『柳樂光隆/Jazz The New Chapter 6 〜ノンストップで拡張を続けるジャズの変容と、その未来』

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄

柳樂光隆 監修
「Jazz The New Chapter 6」

シンコー・ミュージック SHINKO MUSIC MOOK
B5判/192ページ/2020年2月17日発売
1,980円(1,800円+税)、 ISBN 978-4-401-64821-4

ノンストップで拡張を続けるジャズの変容と、その未来
「サンダーキャットは歌ものを突き詰め、フライング・ロータスは音楽理論を学んだ。クリスチャン・スコットは遥か昔に思いを馳せ、ジェイコブ・コリアーは存在しないハーモニーを鳴らそうとした。僕らが「ジャンルの垣根が無効になった」なんて呑気な話をしている間に、ミュージシャンたちは音楽の常識をそれぞれのやり方でどんどん書き換えている。ソランジュやブリタニー・ハワードは、そんなジャズ・ミュージシャンの力を借りる。まだ見たことのない新しい音楽がジャズの周りから生まれようとしている。」(以上、リリース資料より)

柳樂光隆(なぎら みつたか)は、1979年、島根・出雲生まれ、東京学芸大学出身で、珍屋、ディスクユニオンのレコードショップのバイヤーを経て、音楽評論家となり、ジャズとその周りにある音楽について書き続けている。”現在進行形のジャズ”をガイドする『Jazz The New Chapter』(JTNC)を2014年に刊行、そして、2020年を迎えて、シリーズ6作目となる『Jazz The New Chapter 6』を2月17日に発売する。

私(神野)は毎年1月に「Winter JazzFest NYC」で”現在進行形のジャズ”の定点観測を続けていて(2020年レポートはJAZZ LIFE 2020年3月号掲載予定)、日々着実に新しい音楽が生まれ変化していることを実感しているが、宣伝広告費が付く時代でもないため、日本のメディアがそれらを網羅しリスナーに情報提供することは困難になってきているし、日本のミュージックシーンとの乖離も含めて、ギャップを痛感している。

柳樂は、膨大な音源に耳を通し、注目すべき来日アーティストの”いま”を訊くインタビューの数々を敢行し、ときにライナーノートも執筆しながら、年間1冊のペースでJTNCにまとめてきた。一見混沌としたジャズとその周辺を読み解き、その視点に”正解”があるわけではないにしても、柳樂にとっての座標軸と距離感を提示して、注目すべきアーティストを紹介しているのは、多くのリスナーの役に立つと思う。継続は力なりで、現在これだけのリサーチを重ねて、執筆と編集ができる数少ない存在と言えると思う。出版に合わせてトークイベントやプレイリストの提供などもあると思われるので引き続き注目していきたい。

<<目次>>

SPECIAL INTERVIEW
Thundercat/Flying Lotus/Christian Scott/aTunde Adjuah/Brittany Howard/Meshell Ndegeocello/Chassol/Jacob Collier

COLUMN
『Flamagra』と『The Renaissance』
ロバート・グラスパー『Fuck Yo Feelings』の先進性
非西洋科学的テーマに注がれる視線
ジェイコブ・コリアーに至る合唱曲史(小室敬幸)

PART 1 : A NEW GENERATION OF JAZZ
James Francies / Joel Ross / Jazzmeia Horn

PART 2 : DISC SELECTION
New Standards 2018-2020(選盤・執筆:柳樂光隆)
COLUMN : サウンド・アメリカン / アンジェリーク・キジョー / Jazz The New Chapter Ternary

PART 3 : VISION OF GROUND UP
グラウンド・アップ・フェス潜入ルポ     (※スナーキー・パピー周辺)
Michael League / Jason “JT” Thomas / Bob Reynolds
a musical journey : David Crosby(高橋健太郎)
Becca Stevens / Michelle Willis
Good Music Company

PART 4 : DRUMMER-COMPOSERS
Kassa Overall/Nate Smith/Kendrick Scott/Mark Guiliana
COLUMN : 「音色」の探求へと進むドラマーたち(高橋アフィ)
Louis Cole/Perrin Moss

PART 5 : INSIDE AND ALONGSIDE THE L.A. JAZZ SCENE
COLUMN : コミュニティとシェアの文化が育んだLAシーンの背景(原雅明)
Carlos Niño/Flying Lotus/Mark de Clive-Lowe

PART 6 : BRING A NEW PERSPECTIVE ON SAXOPHONE
Charles Lloyd/Marcus Strickland/Braxton Cook/Donny McCaslin/Dayna Stephens

PART 7 : CULTURAL ACTION IN U.K.

COLUMN : 文化的な運動として続くジャズの継承と発展
Courtney Pine/The Comet Is Coming

SPECIAL INTERVIEW
Marcus Miller/Marquis Hill/Stu Mindeman/Camila Meza

COLUMN
若手育成を支えるアメリカのジャズ教育システム
ヌエバ・カンシオンとトロピカリア
チャーチ出身のミュージシャンはなぜ強靭なのか(唐木元)
ドン・シャーリーから考えるジャズ・ピアノ史
セファルディムとアシュケナジム
ノンサッチ×ニューアムステルダム
なぜ今、アンソニー・ブラクストンなのか(細田成嗣)

※なお、JTNCとは別に我が「JAZZ TOKYO」とその周辺では、連載「Jazz Right Now 今ここにあるリアル・ジャズ ー ニューヨークからのレポート」、ボストン在住のヒロ・ホンシュクが担当する理論的な「楽曲解説」、フォトジャーナリスト常盤武彦が現地取材で届けている貴重な映像と情報なども”現在進行形のジャズ”を見渡す上で貴重この上なく、JTNCと合わせて参照されることをお勧めしておきたい。

※蛇足だが、日本特有の配本システムにおいて、今後のジャズ単行本流通が持続可能となるように書店などでの購入もお勧めしておきたい。

神野秀雄

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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