佐藤達哉著『ジャズアルバム大全』刊行
The Complete Concept of Jazz Albums

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ジャズ・サックス奏者として、また音楽学校で教鞭をとる教師としても長いキャリアを誇る佐藤達哉が『ジャズアルバム大全』を上梓した。450pを超えるかなりの大著で版元はPHP エディターズ・グループ。ミュージシャンの手になる理論書は多いが、アルバム解説書は珍しい。すぐ思い付くのは、5、6年前にベーシストの鈴木良雄が竹書房新書から刊行した『人生が変わる55のジャズ名盤入門』くらいか。鈴木はジャズ仲間が選んだ1000枚のアルバムから55枚を選び出し、自らのジャズ観や演奏体験に照らしてアルバムの紹介を試みた。中にはミュージシャンの知られざるエピーソードや同業者に対する鋭い言及もあり話題を呼んだものだ。推薦コピーは共にタモリが寄せているが、佐藤、鈴木、タモリはいずれも早稲田のダンモ研(モダンジャズ研究会)のOB。鈴木が最年長でタモリ、佐藤と続く。
佐藤は小学六年で初めて買ったアルバムがビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』であリ、オタク的音楽嗜好があったと自認する。ジャズを知ったのは中学時代、マイルス・デイヴィスの『マイルストーン』と『カインド・オブ・ブルー』を購入。長じて、70年代、「ジャズ喫茶文化」華やかなりし頃ジャズ喫茶に入り浸りジャズを聴き漁った。さらに深掘りしたくて1年間ジャズ喫茶のバイトまでした。ジャズ喫茶時代に聴き込み得られたリスナー的知識を土台に、その後ミュージシャン、教師として獲得したノウハウを加えてブログに綴るようになった。その中から厳選された70枚についての詳細な解説。選択の基準は示されていないが、専門楽器のテナーサックスが過半を占め、中でも『完全コピー集』を出版したマイケル・ブレッカーが最多。対するジョン・コルトレーンは2枚だけ。しかもリーダー作ではなく、客演したレイ・ドレイパーとソニー・クラークのアルバム。デイヴ・リーブマンは4枚も取り上げているのに!その他、管楽器、ピアノを中心に満遍なく選ばれているが、選択は必ずしもビッグネームの人気アルバムではなく語りたいミュージシャンの語りたいアルバムに偏向していることは承知しておく必要がある。ただ、選ばれたアルバムを通してそのミュージシャンの履歴や時代背景、周辺情報に加えて音楽内容や聴きどころが熱く語られるので結果としてこの本から得られる情報は膨大なものになる。ジャズの通史的な内容ではないので初心者向けとはいえないが(それにしてもジャズ・アルバムを聴く勘どころはつかめるが)、巷に溢れる万人向けのガイドブックには飽きたらない中級以上のリスナーにとってはマニアックな情報も得られ充分読み応えのあるジャズ書であると断言できる。

 

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