#07『青木希音+小林春日+杉本舞 / miminari』齊藤聡
Text by Akira Saito 齊藤聡
Photos by Akira Saito 齊藤聡 and m. yoshihisa
Asian Improv Records
https://www.asianimprovrecords.com/product-page/air124
Kioto Aoki 青木希音 (taiko, tsuzumi)
Haruhi Kobayashi 小林春日 (electronics & voice)
Mai Sugimoto 杉本舞 (saxophone, flute & toys)
シカゴ在住の3人によるグループのデビュー盤である。リリースはシカゴ・エイジアン・アメリカン・ジャズ・フェスティヴァルの記念すべき第30回開催のタイミングでなされた。名前の通り、アジア系アメリカ人たちのアイデンティティを問いなおす機会でもある。このフェスティヴァルでのパネルディスカッションにおいて筆者も末席に連なり、演者たちの「エイジアンネス」がどこからくるのだろうかという疑問を投げかけてみた。サックスのフランシス・ウォングやコントラバスのタツ青木らの答えは「社会的な文脈」、すなわちおのおのが蓄積してきた経験だ、というものだった(*1)。加えて、miminariのメンバーも興味深いことを発言した。サックスの杉本舞は、アジア系アメリカ人であり女性アーティストでもあるというマイノリティとしての自由な表現について。太鼓の青木希音は、マイノリティという枠にはめ込まれることのない、個のアーティストとしてのありようについて。
したがって、miminariに見出せる特質をエイジアンネスだと決めつけるつもりはない。むしろ、シカゴのコミュニティで出会いグループを組んだ偶然と必然がどこにあるのか、そんなことを意識しつつ愉しみたい。
サウンドはおのおのが異なるバックグラウンドを持つこともあって、きわめて独創的だ。
時間を前に進める太鼓のグルーヴには聴き入ってしまう。かつて沖縄の仲宗根”サンデー”哲の太鼓が大きな円環とともにある時点でぴたりと戻ってくるさまを観て、山下洋輔は「エルヴィン・ジョーンズのようだ」と驚いたという。もちろん個性も出自も異なるが、青木希音の大きく柔軟なグルーヴにはそんなことを思い出させるみごとさがある。
より時間の流れを踏みしめて動くのが杉本舞のサックスとフルートだ。粘りつく重さも浮揚する軽さもあり、サウンドの上下左右をいつの間にか移動しているようでおもしろい。
小林春日はエレクトロニクスによって時間と記憶とを操ってみせる。自身のヴォイスも他の音要素もエーテルとなって三者を取り巻き、聴く者は外からのサウンドを体感するだけでなく、個人的ななにかを思い出す。そして不意に驚きがやってきて、意識の内外の往還を繰り返すことになる。
「越境」などという使い古されたことばを持ち出さなくてもよいだろう。
(*1)拙稿「第30回シカゴ・エイジアン・アメリカン・ジャズ・フェスティヴァル アジア系アメリカ人たちによる『自分たちの音』」(『Jaz.in』vol.027、2025年12月)
(文中敬称略)
第30回シカゴ・エイジアン・アメリカン・ジャズ・フェスティヴァルにて(2025/11/9, photos by Akira Saito 齊藤聡)
Bar Subterraneansにて(2026/1/9, photos by m. yoshihisa)











