#2431 『The One / Chasing Shadows』
Text by Akira Saito 齊藤聡
Park West Records
https://parkwestrecords.bandcamp.com/album/chasing-shadows
Anthony Coleman (piano)
Adam Lane (bass)
Patrick Golden (drums)
1. The Intervals Between
2. Hold
3. Night Blue Sky
4. To The Dance
5. Blood Vine
Recorded at Park West Studios in 2025
Mixed/Mastered by Jim Clouse
Artwork by Seth Indigo Carnes
www.sic.studio
@soulincode
アダム・レーンはちょっと風変わりなアプローチを行うベーシストであり、2013年に相次いでリリースされた『Absolute Horizon』(No Business)や『On Freedom』(CIMP)ではじめて音に接したときは少なからず驚いた。武道の達人の演武を思わせる個性は本アルバムでも際立っている。音の主役はサステインであり、フレーズの間隙を埋めるだけでなくヴィブラートが音色を変え続ける。これがトリオの駆動力になっていると言ってよいだろう。
パトリック・ゴールデンのドラムスもまた普通ではない。音色の変化がサウンドに揺らぎを与え、耳に届く音はその前に届いた音の記憶を絶えず塗り替える。それは決して他者の音の後追いではない。シンバルの打音は閃光となって聴く者を覚醒させ、一手先にトリオの進む方向を主導している。スネアドラムもテンションを繊細に調整しており、本人に確認したところ狙う音のため裏のスナッピーを着脱しているという。
そしてレジェンドの域に達したアンソニー・コールマンがピアノを弾く。コールマンのピアノトリオとしてはセファルディ・ティンジ(Sephardic Tinge)というユニットでの諸作が印象深いが、これらはイベリア半島のユダヤ人ディアスポラの伝統曲や古いジャズ曲を演るプロジェクトでもあり、コールマンがやや暗鬱な気配を身にまとうものだった。本アルバムのありようはまったく異なり、レーン、ゴールデンとの対等な音遊びを楽しんでいるように思える。
三者の手合わせにより、結晶があらわれては一瞬でその姿を消してしまう。本アルバムはその過程を幻視さえもできる作品だ。
(文中敬称略)
アダム・レーン, フリー・インプロヴィゼーション, パトリック・ゴールデン, The One, アンソニー・コールマン