#2448 『ギドン・ヌネス・ファズ~カール=マーティン・アルムクヴィスト/池の中のかわず』『Gidon Nunes Vaz~Karl-Martin Almqvist Quintet / Frogs In A Pond』
text: Toshio Tsunemi 常見登志夫
Gidon Nunes Vaz ¥3,410(税込) 6月23日発売(ディスクユニオン)
※Sound Liaisonレーベルで2027年秋、DXD (Digital eXtreme Definition)フォーマットでのCDを発売予定
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1009229301
Gidon Nunes Vaz (tp,flh)
Karl-Martin Almqvist (ss,ts)
Timothy Banchet (p,fender rhodes)
Cas Jiskoot (b)
Martijn Vink (ds)
1. FROGS IN A POND
2. SHORTER’S BRUSH
3. GALAXEN
4. YUGEN
5. BLUES FOR MARA
6. STILTJE
7. WE ALL KNOW
8. CPH
Produced by Gidon Nunes Vaz, Karl-Martin Almqvist and Peter Björnild,
a cooperation with Sound Liaison
Recorded at the MCO Studio 2, Hilversum, The Netherlands on September 5th, 2025
Recording, mixing and mastering by Frans de Rond
Cover design by Pontus Dahlström
Cover photos by Zofia Niewcas
オランダの若きトランペット/フリューゲルホーン奏者、ギドン・ヌネス・ファズ Gidon Nunes Vazと、スウェーデン出身のベテランサックス奏者、カール=マーティン・アルムクヴィスト Karl-Martin Almqvistとの双頭クインテットによる新しいアルバム、『Frogs In A Pond』が届いた。
後述のファズの説明にもある通り、型番を付さない自主製作盤となっている。
(日本国内のディストリビューターであるディスクユニオンのHPでは、レーベルを「Gidon Nunes Vaz」としている。
ファズはまだ35歳ながら自己のグループ(カルテット、クインテット、セクステット)で精力的にリーダー作をリリースしており、作品の多くはオランダ出身のトランペット奏者にしては珍しく、ハードバップに根差したストレートアヘッドな演奏スタイルに徹している。
2021年のワン・ホーンのバラード集『Ebb Tide』(国内発売盤)の帯のキャッチ・コピー(「オランダが誇るトランペットの詩人」)が示すとおり、中音域のふくよかな音色と流麗なフレージングが魅力的なトランぺッターである。
レヴューを書くにあたり、オランダ在住のピアニスト、小橋敦子氏によるファズへの詳細なインタビュー(2018年11月3日)を参考にさせていただいた。
ファズは自己のグループだけでなく、他のバンドのサイドメンや多くのビッグバンドに長年参加していたが、2023年からはデンマークラジオ・ビッグバンド the Danish Radio Big Band(DRBB)にオーディションを受けて加入、第5(ソロ)トランペット奏者のメンバーとして活動している。
今秋11月には、アルムクヴィスト(sax)とともに、挾間美帆+DRBBでの3度目の来日ツアーに参加が決定している。
『Frogs In A Pond』の収録曲は、ファズとアルムクヴィストが各4曲を作曲した、すべてオリジナル曲である。
各曲の作曲の背景や構成の意図がライナーに書かれているので、下記に転記した。
■Tracklist
①FROGS IN A POND (Karl-Martin Almqvist) 06:24
Sat late one evening in the dark with one of my biggest musical idols/role models.
Listend to the frogs from the pond nearby.
It really sounded like they were conversing with each other.
②SHORTER’S BRUSH (Gidon Nunes Vaz) 7:50
This piece was inspired by the late Wayne Shorter and his use of colours in his compositions.
Initially I wrote it in 3/4 time but when Karl-Martin suggested to try it in 5/4 it worked better.
The composition convinced me to have the Fender Rhodes in the recording.
③GALAXEN (Karl-Martin Almqvist) 06:26
I was inspired by creating melodic lines based on different fixed intervals.
I wrote a number of lines that I thought would fit nicely with the rhythm section’s ostinato.
I think it all had a vibe of space.
④YUGEN (Gidon Nunes Vaz) 7:18
Is the Japanese word for mysterious profundity.
A subtle, and profound beauty that is felt more than seen.
The many rthythmic layers over the 3/4 waltz together with the harmonic movement gives a kind of floating sensation.
