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CD/DVD DisksNo. 338

#2445 『サニー・マレイ&豊住芳三郎/太陽の恵み』
『Sunny Murray & Sabu Toyozumi / Sun’s Blessings』

text: Yoshiaki Onnyk Kinno 金野Onnyk吉晃

NoBuisiness Records, 2026 NBCD 185

Sunny Murray – drums
Sabu Toyozumi – drums

1. Mischievous Saga   45’51
2. Brave Warriors       14’19

Recorded live on 4th April, 1999 at Zippy Hall, Sappolo, Japan by Mitsuyoshi Takada
Concert produced by Yasuhide Nagase
Mastered by Arūnas Zujus at MAMAstudios
Design by Danas Mikailionis
Cover painting by Sabu Toyozumi
Photos by Shiro Yamazaki@Suimintei


<万物律動>

太陽の恵み=サニーの遺産、と解していいのだろう。
おなじみリトアニアの「ノービジネス・レコード」による、「ちゃぷちゃぷシリーズ」である。27年前、サニー・マレイ唯一の来日公演におけるライブツアーの札幌ライブ。
サニー・マレイ!この名前は、フリージャズというムーヴメントの中で決して忘れる事が出来ないし、消える事も無い。フリージャズの最高峰とも言うべき『スピリチュアル・ユニティ』を成した三体の一角として永遠に語り継がれるだろう。
ライナーノートで齊藤聡も書いているが、彼のドラミングは、その独自のシンバルとスネアの生み出すパルス(イマム・アミリ・バラカの言)にある。それは常時打ち寄せる波のように、聴覚を浸食して来る。トニー・ウィリアムスが、どこまでも細分化したシンバル・レガートを、コンボ全体の疾走感に高めて行くのとは異なり、マレイは「安定したうねり」を生み出す。それはスウィングではない。波としかいい様がない。

今回、このデュオを聴くにおいて、サブ豊住の変幻自在さはマレイのうねりと、どう拮抗するだろうかと想っていた。豈図(あにはか)らんや、二人の境はどんどん消えていく。最初の45分のトラックでは時間が経つにつれて、どちらがどちらか判別できなくなっていく。
相即不離というコトバがあるけれど、まさにそれだ。いや、確かにマレイはうねっている。そこに「打狂人」=サブの一打、一打が、波をかいくぐり、あるいは波にのり、あるいは飛び込み、かきまわしながら一幅の絵を描いていく。
私の胸中はもうお分かりだろう。そこに浮かぶのは北斎の『神奈川沖浪裏』だ。マレイのシズル・シンバルと対になるスネアの響きは、異様に細かく描き込まれた波頭と波しぶきのようだ。巨大な波濤は遠方の富士より遥かに高く、サーフボードのような船を飲み込まんとする。我々聴衆は、それに乗った客達だ。

20分を超えたあたりからまさに二人の音は一体と成って、デュオでもバトルでもなく止揚されていくのである。本当に楽しそうだ。おそらく両者ともに無我の境地であったあろう。

一転、2トラック目は、ミディアム・テンポのスタンダードでも始まろうかというリズムが、最後までその感覚が途切れない。この二人はタイムキーパーではない。彼らが「時」を生み出すのだ。

ふとマレイの写真を見ると、フロアタムがない。いや通常キックの上にあるタムさえもない。そうか、それでいいのだ。
そして、その事は、私にまた別のドラマーを思い出させた。
2025年に亡くなったスウェーデンのスヴェン・オケ・ヨハンソンである。彼について詳しく語るのは控えるとしても、欧州フリージャズ・ムーヴメントの重要人物の一人であることだけは記しておこう。
彼のドラム・ソロ・アルバム『シュリンガーラント』(SAJ, 1972)を聴いたとき、そのプリミティブともいうべきドラミングに驚いた。今なら言える。それは彼がマレイのドラミングに影響を受け、それを彼流に昇華した結果だったと。実際にそう語ってもいるようだ。

「太陽の恵み」に戻ろう。
これは「リズムがない音楽なんて聴けない」という人に聴いてもらいたい。
トラック2ではなく、トラック1をだ。
そしてリズムに囚われるのではなく、万物全てがリズムであることに気づいてほしい。
オンガクの要素として言うリズムとは、万物の律動の抽象化なのだ。そしてオンガクとは、あらゆる現象(自然も思考も感情も含め)の抽象化された形式に他ならない。だから「形式を超えた音楽もある」という物言いは破綻する。音楽とは形式だ。
ならば「太陽の恵み」は形式なのか?
いかにも。貴方がそれをCDというメディアで聴く限りは。
それは二つの生の交錯の、切り取られた瞬間だから。
しかし、この絵の中にマレイの波、サブの船を感じるか否かは貴方次第だ。

最後に、ジャケットに使われたサブの水墨画について。
これまで多くのアルバムで彼の絵を見て来たが、これは会心の一作ではないだろうか。どうなんですか、サブさん?

♫ ちゃぷちゃぷレコード
https://goronyan003.stores.jp/

金野 "onnyk" 吉晃

Yoshiaki "onnyk" Kinno 1957年、盛岡生まれ、現在も同地に居住。即興演奏家、自主レーベルAllelopathy 主宰。盛岡でのライブ録音をCD化して発表。 1976年頃から、演奏を開始。「第五列」の名称で国内外に散在するアマチュア演奏家たちと郵便を通じてネットワークを形成する。 1982年、エヴァン・パーカーとの共演を皮切りに国内外の多数の演奏家と、盛岡でライブ企画を続ける。Allelopathyの他、Bishop records(東京)、Public Eyesore (USA) 等、英国、欧州の自主レーベルからもアルバム(vinyl, CD, CDR, cassetteで)をリリース。 共演者に、エヴァン・パーカー、バリー・ガイ、竹田賢一、ジョン・ゾーン、フレッド・フリス、豊住芳三郎他。

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