[映画] 『ショック・ドゥ・フューチャー』8/27より順次公開
〜1978年、パリ。エレクトロミュージックの可能性を探る女性ミュージシャンたち

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo: ©2019 Nebo Productions – The Perfect Kiss Films – Sogni Vera Films

映画『ショック・ドゥ・フューチャー』
原題『Le choc du futur』
2021年8月27日(金)より新宿シネマカリテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次公開

2019年製作/78分/PG12/フランス
公式ウェブサイトはこちら

監督・製作・脚本・音楽: Marc Collin マーク・コリン(音楽ユニット「ヌーヴェル・ヴァーグ」)
脚本:エリーナ・ガク・ゴンバ    製作:ガエル・ルフィエ、ニコラ・ジューディエ
撮影:ステファノ・フォルリーニ    編集:ヤン・マルコール
配給:アットエンタテインメント

1978年、エレクトロ・ミュージックの世界的な人気爆発前夜のパリを舞台に、電子楽器に魅せられた若き女性ミュージシャンたちを描く。監督・脚本・音楽は音楽ユニット「ヌーヴェル・ヴァーグ」の活動でも知られるマーク・コリン。主演は映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーを祖父に持ち、ミュージシャン、モデルしても活躍するアルマ・ホドロフスキー。

この映画は特定の人物・史実に基づくものではないが、この当時に電子音楽で活躍した女性ミュージシャンたちに捧げられおり、特にローリー・スピーゲル、エリアーヌ・ラディグ、スザンヌ・シアニのようなほとんど注目されていないアーティストたちからインスピレーションを受けたと言う。音楽業界が電子楽器をまだ評価せず、女性の活躍も限られていたが、時代を切り拓いていく。ヒロ・イイダによれば、実際、シンセサイザー業界は人種性別差別もなく多国籍で多様性が生きる世界になったという。映像ではポップミュージック仕立てだが、現代音楽、クラシック、ジャズ寄りまで含め「電子楽器の創生と普及を担った女性先駆者たち」*へのオマージュになっている。

とにかく、マニアック過ぎとも言える楽器・機材のディテールへの徹底したこだわり、劇中の音楽やレコードの数々の中に(ECMの名盤も顔を出す)、その頃の空気感、熱量感を感じてそれが楽しく心地よく、わくわくしながら時間が過ぎる映画だ。

ニューヨークを拠点に世界で活躍するエレクトロニック・ミュージック・デザイナーのヒロ・イイダより本誌へコメントをいただいた。(プロフィールはこちらを参照)

「Moog IIIp、ARP2600、Mutron、CS80に並んで可愛いRoland CR-78が出てきて、更にはヘッドフォンやレコーダーなどの小物の凝り方もシンセ好きにはたまらない、まるでドキュメンタリーかと思うようなクリップですね。(まあ現代版テルミンがちょっと映り込むのはご愛嬌。)まだ電子音楽に体温と汗があったころをうまく描き出してる映画だと思います。」

STORY
1978年、パリ。若手ミュージシャンのアナ(アルマ・ホドロフスキー)は、部屋ごと貸してもらったアナログシンセサイザー「Moog IIIp」などで、依頼されたCMの作曲にとりかかっていたものの、納得のいく曲が書けずにいた。すでにプロデューサーと約束した締め切りは過ぎ、明日の朝クライアントに提出しなければならないCM担当者(フィリップ・ルボ)は、何度も急かしにやって来る。なのに、シンセサイザーの機材が壊れ、修理を呼ぶ羽目に。しかし、修理に来た技術者が持っていた日本製リズムマシン「Roland CR-78」に魅せられたアナは、「これがあれば、ものすごい曲を作れる」と頼み込んで貸してもらう(CR-78は14の音色を持ち、エスニックからロック系まで豊かなバリエーションを伴う34のプリセットリズムに、最大4つの自作のパターンを記憶させることができた画期的な名機だった)。そこへCM曲の収録用に依頼されていた歌手のクララ(クララ・ルチアーニ)が現れ、話しているうちにアイデアが浮かんだ2人は即興で曲を作り始めた。果たして、大物プロデューサーも参加するはずの今夜のパーティまでに、アナは未来の音楽を完成させることができるのかー。


Marc Collin

*映画の最後で「電子楽器の創生と普及を担った女性先駆者たち」と讃えられたアーティスト
・クララ・ロックモア
・ウェンディ・カルロス
・ダフネ・オラム
・デリア・ダービーシャー
・エリアーヌ・ラディーグ
・ローリー・シュピーゲル
・スザンヌ・チアーニ
・ジョアンナ・ベイヤー
・ベベ・バロン
・ポーリン・オリベロス
・エルセ・マリー・パーゼ
・ベアトリス・フェレイラ

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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