#1442『Todd Neufeld / Mu’U』

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今月の Cross Review #2『Todd Neufeld / Mu’U』

text by Narushi Hosoda 細田成嗣

Ruweh 005

Todd Neufeld (electric guitar)
Thomas Morgan (acoustic bass)
Tyshawn Sorey (drums, bass trombone : 5 and 7)
Billy Mintz (drums, congas : 2)
Rema Hasumi (voice : 2, 5, 7, 8)

  1. Dynamics
  2. Echo’s Bones
  3. Entrance
  4. C.G.F.
  5. Contraction
  6. Taunti
  7. Novo Voce
  8. Kira
  9. Nor

Recorded October 2016 at Sear Sound
Engineered by Aya Merrill
Mixed by Owen Mulholland
Mastered by Luis Bacque
Album artwork from Swindon Viewpoint
Design by Karol Stolarek


2009年にリリースされたタイショーン・ソーリーの名盤『公案』(482 Music)。静謐な空間から立ち上がるミニマルなサウンド、その音色の大部分を担っているギターの響き。ビル・フリゼールのような揺らめきがありながらも、よく聴けば全く個性の異なる郷愁を誘うリリシズムを湛えていて、芯の太い温かみのある響きだ。その7年後にリリースされたラファエル・マルフリートの傑作『ヌーメノン』(Ruweh Records) を聴いた時、どこかで聞き覚えのあるギターの音色だと思った。ギター・トリオという同じ編成。急いでクレジットを確認してみると、案の定同じアーティストの名前が記されている。トッド・ニューフェルド。彼とこのようにして出会ったリスナーは意外と多いのかもしれない。

トッド・ニューフェルドは1981年生まれ、ニューヨークで活躍するギタリスト兼コンポーザーだ。これまでサイドマンとしていくつかのアルバムに参加してきたものの、リーダー作としてはこの『Mu’U』が初めてになる。リリース元はRuweh Records。メンバーは他にベースのトーマス・モーガンとドラムスのタイショーン・ソーリー。いくつかのトラックでは蓮見令麻がヴォイスで、ビリー・ミンツがドラムスとパーカッションで参加しているものの、上記のギター・トリオの編成はあの『公案』と全く同じメンバーである。

比較してみるとわかるように、『公案』に色濃く出ていたタイショーン・ソーリーのコンセプチュアルな作曲の側面がなく、『Mu’U』ではより演奏家としてのトッド・ニューフェルドの力量にフォーカスが当てられた作品になっている。ところどころモタつく独特のリズム感覚、柔らかなくぐもったギターの響き、ヴォイスとユニゾンで追いかける個性的なテーマ・メロディ。ウェルメイドな楽曲を手がけるギタリストが数多くいる現代のジャズ・シーンのなかで、演奏家としてオリジナルな響きを生み出すことのできるミュージシャンはほとんどいないように思う。一聴してわかるサウンドという点でニューフェルドはとても貴重であり、そうした彼の音楽と他のミュージシャンがどのようにコラボレートしていくのか、これからの未来にも期待を抱かせる作品だ。

 

細田成嗣

細田成嗣 Narushi Hosoda 1989年生まれ。ライター/音楽批評。2013年より執筆活動を開始。編著に『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社、2021年)、主な論考に「即興音楽の新しい波──触れてみるための、あるいは考えはじめるためのディスク・ガイド」、「来たるべき「非在の音」に向けて──特殊音楽考、アジアン・ミーティング・フェスティバルでの体験から」など。2018年より「ポスト・インプロヴィゼーションの地平を探る」と題したイベント・シリーズを企画/開催。

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