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CD/DVD DisksNo. 315

#2327 『Kevin Kastning, Bruno Råberg / Silent Dimensions』
『ケヴィン・カストニング, ブルーノ・ロベール/サイレント・ディメンジョンズ』

text by Tomoyuki Kubo 久保智之

1. The Constitution of Silence
2. Memory Present Echo
3. Aniline I
4. Transfigure Vanish I
5. Transfigure Vanish II
6. Aniline II
7. Light Still and Moving
8. Nebula Alba

Kevin Kastning: 36-string Double Contraguitar, 16-string Subcontraguitar, 24-string Subcontra guitar, 28-string Contraguitar
Bruno Råberg: Double bass

Recorded at:Traumwald North; York County, Maine US, 8 December 2023
Recording mixed and mastered by Sandor Szabo at Tandem Studios; Vac, Hungary.
Cover art by: George Korunov (RUSSIA)


アメリカの多弦ギタリストKevin Kastningの最新アルバム。Kevin Kastningはこれまで50枚以上のアルバムをリリースしてきているが、今回はスウェーデン出身のベーシストBruno Råbergとのデュオアルバムである。ピアニスト、ベーシスト、また楽器発明家でもあり多くの多弦ギターを発明してきており、演奏スタイルは即興音楽が中心のアーティストだ。

1961年、アメリカのカンザス州ウィチタ生まれ。7歳の時にトランペットを始め、11歳でギターを手にしたというのが音楽キャリアのスタートとのこと。ウィチタ州立音楽大学卒業後に1985年からバークリー音楽大学の大学院課程で学んだそうだが、その頃には個人的にPat Methenyにも師事していた。

今回のアルバムの使用楽器は、「36弦・ダブルコントラギター」「16弦・サブコントラギター」「24弦・サブコントラギター」「 28弦・コントラギター」とクレジットされている。「コントラギター」というのは、ベース・ギターの音域(ギターの1オクターブ下)までカバーしていることを意味している。「サブコントラギター」とは、通常のベースギターよりも低い音の出るギターを指し、今回はLow-Dまで出るようにセッティングされているようだ。

一般的なギターが「6弦」なので、「36弦」などと言われてしまうと、「いったいどんな形をしているのか?」「いったいどうやって演奏するのか?」などと考えてしまうが、各ギターは、こちらの写真にあるような形をしている。

Kevinのインスタグラムから引用しているが、投稿日と内容からすると、ちょうどこのアルバム「Silent Dimensions」のレコーディング時の写真のようだ。一番手前のギターが「24弦・サブコントラギター」だと思われる。

 

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各ギターは、カーボンファイバー製のものが多く、各弦の隣には基本的に1オクターブ音程の異なる弦が張られている。

曲によってチューニングのパターンはいろいろと変えているとのことで、Kevinのウェブサイトでは、各チューニング・パターンが掲載されている。例えば、一番弦の少ない「16弦・サブコントラギター」を例にとると、次のようなチューニング設定になっているようだ。Eが最低音になるケースもあるようだが、今回は「サブコントラ」と呼ばれていることから、最低音が「D」なのだろうと想定すると、次のようになっていると思われる。

「D-G-C-F-A-D-G-C」

この各弦の隣に、1オクターブ低い弦も張られているという状態だ(高音2つのG, Cには同じ音程の弦が張られている)。各弦の音程は4度間隔だが、F-Aのところだけ3度間隔になっているのは、通常のギターの3弦-2弦の組み合わせ(G-B)の音の間隔と同じである。つまり、このギターの場合は、通常のギターの高音側に2つ(2本ずつ計4本)弦が追加されたような形となっているといえる。そして通常のギターからは全体が1音低いチューニングになっている状態のようだ。

 

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各ギターのチューニングは、基本的にこのように「1オクターブ音程が異なる弦」あるいは「同一音の弦」と2本組み合わせて、豊かな響きが得られるようになっているが、Kevinのウェブサイトの情報によると、音程の組み合わせは、同じギターでも様々に試行錯誤しているようだ。
(興味のある方はウェブサイトをご確認ください。
http://www.kevinkastning.com/>)

サイトでは、弦の種類についても詳しく記録があり、弦のタイプがプレーン弦なのかワウンド弦か、また材質もブロンズかニッケルか、といった区別にも詳しく記載がある。「ブロンズはニッケルよりも音色が少しダークになる」「ニッケルの方が音が出るまでの反応が速い」といった微妙な違いについてもレポートが載っており、日々それらを探求して最適な組み合わせを模索しているようだ。

本アルバムの各曲は、即興的な演奏が中心となっている。ギターサウンドは全体的に増4度のハーモニーが多い気がするが、そのせいか全体的に不安定な空気感が続いていく。これらのハーモニーは、ピアノとは異なるギターならではの倍音感に満ちた心地好い響きとなっている。その音にずっと身を任せていると、それぞれの音が体の中に染み込んでくるような、浮遊感に満たされながらもその中に体が溶け込んでいくような、不思議な感覚に満たされていく。ベースのBruno Råbergとのやりとりもとてもドラマチックで、上述のような、Kevinのギターの音の反応スピードへのこだわりなども知った上で聴いていくと、こうした即興的なやりとりの面白さが、別の角度からもあらためて興味深く見えてくる。とても刺激的で魅力的なアルバムだ。

 

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久保智之

久保智之(Tomoyuki Kubo) 東京生まれ 早大卒 patweek (Pat Metheny Fanpage) 主宰  記事執筆実績等:ジャズライフ, ジャズ・ギター・マガジン, ヤング・ギター, ADLIB, ブルーノート・ジャパン(イベント), 慶應義塾大学アート・センター , ライナーノーツ(Pat Metheny)等

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