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CD/DVD DisksNo. 338

#2444 『佐藤恭子セプテット / Echoes Of Longing, Memories Of Little Lights ~憧憬の残響、微かな光の記憶~』

text & photo  by Toshio Tsunemi 常見登志夫

doLuck Jazz  MQA-CD ¥3,500(税込)

佐藤恭子(as,ss)
石川広行(tp,flh)
和田充弘(tb)
デイビッド・ネグレテ(ts,fl)
武藤勇樹(p)
佐藤潤一(b)
北澤大樹(ds)

01 Yes Or No
02 En’nichi 縁日
03 Woodgrain – Prologue
04 Woodgrain – Dreaming
05 Lost Shoe, Fading Sunset
06 Metacognition
07 Here’s That Rainy Day
08 October Sky In Tokyo
09 Benghalensis
10 Just Be Happy -午後3時、たい焼きやさんの前で

2025年4月19,20日 前橋・夢スタジオで録音


サックスプレーヤー/作編曲家の佐藤恭子のセプテットでの新作アルバム『Echoes Of Longing, Memories Of Little Lights ~憧憬の残響、微かな光の記憶~』をリリース、その発売記念ライブのステージを取材した(3月9日(木)、新宿・ピットイン。記事はジャズ専門誌『Jaz.in』に寄稿)。その際、資料として聴いたアルバムが素晴らしく、ここに紹介したいと思う。

佐藤のステージを初めて聴いたのは、2008年の阿佐ヶ谷ジャズ・ストリートのステージに上がった、11人編成の佐藤恭子リトル・ジャズ・オーケストラ(のちにリトル・オーケストラ)。しっかり指揮もしていて、サックス奏者というより作編曲家の印象が強かった。かなり若いのに、緻密なアレンジ(どの曲にもびっくりするような仕掛けが潜んでいた)と圧倒的なパワーを持った大編成バンドから放たれるふくよかなサウンドのバランスが見事だった。

佐藤は大編成のバンドだけでなく、その後も様々なフォーマットでアルバムをコンスタントにリリースしている。その多くが佐藤自らのペンによる作品群だ。この『Echoes Of Longing~』の収録曲も〈Yes Or No〉〈Here’s That Rainy Day〉を除いてすべて彼女の曲である。今回のアルバムも、「“今”を生きる私の、ささやかな記録」と佐藤が語るように一つの通過点なのかもしれない。佐藤自身の記憶や日常、歴史や社会への想いを音にほどいたとはいうものの、私の心に残るアルバムとなった。
ピットインでのステージの模様は『Jaz.in』誌に譲るが、印象的だったのは、細部にわたってびっしりと譜面が書き込まれていたことだ。自らの音楽を発信する際には、ふだんから全身全霊を捧げる姿勢が垣間見られた。

このアルバムを録音するにあたっては、エピソードがある。
ピットインの店長から急遽出演を打診された佐藤は、「その日スケジュールが空いていて演奏できるメンバー」(このセプテットのメンバーである)を募り、特別セッションのイメージで企画したそうだ。それぞれが譜面に強く、アドリブも個性的なこともあり、オリジナル曲やアレンジを書き下ろしたのだが、そのステージを見たdoLuck Jazzレーベルのプロデューサーの平井清貴氏が「ぜひこのメンバーとそのままの曲でアルバム制作を」と声をかけてきてくれたとのこと。

YouTubeにアルバムのダイジェスト版が紹介されている。

演奏後、佐藤にこのバンドやアルバムに寄せる想いを聞いた。

「リトル・オーケストラではコンダクトがメインでしたが、演奏ももっとしたいと思ったのと、時代に合わせた機動力では今のセプテットが良いバランスだと思っています。メンバーとは長年共演を重ねてきて、それぞれのプレイ・スタイルや協調性、責任分担がしっかりしていて、バンドの雰囲気がとてもいい。私のリーダーとしての大変さも理解し支えてくれて、それが音楽に大きく影響しています。

インドやヨーロッパでのジャズ・キャンプで、子どもたちが自国の文化やアイデンティティをジャズの文脈に反映させている姿にインスパイアされ、自分の中にある「日本の情緒」みたいなものをアルバムの主題にしました。

編曲では、限られた時間の中で、みんなのストレスにならない範囲でどこまでできるかという逆算をして難易度の限界にチャレンジしています。どのパートも綿密に書いていますが、アドリブでは各人の個性に全幅の信頼を置いています。スタンダードの編曲は、エンターテインメントとして楽しさを伝えていきたい一方で、オリジナルは徒然なるままにその時々の感覚を綴っていきたい。時代を映す社会派創作のようなものにも、取り組んでいきたいと考えています。」

 

常見登志夫 

常見登志夫 Toshio Tsunemi 東京生まれ。法政大学卒業後、時事通信社、スイングジャーナル編集部を経てフリー。音楽誌・CD等に寄稿、写真を提供している。当誌にフォト・エッセイ「私の撮った1枚」を寄稿。

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