#2421 『石若駿トリオ / Live at ALFIE “Temporal Cubic”』
text by Tomoyuki Kubo 久保智之
AFCD-6009 3,300円(税込)2025年12月17日 発売
01. Immortal Jellyfish ~ Pimiento(Shun Ishiwaka)
02. Temporal Cubic(Shun Ishiwaka, Yusei Takahashi, Marty Holoubek)
03. Goodbye(Gordon Jenkins)
04. Room(Shun Ishiwaka)
05. Big Saaac.(Shun Ishiwaka)
06. Angelsmiles(Terumasa Hino)
07. Hip Bone(Motohiko Hino)
Shun Ishikawa : drums. Piano on track2
Yusei Takahashi : piano
Marty Holoubek : bass
Produced by Yoko Hino (JAZZ HOUSE ALFIE)
A&R by Ryoko Sakamoto (diskunion)
A&R assisted by Yoshinori Nishio (diskunion)
Artist Management : Hitoshi Tabuchi (RUN Inc.), Youngstone Musicinc.
Recorded on November 18, 2024 at JAZZ HOUSE ALFIE (Tokyo, Japan)
Recorded and Mixed by Shigeharu Nakauchi (ONKIO HOUS)
Mastered by Wataru Ishii (OTONO WORK)
Photography and Design by Mikio Hasui
東京・六本木の老舗ジャズクラブ〈ALFIE〉でのライブ録音シリーズ。その第9作となる本作は、2024年11月に行われたライブの模様を収めたアルバムだ。石若駿(ds)、高橋佑成(p)、マーティ・ホロウベック(b)によるトリオ編成で、全8曲を収録。全体を通して感じられるのは、のびのびとした自由度の高さと、細やかなコントロール感だ。その二つを巧みに両立させながら、強い疾走感と高い熱量を生み出している。
1990年代生まれの三人はいずれも、ジャズを軸にしながら、さまざまな音楽を吸収してきたアーティストだ。本作からは、そのそれぞれの柔軟な音楽性が随所に感じられる。即興性の高さが生む緊張感を保ちつつ、その場の空気を楽しみながら音楽を進めていくような軽やかさもあり、そのバランス感覚がとても魅力的だ。深いハーモニーとしなやかなリズムが自然に重なり合い、ライブならではの流れがそのまま記録されている。三人のハーモニーとリズムには奥行きがあり、ふくよかで立体的な音の空間が感じられる。
一曲め、〈Immortal Jellyfish〉は、石若のドラムソロから幕を開ける。アウト感のあるピアノのテーマが重なり、楽曲は一気に前へと走り出す。途中に挟み込まれる短いドラムソロやベースソロも効果的で、三人それぞれの個性が浮かび上がってくる。まさにこのライブの幕開けとして、トリオの持ち味を紹介するかのような展開だ。続く〈Pimiento〉では、揺らぎのあるリズムとメロディが心地よく広がっていく。石若は細やかにビートを刻みながらも、大きなリズムのうねりを生み出していく。バンドとしての呼吸の深さが感じられ、力強さとしなやかさが同時に存在する、印象的な演奏だ。
フリー・インプロヴィゼーション色の強い〈Temporal Cubic〉は、本作の中で特にスリリングな一曲。クレジットを見ると、石若はドラムだけでなくピアノも演奏しているようだが、実際どのように音が組み立てられていったのか…… さまざまに想像をかきたてられる。緊張感に満ちた本曲の演奏が終わると、次にはしっとりとしたバラード〈Goodbye〉が現れ、張り詰めた空気をやさしく解きほぐしてくれる。その温かなコントラストが、アルバムに美しい流れをつくり出している。
〈Room〉は、ドラマチックな展開を見せる大曲だ。演奏時の映像が公開されているが、その映像を観ることで、音だけでは気づかなかった細部がより鮮明になる。石若は冒頭、両手にブラシを持って演奏を始め、途中から左手はブラシのまま、右手を素早くスティックに持ち替えていく。ピアノのメロディが次第にクリアになるにつれて、左手もスティックに替え、シャープにアクセントを加えていく様子がよくわかる。カメラは石若をアップでとらえる場面が多く、ピアノのフレーズに対するドラムの繊細なアクセントの付け方や、中盤のベース・ソロの一音一音に丁寧にスティックを合わせていく姿がわかり、とても興味深い。終盤、ドラムとベースとピアノが大きなうねりとなり、バンド全体が一体化しエンディングへと向かっていく展開は圧巻だ。
〈Room〉当日の演奏の様子
〈Big Saaac.〉は強い疾走感が前面に出た楽曲だ。ここでも石若の鮮やかなスティックさばきが光る。三人がしなやかにリズムを変化させながら進んでいく一体感も実に心地よい。エンディングに向かう6曲目は日野皓正の〈Angelsmiles〉。石若と高橋は日野皓正から大きな影響を受けてきたと思われるが、この曲には特別な気持ちが込められているのかもしれない。強い想いが伝わってくるような熱い演奏だ。
アルバムの最後を飾るのは、日野元彦の〈Hip Bone〉。メインとなる2つのコードの反復に心を揺さぶられる。
演奏が終わったあとの歓声やMCからは、当日のライブの熱量や会場の空気感がありありと伝わってくる。本作には、演奏の素晴らしさはもちろんのこと、その場の熱気や空気感までもが封じ込められているように感じられる。実に貴重な記録。大きな価値を持つライブアルバムだ。
