1/15~1/20 ロシア・ジャズ・シーンを牽引する アレクセイ・クルグロフ登場 from モスクワ

閲覧回数 1,354 回

‎ロシア・ジャズとその土壌であるロシアの文化・文学・演劇他の諸芸術、フォークロアをテーマとする研究チーム「ジャズ・ブラート」(鈴木正美:新潟大学教授、他)の招聘により、現代ロシアのジャズを牽引する存在と言っても過言ではないサックス奏者のアレクセイ・クルグロフ(1979年生まれ)が、2020年冒頭に初来日する。1月15〜17日に新潟で講演・演奏企画を行った後、東京で公開研究会「ポスト・クリョーヒン・スタディーズ」(1月18日、19日)、演奏企画(20日)が行われる。

これまで同チームはソ連時代後期に満開したフリージャズ/前衛音楽の中枢にいたセルゲイ・レートフ、その次世代のアレクセイ・アイギ、ロマン・ストリャールといった音楽家他を招き公開研究会や演奏企画を手がけてきたが、今回迎えるクルグロフはソ連解体後に音楽活動を本格化した世代のジャズ/即興音楽系ミュージシャンの先頭ランナーと言える存在である。同時に、ソ連時代に活躍した先輩ミュージシャン多数との交流・共演にも意欲的だ。そもそも日本におけるジャズ研究界では、ソ連時代のジャズについて報告が進んでいるとは言いがたいが、実は興味深い事実、音楽表現、録音物に事欠かなかったことが、鈴木教授らの精力的な調査によって徐々に明らかになってきた。クルグロフは先輩ミュージシャンから多くの経験談も採取しており、講演のテーマを、「ソ連とロシアにおける前衛ジャズの起源と発展;ロシア即興音楽のパフォーマンス性」としたとのことだ。世代間の連続性・断続について証言しつつ、我々の知見を広めてくれることが期待される。

ミュージシャン・プロフィール

【 Alexey Kruglov / Алексей Круглов 】
1979年生まれ、マルチサックス奏者(メインはalto sax)、詩人。クラシックの英才教育を受ける中、ジャズに関心を強め、ガネーリン・トリオ、セルゲイ・クリョーヒン、ジョン・ゾーン他に触発された。ジャズ、フリー・インプロヴィゼーション、多分野横断的パフォーマンスを展開中。ロシアの音楽・文学・演劇・芸術・フォークロアを深く愛し学んできた。ロシア・ジャズの先人をリスペクトすると共に、型にはまることなく、新しいロシア・ジャズの姿を模索している。アルバム多数。「クルグロフはガネーリン・トリオの美学の真の後継者だ」と、ガネーリン・トリオやクリョーヒンの音楽を広く世界に伝えたLeo Recordsの代表レオ・フェイギンを唸らせた。

*アレクセイ・クルグロフの音楽性

クルグロフの音楽性について、フライヤーには「多様な輝き」と特記されている。彼を満喫するためのキーワードは、実はとても多い。これまでの「ジャズ・ブラート」関連の指摘から整理してみよう。

1)演奏技術が優れていて、表現の幅が広い
だからジャズ、フリー・インプロヴィゼーション、劇伴他、様々な場で演奏してきた。通常型のジャズ演奏も上手い。レパートリーはオリジナル曲を主体とする。名門の音楽教育機関で学んだ期間が長いので、クラシック音楽との付き合い方も上手い。

2)ガネーリン・トリオ、セルゲイ・クリョーヒン等に相当触発された
そのせいかクルグロフは、ポリスタイル、ポリフォーム、シアター的なアーティスト、と形容されることもしばしばである。ガネーリン・トリオとは、ソ連時代に人気を博したグループの通称で、メンバーはヴャチェスラフ・ガネーリン(piano他)、ウラジーミル・タラーソフ(drums他)、ウラジーミル・チェカシーン(alto sax他)のトリのことである。多ジャンルの音楽を取り入れた作曲に即興演奏を巧みに組み込み、多楽器を併用し、シアター性も加味した、独特の演奏が特色だった。セルゲイ・クリョーヒンは奇才・鬼才として知られる音楽家(piano、作曲、指揮他)・俳優・思想家で、多ジャンルのミュージシャンを同一ショーに招いて盛大なカーニヴァルを繰り広げるプロジェクト「ポップ・メハニカ」はソ連時代に一斉を風靡した(惜しくも1997年死去)。

3)サックスを奏で、詩を詠み、演じる
クルグロフはロシアの文芸・絵画・演劇に深い関心を抱き、探求を続けてきた。シアター性、パフォーマンス性から、ウラジーミル・チェカーシンを連想するかもしれない。それは正しいだろう。現に2人は実際に交流、共演もしてきた。マルチメディア・スペクタクル的な表現もチェカーシンに通じる。役者としての活動も大事にしているようだ。クルグロフと詩も切り離せない。自作詩を読むこともあるが、マヤコフスキー、プーシキン、ヴィソツキー、ツォイ他だったりもする。セカンド・アルバム『僕は愛する』は、ご想像のように、マヤコフスキーの詩を取り上げ、欧米ジャズの王道級と照らしても立派な演奏に加え、マルチ志向と、オルタナティヴな作曲志向も交えて、愛について奏で語っている。

