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Jazz and Far Beyond

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CD/DVD DisksNo. 326

#2385 『Ensemble Shippolly / Love Shippolly』

Text and photos by Akira Saito 齊藤聡

Kaori Nishijima 西島芳 (piano, synthesizer, voice)
Tsutomu Takei 武井努 (tenor sax, clarinet, bass clarinet, flute)
Yuki Nakayama中山雄貴 (trombone)
Rabito Arimoto 有本羅人 (trumpet, flugelhorn, bass clarinet)
Guest
Misaki Motofuji 本藤美咲 (baritone sax, clarinet)
Kiyotaka Moriuchi 森内清敬 (darbuka, percussion)

1. 残火 /Embers
2. 静愛 /Love Shippolly
3. 山鳩 /A Dove
4. 河鹿I /Moonlit Croaks-I
5. 煙草 /Tabacco
6. 初恋 /She Doesn’t See
7. 河鹿II /Moonlit Croaks-II
8. 彼岸 /Pāramitā
9. 渡鳥 /I Wish You Would Stay A Little Longer
10. 永遠 /Evighet

Recorded at SANWA Recording Studio,Osaka
Recording Date: 4,5 Dec, 2024 & 24 Jan 2025
Recording Engineer: Koji Mannami
Second Engineer: Hiromi Kishimoto
Assistant Engineer: Takumi Kotera
Mixing & Mastering: Koji Mannami
All the songs composed by Kaori Nishijima
except tracks 4,6,7 composed by Tsutomu Takei
Art Works: Kazumi Ozaki
Art Direction & Design: Yuya Ozaki (wildpitch)

異色の音楽集団アンサンブル・シッポリィが4年ぶりの第3作となるアルバムを出した。このグループのテーマが「息のかさなり」であることは変わらないが、サウンドとしてのあらわれはずいぶん変わってきている。前作『ダンシング・シッポリィ』のそれがここちよい社交空間での踊りであったとすると、本作はより静かに互いを尊重しあうコミュニティのありようを思わせる。

音と音との間にある空間はいつになく広い。それはたんに音数が少ないとか静謐であるとかいったことを意味するわけではない。間の性格を「あいだ」ではなく「ま」として捉えてみるのがよいかもしれない。

「間」の中で、(演者を含めて)音を聴く者はその響きを自身のなかに取り込み、味わい、消化を見届ける。その直近の記憶がサウンドをさらに内省へと導く。

「間」があるからこそ、演者の所作まで音楽となってしまう。息もまた所作のひとつの現象なのだから、このサウンドは演奏の結果というよりも演奏という過程を包んだものだ。

これは、それぞれの音が大切にされ、乱暴に混ざりあうことのない世界の音楽である。ふたりの新しいゲストが自然にコミュニティに加わっているように感じられるのも、故なきことではないだろう。

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』、『オフショア』、『Jaz.in』、『ミュージック・マガジン』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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