⑤BLUES FOR MARA (Gidon Nunes Vaz) 6:42
Is a blues in two key signatures at the same time during the melody.
In the solo it moves from one key to the next and back, like a dance, in which the key of A represents my beloved fiance Mara and the key of B♭represents myself.
The friction between the tenor and trumpet during the drum solo reveals the many aspects of a loving relationship, dissolving into the last theme.
⑥STILTJE (Karl-Martin Almqvist) 06:26
I wanted to write something that symbolizes the wonderfully calm and relaxing feeling of an ocean or a large lake when it is completely still, no wind.
The mirror-like surface, not a ripple.
⑦WE ALL KNOW (Karl-Martin Almqvist) 06:51
I have always loved playing the beautiful ballad You Don’t Know What Love is.
I wrote a new melody, a so-called paraphrase.
Some reharmonization gave it a different vibe and feel.
⑧CPH (Gidon Nunes Vaz) 7:01
Reflects a new part of my life, playing music and being on the move in and around Copenhagen.
It represents the vibrant energy of the city and the love for jazz, propagated by its scene.
The song is a fuse of modernity and tradition, using more modern cluster chords in first theme and in the bridge Coltrane’s Countdown cycle, changing the regular chords into minor seven, suspended dominant chords and having the trumpet and tenor play in counterpoint.
ベテラン・アーチストである、Almqvist(1968年11月24日生まれ)との双頭クインテット結成や、すべてオリジナル曲で制作した狙いや経緯などをNunes Vazが教えてくれた。
「デンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)のオーディションのためにラジオ局の建物の廊下に入ったとき、最初に会ったのがカール=マーティンですぐに友人になりました。彼は最初からとても親切で温かく接してくれました。
DRBBでの彼のソロ演奏では、心からの情熱と創造的なリスクを冒してプレイしているのが分かり、毎回刺激を受けています。ミュージシャンとして、そして人として本当に尊敬しています。
DRBBのバンドツアーで何時間も一緒に過ごすうちに、私たちは新しい曲を小編成であるクインテットで演奏するというアイデアが浮かびました。
ビッグバンドでは個人の自由が制限されるため、私たちはこのアイデアを喜んで受け入れました。ビッグバンド以外にクリエイティブな決定と、成長できるプロジェクトが欲しかったのです。
2025年の夏に全曲作曲しました。作曲にあたっては互いにとても自然に補完し合っていると思います。
音楽的な決断をする際、カール=マーティンとはほとんどの場合、方向性が同じなのです。私にとって本当に特別なプロジェクトでした。4曲はファースト・テイクで、アルバム1枚分をわずか3時間半で録音できたからです。
スタジオではヘッドホンも使わず、録音ブースも分けずに1つの部屋でレコーディングしました。
録音の2日前に一度だけリハーサルを行い、録音スタジオでは、常に自発的、直感的な感覚がありました。
これは、オランダのジャズシーンで活躍する、非常に優秀で才能豊かなリズムセクションのおかげでもあります。
これまで演奏してきたスタンダード曲やあまり知られていない名曲(2018年のアルバム、『There’s No End』で取り上げた〈No End〉のこと)に対する想いや愛情は、以前と変わりません。
個人的には、ビッグバンドで演奏することが多いので、何か新しいものを作りたいという衝動に駆られました。
より創造的な自由を求めたわけです。
新しく作曲することは、ミュージシャンとして成長し続ける上でとても重要です。
ただ、オリジナル曲をプレイするのは難しいと感じることもあり、他の作曲家の曲を好んで演奏することが多いけれど、今回の挑戦は私にとってとてもよかった。学び、成長できた、と思う。曲はカール=マーティンと私が半分ずつ、各4曲を作曲することにしました。
作曲するにあたり、他の作品からアイデアを持ち込むことはせず、私たちは直感的なアプローチを大切にしたかった。
ピアノの前に座って曲を書くことで、自然にどんなものが生まれるかを見てみたかったのです。
〈SHORTER’S BRUSH〉で使いたい音(Fender Rhodes)は頭の中にありました。Miles Davisのアルバム『In A Silent Way』は私のお気に入りのアルバムの一つで、こうした様々な音色を使ったのも、すべて直感的に出てきたものです」
来年(2027年)4月にはこのクインテットでオランダでコンサートツアーを予定している。
また、アルムクヴィストとのクインテットでのアルバムは将来的にも制作していきたい、と語ってくれた。
