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BooksReviews~No. 201

#080『チャーリー・パーカー~モダン・ジャズの創造主』

text by Kenny Inaoka  稲岡邦弥

書名:KAWADE夢ムック
チャーリー・パーカー 〜 モダン・ジャズの創造主
編者:河出書房新社編集部 /池上信次
版元:河出書房新社
初版:2014年6月23日
定価:1,300円+税

腰巻きコピー:
モダン・ジャズの最高峰、アルトサックスの帝王バードの全貌。残された玉石混淆の膨大な録音から、何からどう聴いていけばよいか、懇切に徹底ガイド。菊地成孔・相倉久人対談など。
ジャズ・ファンなら誰もが知っているはずだが、誰もが聴いているわけではない。正統派ジャズ・ファンからさえ敬遠され勝ちな正統派モダン・ジャズの源流、チャーリー・パーカー。

河出書房新社のKAWADE夢ムックから「チャーリー・パーカー読本」ともいうべき一冊が刊行された。来年が生誕95周年、没60年忌(1920.8.29~1955.3. 12)にあたり、アメリカでも2冊の評伝が刊行され、再評価の機運が高まっているタイミングである。執筆陣は、1953年にNYのカーネギホールでパーカーの生を聴いた唯一の日本人・瀬川昌久さん(1924~)から、数年前まで15年間毎年パーカーゆかりのミズーリー州カンザス・シティに通い詰めたという紅一点・竹村洋子さんまで(他に、女流アルトサックス奏者の矢野沙織さんがインタヴューを通してパーカーの本質を衝く発言をしている)多彩。評伝やCD紹介も充実しているが、ムックの性格上対談やインタヴューが多いのがありがたく、ビギナーがアクセスし易いだけでなく、相応のリスナーにとってもパーカー理解のヒントがあちこちから得られるだろう。とくに、パーカーはモダン・ジャズの源流であるビ・バップの創始者的存在であるだけに、音楽的な解析は避け得ず、菊地成孔、大谷能生、矢野沙織、濱瀬元彦らミュージシャンの対談やインタヴューを通した発言に傾聴すべき内容が多い。

また、本誌JazzTokyoに37回にわたって継続中のレポート「カンザス・シティの人と音楽」をベースにした竹村洋子さんの数編の寄稿と自身の語りが、パーカーが育ったカンザス・シティ(カンザス・シティは、カンザス州とミズーリー州のふたつの州にまたがって存在しており、パーカーはカンザス州側で生まれ、7才の時にミズーリー州側に家族で移住、成長した。ジャズ史に登場するカンザス・シティは、ミズーリー州側を指す)の今と昔を伝え、歴史上の存在になっているチャーリー・パーカーを生身の人間として甦らせることに大いに寄与している。
パーカーについて知るべき情報はほとんど網羅されていると思われるが、パーカーが使用した楽器に付いての情報がカンザス・シティのアメリカン・ジャズ・ミュージアムに収蔵されている「マッセイホール」で使用されたアルトのみ、というのがやや寂しい。

関連リンク;
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309978345/
http://www.jazztokyo.com/guest/kcj/v01/v01.html

*初出:Jazz Tokyo 2014.6.29

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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