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CD/DVD DisksNo. 235

#1455『David Virelles / Gnosis』

text by Masanori Tada 多田雅範

ECMレーベルの新作を聴くシリーズ 2017秋 #6

ECM 2526

David Virelles: piano, marimbula,voice
Román Díaz: lead vocals, percussions
Allison Loggins-Hull: flute, piccolo
Rane Moore: clarinets
Adam Cruz: steel pan, claves
Alex Lipowksi: percussions
Matthew Gold: marimba, xilophone
Mauricio Herrera: ekón, nkonos, erikundi, claves
Thomas Morgan: bass
Yunior Lopez: viola
Christine Chen, Samuel DeCaprio: cello
Melvis Santa, Mauricio Herrera: voice.

1 Del tabaco y el Azúcar
2 Fitití Nongo
3 Lengua I
4 Erume Kondó
5 Benkomo
6 Tierra
7 De Ida y Vuelta I
8 Lengua II
9 De Ida y Vuelta II
10 Nuná
11 Epílogo
12 Dos
13 Caracola
14 Visiones Sonoras
15 De Portal
16 De Tres
17 De Cuando Era Chiquita
18 De Coral.

Recorded May 2106 Avatar Studios, New York
Engineer: Kames A Farber
Mixed December 2016 vy Farber, Eicher and Virelles
Produced by Manfred Eicher

 

「現代ジャズ界の超新星ダヴィ・ヴィレージェス、貫禄のECM的カレードスコープ化を呈示せり」

 

ECMレーベルの新作を聴くシリーズ2017秋、第六打席、この音源を入手して冒頭数分の鳴らし合い、ピアノ、木製の打音、ヴィブラフォン、ボンゴ、ベースの爪弾き、を、耳にしただけで、陶酔の魔法から逃れられなくなる、やはり底知れないぜ、超新星ダヴィ・ヴィレージェス、

昨年の益子多田四谷音盤茶会を通じて発表した現代ジャズ年間ベストで、タイション、トッド、フリン、ラファエルらと並んで4位にランクインした異色アナログ『アンテナ』の衝撃(これがECMからのリリースというのにも驚いた)、に、続く本作、

源泉は、2014年の『Mbókò – Sacred Music for Piano, Two Basses, Drum Set and Biankoméko Abakuá』、『エムボコ』、だ、

『アンテナ』も本作『グノーシス』も、源泉『エムボコ』のヴァリエーションだと思う、この驚くべき、大河の奔流を思わせる創造の豊かさよ、トーマス・モーガンが弾き、ヘンリー・スレッギルまでが投入される、決して「アフロ・キューバン・アンサンブルとのコラボレーションを新機軸とした音楽」と平たく総括できるようなものではないと思うのだ

優れた演奏家には、技術や楽理や分析に還元できないような、その場に居合わせた共演者を変容させてしまうような、企図を超えてしまう生成をもたらすような、つまり、謎、とか、魔法としか言いようのない、

本作『グノーシス』は源泉『エムボコ』をECM的カレードスコープ化した作品に思える、クラシックのマーケットに並べられてもいいような構成感覚もある、ピアノ・ソロのトラック、ヴォイス入りのトラックの落ち着いた挿入のありようにおいて、

ECMレーベルはここ10年に、クレイグ・テイボーン、アーロン・パークス、ヴィジェイ・アイヤー、菊地雅章、ダヴィ・ヴィレージェスと、ダウンタンシーンからピアニストたちを世界にピックアップしてみせたが、それはそのままトップ5であり、ヴィレージェスは決定的に一歩リードしているようだ、

多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

#1455『David Virelles / Gnosis』」への1件のフィードバック

  • カタロニア人でもなければアルゼンチン人でもないVirellesのカナ表記を「ヴィレージェス」と表記するのは如何なもんでしょうか?キューバでは(そしてスペイン語圏ほぼ全体において)”v”は”b”と同様に発音され、”ll”は”y”とほぼ同じ発音になります。つまり正しくは「ビレーイェス」もしくは「ビレイエス」です。また、”David”の終わりの”d”は英語と比べるとソフトなイントネーションですが、決して無音ではないので、「ダヴィッド」という表記も間違いではありません(ちなみにスペインでは終わりの”d”が”th”に近い音になります)。

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