#2428 『瀬尾高志、アキム・カウフマン、芳垣安洋 / Hatsu-Arashi』
Text by Akira Saito 齊藤聡
attack deer
Takasihi Seo 瀬尾高志 (contrabass)
Achim Kaufmann (piano)
Yasuhiro Yoshigaki 芳垣安洋 (drums, percussion)
1. hatsu-arashi
2. ogi’s arc and murmur
3. bleached lotus,rattling
4. kiku’s dance
5. underwater creatures
6. the faintest blue blush of horizon
Recorded on September 11, 2024 at Jazz Spot CANDY, Inage, Chiba, Japan
Recorded,mixed and mastered by Mitsuhisa Sakaguchi
Artwork and photography by Gabriele Guenther
Cover designed by Jakob Philippsen
The text on the obi was written by Kayo Fushiya
produced by Takashi Seo
Hatsu-arashi can be translated as First Tempest.
ベルリン在住のアキム・カウフマンがピアノトリオで録音した作品は何枚もあるが、本盤はそのどれにも似ていない。たとえば『Kyrill』(2008年)にはジム・ブラック(ドラムス)の、『Grünen』(2010年)にはクリスチャン・リリンガー(ドラムス)の、あるいは『Cicatrices Intérieures』(2019年)にはトルステン・ミュラー(ベース)の音があり、おのおのが長い年月で培った個がトリオとして共存している。
本盤における芳垣安洋の融通無碍のドラミングはみごとであり、天性のものとしか思えない光がグルーヴとなって結実している。そして瀬尾高志は特濃の気を注入しつつも微かなタッチから覚悟をもった強いピチカートまでを迷いなく提示し、そのダイナミックレンジは非常に広い。日本のジャズシーンでかれらが日々活動していることを、私たちは喜び続けなければならない。
もちろんかれらと他の共演者たちについて、ワールドカップかなにかのように個の強度を比べたいわけではない。むしろ本盤の特徴として強く感じることは、トリオの関係性が音楽そのものだということだ。対話をテーブルの上にのせて個を尊ぶのがヨーロッパやアメリカの社会のありようだと仮に見立てるとして、本盤には、テーブル自体もその場で作り上げてしまおうという意思が横溢している。それをアジア的だと敢えて言わなくてもいいのかもしれない。
カウフマンが水晶のごとき音を前触れなく繰り出し、瀬尾の弦がその減衰を引き受け別の音につなぐ。芳垣の打音や擦音はすべての空隙を活性化する。呼応の順番は一様ではない。ふと現れた空っぽの空間に瀬尾が種を撒き、あるいは芳垣が火薬を仕掛け、そこからまた別のテーブルがかたちづくられてゆく。
本盤はJazz Spot Candyにおけるライヴ演奏のファーストセットを収録したものであり、セカンドセットもリリースされる予定だという。また別のコミュニケーションをみせてくれるのだろうと期待する。
(文中敬称略)
瀬尾高志, アキム・カウフマン, 芳垣安洋