JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 39,639 回

BooksNo. 282

#112 内藤忠行マイルス・デイヴィス写真集「俺は彼を死ぬほど愛してる」
Miles Davis by Tadayuki Naitoh [I Loved Him Madly]

書名:マイルス・デイヴィス写真集「俺は彼を死ぬほど愛している」
Miles Davis by Tadayuki Naitoh 著者:内藤忠行
発行:株式会社フォトハウス オム
初版:2016年
判型:A4変形
頁数:90頁
部数:限定1000部
定価:5000円+税

1950年、NYのThe Gaslight Clubから始まる写真家というより映像作家と呼ぶべきか内藤忠行とマイルス・デイヴィスのただならぬ関わり合い。1976年の東京・大阪でのアガルタ・パンゲア、1985年のライヴ・アンダー・ザ・スカイを経て、MILES x SAKURAという終生のモチーフが交錯、1987年の東京でのラスト・セッションで閉じる。途中、ブルー・イン・グリーンというインタールードを挟みながら。
映像作家と呼びたい理由は、よく知られているように内藤忠行はストレートな写真に加え、ソラリゼーション、モンタージュ、シンメトリー、多重画面などあらゆるテクニックを駆使して1枚の写真から未知の魅力を引き出す才とセンスを持ち合わせているからだ。そのコンテンポラリー性は、コンテンポラリー・ミュージックの雄、ECMレコードのアートワークに何点も採用されていることからも明らかだ。
この写真集は、マイルス・デイヴィス (1926~1991) の生誕90年、没後25年のメモリアル・イヤーに1000部限定の私家版として制作された。私家版であるから、裏表紙にはPOSコードはいうまでもなく版元や定価など一切記載はなく、マイルスの鋭い眼光に射抜かれるのみ。なお、表紙写真は、複数の写真家の先頭を切ってホテルの個室に招じ入れられた内藤忠行にいきなりマイルスが仕掛けてきた果し合いである。しかも、太陽を背に追いながら...。
現在、入手は困難なようだが、2021年10月10日にプレ・オープン(World Jazz Museum 21) を予定している群馬・切り絵美術館ででサイン入り20部に限り取り扱うという。問合せは、菅原光博 oneloveland21[at]gmail.com (送信の際は[at]部分を@に変えてお送り下さい)。
同美術館では、約2ヶ月にわたり企画展「ルイ・アームストロング生誕120年 没50年」が来たる1o月10日より開催予定で、内藤忠行を始め、中平穂積、外山喜雄・惠子、佐藤有三(故人)、杉田誠一、菅原光博のルイ・アームストロングとニューオリンズの写真が展示される。
また、本開館が予定されている4月からは企画展「内藤忠行:マイルス・デイヴィス+SAKURA」が開催される。

 

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください