#2449 『坂田明+類家心平+乾純 / 銀愁』
Text and photos by Akira Saito 齊藤聡
Sister Records
Akira Sakata 坂田明 (as, bcl, vo, ringing instruments)
Shinpei Ruike 類家心平 (tp)
Jun Inui 乾純 (ds)
Yozaburo Ito 伊藤洋三郎 (トークゲスト、俳優)
1. インプロヴィゼーション1/2
2. トーク 伊藤洋三郎 vs. 坂田明
3.インプロヴィゼーション2/2
ライナーノーツ、カリグラフィー 伏谷佳代
録音 竹井謙太郎
ミックス・マスタリング 中村宗一郎 (peace music)
写真 石田昌隆
デザイン タカギトオル
本盤でドラムを叩く乾純(イヌイジュン)の近著に『PUNK! 反逆の向こう側で ザ・スターリンたちはなにを歌ったのか』(シンコーミュージック・エンタテインメント、2026年)という本がある。目次には「パンクとはなにか」「パンクは反逆ではない?」など、このドラマーの考えについて把握するための手がかりになりそうな煽り文句。だが紐解いてみても、そんなことは1ミリも書かれていない。なるほどそのあり方がパンクか。
本盤収録時の演奏を観たとき強く感じたことがある。板垣恵介による漫画『バキ』のシリーズにはスペックという最凶死刑囚が登場し、5分間息をせずに打撃を続ける「無呼吸連打」を見せつける。一方の乾は後先考えずにバスドラムを連打し続けるのだが、スペックではないのにスペックのようにプレイするものだから息が上がり、それでも演奏をやり遂げるという課題を完遂する。持てる力を出し尽くすプロセスを隠さず観客に見せること、それがイヌイジュンのパンクである。だから、演奏後に「ドラムが壊れました」と満足気に呟くのはパンク完遂宣言。
日本のフリージャズが何かに立ち向かう姿を音楽として昇華させる表現であったとして、坂田明もまたプロセスを隠さない人。ミジンコのことを語るトークには爆笑したが、本盤を聴いてもまた笑ってしまう。氏は、他国ではミジンコのことを「水のノミ」だと説明しつつ、英語では「water flea」、ドイツ語では「Wasserfloh」、そしてロシア語では「***」だと発音するのだが、途中から本当なのかウソの芸なのかわからなくなってくる。これが坂田明の神髄、演奏もまた然り、語りであろうが騙りであろうがそれは坂田明に他ならない。
そして今回加わった類家心平は楽しそうで、水を得た魚のようだ。トランペットから放ち続ける音からは情が滴り、その絶えざる介入が類家心平という存在を形づくっている。
本盤に収められている音の背後にはプレイグラウンドがあり、会話がある。本腰を入れて聴けばやめられなくなるだろう。
(文中敬称略)
2026年3月30日、東京銀座・柴田悦子画廊にて




