ECMからキース・ジャレットを含むオータム・リリース7タイトル。
満を持していたかのようにECMから一挙7タイトルの秋季新譜がリリースされる。
ジャズ系からは、テリエ・リプダル、ミシェル・ベニータ、ドミニク・ヴァーニャ、マチュー・ボリデナーヴ、キース・ジャレットの5人、new seriesからはアンドラーシュ・シフ、アニャ・レヒナーの計7タイトル。
テリエ・リプダルのスタジオ・アルバムはカルテットによる『Conspiracy(陰謀)』(9/11リリース)。テリエの他に、キーボードのストール・ストーラッケン、フレットレス・ベースのエンドレ・ハーライド・ハルレ、ドラムのポール・トウセンが参加、オスロのレインボウ・スタジオでマンフレート・アイヒャーとテリエが共同でプロデュース。かつてのテリエ独特の壮大なサウンドスケープが再現されている。
ポーランドのピアニスト、ドミニク・ヴァーニャの『Lonely Shadows』(9/18リリース)は、マチー・オバーラ・カルテットの『Unloved, Three Crowns』に 続く登場で、新作はECM伝統のピアノ・ソロ山脈に連なる作品。全11曲のオリジナル楽曲にクラシックの素養を背景にインプロヴァイザーとしての実力が加味された作品。
フランスのジャズ・シーンで活躍するアルジェリア生まれのベーシスト、ミシェル・ベニータの新カルテットによる新譜『Looking at Sounds』(9/18リリース)は、スイスのフリューゲルホーン奏者マチュー・ミシェル、フランスのドラマー、フィリップ・ガルシアにベルギーのキーボード奏者ヨゼフ・デュムランが新加入。オリジナル曲や即興曲に加え、A.C.ジョビンの<イヌチル・パイサージェン(無意味な風景)>、とジュース・スタインの<ネヴァー・ネヴァー・ランド>を演奏している。
福盛進也の『For 2 Akis』でECMデビューしたテナーサックスのマチュー・ボリデナーヴのリーダーとしてのECMデビュー作『La traversée(ラ・トラヴァシー:交差点)』(9/25リリース)は、ドイツのピアニスト、フローリアン・ヴェーバーとスイスのベーシスト、パトリース・モレのトリオ。史上名高い、ポール・ブレイ(p)、スティーヴ・スワロウ(b)を含むジミー・ジュフリー・トリオが切り拓いたスペースを生かしたコンテンポラリーとジャズとのハイブリッド。
アンドラーシュ・シフのアルバム(10/02リリース)は、クラリネット奏者でコンポーザーでもあるイエルク・ヴィッドマンとのアルバム史上初顔合わせ。ふたりが敬愛するブラームスのクラリネット・ソナタとシフの演奏にインスパイアされて作曲されたというヴィッドマンの新曲の組み合わせ。
チェロのアニャ・レヒナーとピアノのフランソワ・クチュリエのデュオは、2014年のデビュー作『モデラート・カンタービレ』に続く『ロンターノ』(10/16リリース)。オリジナル曲から即興曲、バッハのカンタータ、アルゼンチンのフォーク・ミュージック、ギヤ・カンチェリ、アヌアル・ブラヒムなど幅広いレパートリーに挑戦している。
キース・ジャレットの新作は、好評を博した『ミュンヘン 2016』(10/30リリース)に続き同じく2016年のヨーロッパ・ツアーのソロ・コンサートからの完全版。ハンガリー・ブダペストのベラ・バルトーク国立コンサート・ホールでのすべての演奏を完全収録したもの。アンコールには<It’s A Lonesome Old Town>と<Answer Me>が演奏された。ハンガリー人の血が流れるキースにとってブダペストでの演奏は特別な意味をもつものであった。
なお、7タイトルのうち、テリエ・リプダル、ドミニク・ヴァーニャ、アニャ・レヒナー、キース・ジャレットの4タイトルはCDに加え重量盤LPもリリースされる。