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Jazz and Far Beyond

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CD/DVD DisksNo. 325

#2383 『三原彩子/カーテン・コール』
『Ayako Mihara/ Curtain Call』

text by Keiichi Konishi 小西啓一

Triplet Records FRI-09131 ¥2800(税込)

Ayako Mihara (Piano)
Tyler Mitchell (Bass)
Yaya abdul (Drums)
Mimi Block (Vocal/Violin) -2曲参加(track 2, 6)

1   Relaxin’ at Camarillo – Charlie Parker
2   Con Alma – Dizzy Gillespie
3   Happy Hour – Elmo Hope
4   Time Waits – Bud Powell
5   Rhthm-a-ning – Thelonious Monk
6   If You Could See Me Now – Tadd Dameron
7   Curtain Call – Barry Harris
8   Un Poco Loco – Bud Powell

Recorded at Acoustic Recordings in Brooklyn, New York, December 18, 2024

Michael Brorby (Recording Engineer)
David Darlington (Mixing/Mastering Engineer)


“ビバップ道”一筋だったピアノの匠、バリー・ハリス(21年12月没)は、演奏家としてだけでなく、ジャズ教育者としても知られる。マンハッタンで開かれていたその”ジャズ・ワークショップ“には、夭逝した天才~福井良を筆頭に、渡米した多くの若い日本人ミュージシャン達も参加、彼から多くのものを学んでシーンに巣立っていった。
今回アルバム・デビューを果たした三原彩子も、そうした熱烈な”バリー・ハリス・チルドレン“の一人で、アルバムのタイトルは『カーテン・コール』。タイトル・チューンは、ハリスの初期名盤『アット・ザ・ジャズ・ワークショップ』(60年)に収録されている、彼の代表的オリジナルだが、このタイトルからも師匠への追慕の念が感じ取れる。
今回遅めのデビューを果たした彼女だが、ジャズ・ピアニストとしてはそれなりのキャリアの持ち主の様だ。長年ジャズ=ビ・バップの魅力に強く惹かれ続けており、念願のハリス”ワークショップ“に参加したのは 2016年からと聞くから、晩年の教え子の一人という訳だが、彼のオーケストラやクワイアーにも積極的に参加、ハリスからの十二分とも言えそうな”バップ洗礼“は、このデビュー・アルバムの大きな魅力となっている。
アルバムはタイトル曲をはじめ全8曲で、これがバップの始祖=バード(チャーリー・パーカー)の”リラクシン・アット・カマリロ”を筆頭に、バードの僚友ディズ(ディジー・ガレスピー)の”コン・アルマ”、そしてバップ・ピアニズムの極地、バド・パウエルの”ウン・ポコ・ロコ””タイム・ウエイツ”など、ビバップの立役者達の代表的ナンバーがずらりと並び、さながらバップの顔見世興行…と言った賑やかさ。だがアルバムの内容はそれに反し実に真剣で真摯、“バップ”道に掛けるその想いが迸る感もあり、スタンダード・ナンバーやポップ・チューンなどに目もくれず、バップ・ナンバーに徹したその潔さ、清々しくも気持ち良いものだ。また女性バッパーらしい、強靭にしてしなやかなプレーも、その魅力の一つを形作る。三原はバリー・ハリスにジャズ全体を習うと共に、ピアノをバーサ・ホープからも学んでいたと聞くが、彼女の旦那であるバップの名匠の一人、エルモ・ホープの“ハッピー・アワー”もここに収録されている辺り、御愛嬌だし嬉しい処でもある。
録音は昨年(24年)の暮に本場 NY で行われており、ベーシストとドラマーもハリス・サークルの面々の様で、このトリオの息の合ったコラボも、仲々に気持ち良いもの。アルバムには”コン・アルマ”など2曲で、彼女の若き仲間とも言えるミミ・ブロックも、ボーカルとバイオリンで参加、アルバムに可憐にして大胆な彩りを添えるが、彼女も“バリー・ハリス演奏功績賞”受賞という、あくまでも師バリー・ハリス及びバップに拘った、全体のスカッとした佇まいも、本作の興味深い処だと言えそうだ。

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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