ライル・メイズ逝く (1953.11.27-2020.2.10)

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄

R.I.P. Lyle David Mays (November 27, 1953 – February 10, 2020)
ピアニスト、キーボーディスト、作編曲家 (+ギタリスト、トランぺッター他) のライル・メイズが、2020年2月10日、ロサンゼルスで長い闘病の末、愛する人たちに看取られて亡くなった。と、姪であるヴォーカリスト、オーブリー・ジョンソンが、Facebook で訃報を伝えた。「ライルは輝かしい音楽家であり、素晴らしい人物であり、あらゆる意味で天才でした。大好きな伯父であり、師であり、友人であるライルを失った深い悲しみを言葉にすることができません。」


(c) Norman Sheeff

ライル・メイズは、1953年、ウィスコンシン州の小さな村ウォーソーキーで生まれた。母はピアニスト、父はギタリストで、ライルは子供の頃から、チェス、数学、建築、音楽の4つに強く関心があったという。北テキサス大学で音楽を学び、学内のワン・オクロック・ラボ・ジャズ・バンドに曲を提供し、収録されたアルバム『Lab 75』はグラミー賞ノミネートとなった。卒業後、ウディ・ハーマンのツアーに同行する。

1974年に1歳下のパット・メセニーと出会い、1977年の『Pat Metheny / Watercolors』(ECM1097) に参加、ベースはエバーハルト・ウェーバー。1978年、パット、ライル、マーク・イーガン、ダン・ゴットリーブでパット・メセニー・グループ (PMG) を結成し、『Pat Metheny Group』(邦題:思い出のサン・ロレンツォ)(ECM1114) をリリース、以降、ECM、Geffen、Warner、Nonesuch とレーベルを変え、メンバーが変動しながら、アルバムとしては2005年の『The Way Up』(Nonesuch) まで、約30年間、パットに不可欠な音楽のパートナーとして活動をともにした。PMG でグラミー賞を11回受賞し、自身のリーダーアルバムでは4回ノミネートされている。初来日は、1979年3月の「ECMスーパー・ギター・セッション ’79」でのオリジナル PMG、最後の来日は、2009年1月、ブルーノート東京/名古屋ブルーノートでの、パット、ライル、スティーヴ・ロドビー、アントニオ・サンチェスでのPMG クラブ公演ではないかと思われる。(なお筆者においては、2010年7月9日、ノースシー・ジャズ・フェスティヴァルが最後。)

リーダーアルバムとしては、1986年の『Lyle Mays』(Geffen) 始め 5枚リリースしている。パットとの共同名義では、1981年の『As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls』(ECM1190) があり、ナナ・ヴァスコンセロスも参加している。その他、サイドメンバーとして多数の録音やツアーに参加、ジャズ以外では、リッキー・リー・ジョーンズ、ジョニ・ミッチェル、アース・ウインド&ファイアらと共演、ジョニとは、パット、ジャコ・パストリアス、マイケル・ブレッカー、ドン・アライアスとのツアーを収録した名盤『Joni Mitchell / Shadows and Light』を残している。

クラシック系室内作品として、<Twelve Days in the Shadow of a Miracle, for Viola, Harp and Flute> (1994)を作曲している。なお、「N響JAZZ at 芸劇 2017」で塩谷 哲と共演したマエストロ・ジョン・アクセルロッドは、ライルにジャズとそのオーケストレーションを学んでいた。「実はさぁ、ボクの先生だったライル・メイズにね、今度サトル・シオノヤと共演するよ、って言ったら、ワオ!彼の音楽好きだよ、いいなー、じゃぁボクとはいつオケで共演してくれるんだよ。だってさ。」とジョンは語っていたが、ジョンとライルの共演の機会は永遠に失われた。

ライルは、独学でソフトウェア・プログラミングを行い、また、建築への関心からいくつかの家を設計した。

ライルの訃報は、パット・メセニー公式ウェブサイトでも2月10日中に掲載され、パットと、スティーヴ・ロドビーからの言葉が伝えられたので、紹介したい。

パット・メセニー:「ライルは、私の知る限り最も偉大な音楽家の一人です。30年以上に亘って、音楽を共にしたすべての時間は特別でした。初めて一緒に演奏した一音から、二人の間には特別な繋がりがありました。人生のあらゆる場面で、彼は幅広い知識と音楽への智恵を発揮しました。彼を失って心の底から悲しみに包まれています。」

スティーヴ・ロドビー:「何十年にも亘って、ライルと人生を共にできたことを誇りに思います。彼はインスピレーションの源であり、大切な友人でした。彼の人柄と音楽を知る人なら同意すると思いますが、ライルはまさにオンリーワンの存在であり、これからもさまざまな意味で、誰もがライルの魂の輝きを尊敬して続けます。」

パット・メセニー公式ウェブサイトによれば、メモリアルの予定は決まっていないが、献花に代えて、Caltech Fundへの寄付を求めていると言う。


L: Watercolors (ECM1097) R: Pat Metheny Group (ECM1114)


L: As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls (ECM1190) R: Lyle Mays (Geffen, 1986)


L: Street Dreams (Geffen, 1988) R: Fictionary (Geffen, 1993)


L: Solo: Improvisations for Expanded Piano (Warner Bros., 2000) R: The Ludwigsburg Concert (Naxos, 2016)

TEDxCaltech – Lyle Mays and Friends

Pat Metheny Group / Phase Dance

Pat Metheny & Lyle Mays – September Fifteenth

Joni Mitchell – Shadows and Light

<Twelve Days in the Shadow of a Miracle, for Viola, Harp and Flute> (1994)

Lyle Mays – Behind the Scenes

神野秀雄

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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