『エンニオ・モリコーネ+アレッサンドロ・デ・ローザ/あの音を求めて〜モリコーネ、音楽・映画・人生を語る』

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text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌

書名:あの音を求めて〜モリコーネ、音楽・映画・人生を語る
著者:エンニオ・モリコーネ+アレッサンドロ・デ・ローザ
訳者:石田聖子+岡部源蔵
解説:小沼純一
A5判・上製|536頁
発行:フィルムアート社
初版:2022年10月30日
本体:4,200円+税

腰巻きコピー:
これは真実の書である。__エンニオ・モリコーネ
前衛音楽から映画音楽へ__
若き音楽家との対話によって紡がれるマエストロの生涯とその創造のすべて


エンニオ・モリコーネが2020年7月6日、コロナ蔓延の最中にその91年にわたる生涯を閉じた時、本誌JazzTokyoでも追悼特集を組んだ。映画音楽の作曲家として知られるモリコーネだが、本誌ではむしろ彼の初期のキャリアであるトランペッターとして前衛音楽に勤しむ姿にスポットを当てた。幸い、ミラノ在住のカメラマン、ロベルト・マゾッティが当時のモリコーネの姿を焼き付けた貴重な写真を何葉か提供してくれた。おかげで僕らは彼の演奏が収録されたCDと併せて、前衛トランペッターとしてのモリコーネを実感することができたのだった。そのマゾッティも2年後に亡くなってしまうのだから、生前に写真を提供してもらえたのは幸運だったと言える。

さて、本書であるが、これも幸運の賜物と言えそうだ。本書は師モリコーネと若き楽徒アレッサンドロ・デ・ローザとの交流の記録、交流を通した会話の記録(インタヴューという形式をとっている)である。2013年から約2年間、折りを見ては質問を投げかけるデ・ローザにモリコーネは真摯に対応する。学究肌のデ・ローザの質問はキャリアを追う形となり結果的にモリコーネの音楽・作曲の根源を解き明かすことになる。序でモリコーネ自身が、「疑いの余地なく、本書は、わたしに関して書かれた本のうち、詳細にわたり丁寧に検討された正真正銘の最良の書である。これは真実の書である」と記す所以である。日本語版出版に当たってもデ・ローザのハーグ音楽院の学友に岡部源蔵がいたという幸運に恵まれる。岡部は本誌JazzTokyoでも何度か紹介の機会があった「Okabe Family」を率いてオランダを中心に活躍するアルトサックス奏者である。東京外国語大学に在籍していた岡部は同窓の先達・石田聖子と分担して日本語訳に当たる。幸いコロナ禍で蟄居していた岡部は翻訳に集中する時間もあったのだろうが、ペルージャ国立音楽院でクラシック・サックスを、ハーグ王立音楽院でジャズ・サックスを学んだ楽識が絶対音楽と応用音楽の両刀使いであったモリコーネの自伝翻訳にはうってつけだったと言える。

版元のプレス・リリースにいわく「音楽としての純粋性を損なうことなく、大衆が理解可能な音楽はいかにして可能か、音楽は人と人をどのように結びつけることができるのか」。永遠のテーマとも言えるこの命題を解決したひとりであるエンニオ・モリコーネの生の声は尊く、そして重い。

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