアニストは数名の候補を聴かせて市川さんに決まりました。ジャックの3曲、ベニーの1曲、4曲を1日で録りました。ジャックの音の綺麗なこと、ダイナミクスの凄さに驚きました。当時のジャズ、イン&アウトをフリーに演奏したアルバムになったと思います。ゲイリーがセッションの進行をサポートしてくれ、とても助かりました。
次のアルバムは1983年4月、ニューヨークのA&Rスタジオで、アート・ファーマーの『Maiden Voyage』(Interface/日本コロムビア)です。アートはEast Windからの付き合いになりますが、僕が始めたInterfaceレーベルにも快く参加してくれました。今作は、ジャズ・ミュージシャンが書いた名曲を集めて新しいコンセプトで作りたい。リズム・セクションにはロン・カーターとジャック、佐藤允彦さんにピアノとストリングスのアレンジをお願いしました。ジャックは、アップステートに移っていましたのでグラマシーパーク・ホテルに泊まり、リハーサルからトラッキングの三日間、アートのために素晴らしいサポートをしてくれました。それはロンも同じで、彼等のジャズの先輩に対してのリスペクトをとても感じました。また、佐藤さんのストリングスの編曲が素晴らしく、コンサート・マスターを頼んだデイビット・ネディアンと14名の弦の名手達が、セッション終了後に拍手してくれたことは忘れられません。
1987年に鯉沼(利成)さんが”Live Under The Sky”で”Tribute to John Coltrane Night”を一回公演した時、Co-Producerとしてライブ・レコーディングに参加しました。ウエイン・ショーター、デイブ・リーブマン、リッチー・バイラーク、エディ・ゴメスとジャックという凄いミュージシャン達が、コルトレーンの曲を演奏しました。
ジャックとの仕事はこれが最後となりました。
伊藤 潔(いとう・きよし)
1946年7月24日名古屋市生まれ。慶応義塾大学卒業後、’69年 CBSソニーに入社。’73年退社までに、渡辺貞夫、菊地雅章、増尾好秋、笠井紀美子、鈴木良雄、Gary Peacockをプロデュース。また、A&Rとして『Miles in Tokyo』、『Weather Report in Tokyo』、『Bill Evans in Tokyo』を制作。1975年、鯉沼利成氏の「あいミュージック」に参加、East Windでの内外の活躍を経て EWEレーベルを通じて綾戸智絵をトップセラーに押し上げる。その後、One Voice レーベルでの制作もあり、現在までのプロデュース作品は約200枚。日本を代表するジャズ・プロデューサーとして頂点に立つ。著書に『My Dear Artists~ジャズ・レジェンドたちとの邂逅』(シンコーミュージック)。


