謎多きドラムに惹かれて30年 by 橋本 学
Text by Manabu Hashimoto 橋本 学
現在は主にジャズ系・アコースティックな音楽の現場に身を置いていますが、演奏に初めて参加したのは大学のサークル・ジャズ研究会に入ってからでした。
自分の所属した横浜国立大学モダンジャズ研究会の先輩はドイツのECMレーベルの人気が高く、様々なECM音源を聴く機会がありました。
その中で最も心に響いたのはゲイトウエイ(ジョン・アバークロンビー(g)=デイヴ・ホランド(b)=ジャック・ディジョネット(ds))の「ゲイトウエイ」(1976年)でした。
『John Abercrombie / Gateway』音源
ベースの和音リフからの極めて抽象的な8ビート、ジャズだかロックだかジャンルのキワキワの地帯をいくこの音楽の虜になりました。ジャズという音楽から発生したものではあるものの、アバークロンビーのギターもエフェクトがかかり、極めて自由な音楽です。
この作品でディジョネットのドラムにハマり、キース・ジャレット・トリオ諸作、パット・メセニー(g)「80/81」、マイケル・ブレッカー(ts)「マイケル・ブレッカー」、チャールス・ロイド(ts)「フォレスト・フラワー」など、あらゆるディジョネット参加作品を聴きました。
自分がジャズのドラムを始めた当時(1995年頃)のジャズ・ドラム・ヒーローだと昔の人(アート・ブレイキー、フィリー・ジョー、ロイ・ヘインズ)から後の時代(エルヴィン・ジョーンズ、トニー・ウィリアムス)さらには現代のドラマー(ジェフ・ワッツ、ブライアン・ブレイド)ですが、自分はダントツでジャック・ディジョネットがヒーローでした。
同じくドラマーなのでコピーしようとしましたが非常にコピーが困難というか、謎なフレーズが多数なドラマーです。これはディジョネットがピアノ演奏が達者な事と大いに関係があると思います。また、ネイティブ・アメリカンの血筋である事も彼の音楽性に反映されているのではないでしょうか。
来日ライブに何度も足を運びましたが、中でも忘れられないのが河口湖で行われたハービー・ハンコック(p)の「ニュー・スタンダーズ」のライブでした。
Herbie Hancock The New Standard All Stars – Japan 1996
信じられない程絶好調のディジョネットの演奏、これだけ個性的なメンバーでありながら抜群のアンサンブルでした。
「ブルー」というオリジナル曲がありますが、その曲のモチーフについてインタビューで問われた時に「環境問題の事を考えると、ブルーになるだろ?そういう曲だよ」という答えがとても印象に残っています。
リーダー作では「パラレル・リアリティ」が好きでした。
パット・メセニー(g)は「80/81」からの繋がりで、ハービー・ハンコック(p)との共演は後に「ニュー・スタンダーズ」へ間違いなく繋がっています。実に謎な音楽ですが(笑)、歴史的に凄く意味のあったコラボレーションだと思います。
橋本 学 Manabu Hashimoto
1976年生まれ。大学卒業後プロ活動へ。2001年横浜ジャズプロムナード・コンペティションで参加バンドがグランプリ受賞。2005年よりTrio Zero(伊藤志宏piano、織原良次fretless-bass)を主宰、作・編曲を手がける。2010年台湾・台中Jazz Festivalにて公演。2014年11月スイスにて4本の公演に参加。2016年長野県富士見町へ移住、中部甲信地方発信の活動を開始。以後、長野以外の地域発信のユニットにも参加、それぞれレコーディングもする。2020年Trio Zero 1st album「Energetic Zero」リリース。2023年、ピアノ福井真菜とのユニットManna&Mana「Metamorphose」をリリース。2025年より地元・関西に移住。