4)ロシアの民間伝承文化(folklore)にも関心が深い
クルグロフは、ソ連最終年に来日ツアーを行ったことがある北ロシアのジャズ・グループ「アルハンゲリスク」(リーダーは故ウラジーミル・レジツキー)のパフォーマンスを愛してやまないという。演劇性、パフォーマンス度の高いグループだったが、その表現にはロシアの民間伝承文化が多分に活用されていた。アルハンゲリスクのメンバーだったオレグ・ユダーノフ(drs,perc)らと組んだアルバム『ロシアのメタファー』(Russian Metaphor:Leo Records)では、冒頭からロシアの気配のようなものが広がる。既成の民謡や舞踊曲を演奏しているのではない。エッセンシャルな何かを求めているうちに、自分の中で発酵したものを演奏したのだという。そんな次第で、「ロシア的なジャズ」というものの聴取を切に望む人たちには、なかなか無い好機となるかもしれない。

5)「クルグロフはガネーリン・トリオの美学の真の継承者だ」
Leo Recordsの代表レオ・フェイギンはそう語ったそうだ。Leo Reocordsは、ガネーリン・トリオの素晴らしさを世界中に伝えたレコード会社である。いち早くクルグルフの特性を理解したフェイギンは、クルグロフのCDアルバム制作にも並々ならぬ意欲を注いできた。そして2人は共に、ロシア・ジャズの魅力をアピールするフェスティヴァルを企画遂行してきた。クルグロフの情熱的な説得で、ガネーリンもフェスに参加した。タラーソフはすでに何作もクルグロフとデュオ録音アルバムを出した。チェカーシンとの共演盤もいずれそのうち出るかもしれない。

[備考:Disk Union発行のジャズ冊子『Jazz Perspective』No.18(ロシア・ジャズ特集号:2019年7月既刊)にて詳しいクルグロフ紹介文が掲載されている。執筆者はモスクワのジャズ・ジャーナリスト、キリル・モシュコウ氏。]

*アレクセイ・クルグロフ来日スケジュール

▶︎新潟Days

<演奏>

2020年 1月15日(水)新潟 ジャズ・フラッシュ
アレクセイ・クルグロフ(as)、松本健一 (ts,尺八)、鈴木正美(ss,cl),島田透(ds)

2020年 1月17日(金)新潟 砂丘館
「ロシアから即興の風が吹いてくる 5」
アレクセイ・クルグロフ(as)、堀川久子(dance)、鈴木正美(ss,cl,b-cl,篠笛)、福井るり(organ)、鈴木良一(reading)
開演: 19:00

<講演>

2020年 1月17日(金)新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」
「ソ連とロシアにおける前衛ジャズの起源と発展;ロシア即興音楽のパフォーマンス性」
時間: 12:55 – 14:25

新潟Days:総合問合せ masamis2004@yahoo.co.jp

▶︎東京Days

Days 1、Days 2は前半が講演、後半が演奏という2部構成。講演はDays 1で「ソ連とロシアにおける前衛ジャズの起源と発展;ロシア即興音楽のパフォーマンス性(仮題)」をテーマとした内容、Days 2ではクルグロフ自身や彼の世代のミュージシャンたちの演奏を具体的に紹介してもらう予定。クルグロフの録音キャリアはすでに、自己リーダー作、共作、客演作いずれも豊富なので、何が現在進行形で行われているのか音源とともに知るまたとないチャンスである。後半では日本で活躍するミュージシャン、河崎純(Days 1)、吉田隆一と藤原大輔(Days 2)と共演。また、Days3は日本を代表するジャズ音楽家である佐藤允彦、クルグロフに引けを取らない多様性の音楽家の太田惠資とのスペシャル・トリオで演奏。

【東京Day 1】
2020年 1月18日(土)東京・水道橋 Ftarri
Post-Kuryokhin Studies 1
前半:アレクセイ・クルグロフ講演
ソ連とロシアにおける前衛ジャズの起源と発展;ロシア即興音楽のパフォーマンス性(仮題)
後半:ライヴ演奏:アレクセイ・クルグロフ(as)+河崎純(bass)デュオ
開演: 18:00
料金 2,000円(Day 2との両日観覧の場合は特別割引で3,500円)

【東京Day 2】
2020年 1月19日(日)東京・水道橋 Ftarri
Post-Kuryokhin Studies 2
前半:アレクセイ・クルグロフ自身の解題で自己音源&現代ロシア・ジャズ音源を聴く(仮)*
後半:ライヴ演奏;アレクセイ・クルグロフ(as)+吉田隆一(bs)+藤原大輔(ts) トリオ
開演: 18:00
料金 2,000円(Day 1との両日観覧の場合は特別割引で3,500円)

*東京Day 1、Day 2では資料配布の都合もあり、ご予約をお願いします。[予約先 torojazz2018@gmail.com]
*1月19日の前半の内容は若干変更になる場合があります。変更の際は当サイトでお知らせします

【東京Day 3】
2020年 1月20日(月)東京・渋谷 公園通りクラシックス
スペシャルトリオ: アレクセイ・クルグロフ(as)+佐藤允彦(p)+太田惠資(vln)
開演: 19:30
料金3,000円(1ドリンク付き)

東京Days 総合問合せ ・予約 torojazz2018@gmail.com

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。