#2450 『TON・KLAMI』
Text and photos by Akira Saito 齊藤聡
33-33
https://33-33.bandcamp.com/album/ton-klami
Kang Tae Hwan 姜泰煥 (alto saxophone)
Midori Takada 高田みどり (percussion)
Masahiko Sato 佐藤允彦 (piano)
1. LYNX
Recorded : 6 July 2024 / at The Yamaneko-ken Japan
Recorded & Mixed by Satoh Masahiko
Mastering by Taruoka Daishi
Calligraphy by Miwa Mayumi
Design by Gareth Horner
Produced by Chris Vaughan
Released by 33-33
Thanks to Soejima Teruto and Soejima Tsunetsugu
トン・クラミのデビュー盤は、1991年のメールス・ジャズ・フェスティヴァルにおけるライヴ録音『In Moers』(Ninety-One)。2枚目は94年のスタジオ録音『Paramggod』(Ninety-One)であり、ネッド・ローゼンバーグを招いてサウンドの拡がりを試したのではないかと思える作品である。3枚目、95年に山口県のホールで行われたライヴ録音『Prophecy of Nue』(NoBusiness Records)は、前作での試行を経て迷いがなくなり、腹を決めたようなサウンドだった。本盤は4枚目の作品であり、2024年に越生の山中にある山猫軒で実現したライヴである。
高田みどりは、本盤と同時期のインタビューにおいて、演奏の場に関して「今は人に聴かせる場もいただくので、そこにお迎えしたお客さまが洞窟を共有して一緒にいてくれて、その場にいるみんなの居心地がよい空間を会場ごとに考えます」と答えている(*1)。山猫軒は「洞窟」としてはかなり個性的な会場だっただろう。天井が極めて高く、柔らかな木の壁で包まれて、静かに響きが吸収されてゆくような場。その一方で、森の光と音に開かれ、地球の自転を体感する場でもある。本盤の音からもその雰囲気を感じ取ることができる。
筆者がこのライヴを観たときに驚いたことは、姜泰煥が演奏にあたり極めて独特な肉体の使い方をしていたことだ。もちろん循環呼吸奏法を得意とすることで知られているプレイヤーである。だが、かれが制御するのは呼吸器や口蓋だけではない。姜は腰をおろしたまま上半身の角度を極端に変え、背中のあちこちを動かし続けた。こうなると、場に入ってきた演者というよりも、場と有機的に接続された身体器官というべきだ。
あらためて本盤でサウンドに耳を傾けると、ジャズや集団即興にある「各演者の個性的な演奏が集まってサウンドを形成する」というありようとは異なるように感じられる。佐藤允彦がサウンドの方向を変えていくのは川の流れのように自然であり、高田みどりの動きは演者とのインタラクションにはとどまらない。三者は「既存の場に入る」のでもなく、また「加算で場を作る」のでもない。「場になる」のである。
ライヴ当日
(*1)「居心地のよい洞窟を求めて―――高田みどり、インタヴュー」(『ele-king』vol.33、2024年)
(文中敬称略)
佐藤允彦, 姜泰煥, 高田みどり, フリー・インプロヴィゼーション



