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CD/DVD DisksNo. 238

#1482 『The Noise Eating Monsters / The Noise Eating Monsters』

text by 定淳志 Atsushi Joe

 

MuteAnt Sounds (net label)

The Noise Eating Monsters
Alex Ward – guitar
Alex Thomas – drums
Tim Hill – baritone sax

  1. Crunch Space
  2. Rumble
  3. Aether
  4. Djin Din
  5. Monster Munch

recorded Feb. 2017

https://muteantsoundsnetlabel.bandcamp.com/album/noise-eating-monsters

 

米国のネットレーベル MuteAnt Sounds からのデジタルアルバム作品。

「ノイズを食う怪物たち」と称するバンドのメンバーは、いずれも英国を拠点に活動する3人。ギターのアレックス・ワードはクラリネット奏者としても知られる即興音楽家、作曲家。元々はクラリネット(とアルトサックス)を主奏楽器としていたが、英国の巨匠デレク・ベイリーとの出会いをきっかけに、ギタリストとしても活躍するようになった(が、ノンイディオムインプロヴィゼーションには向かわず、ロックを基調としたスタイルになったのは面白い)。スティーヴ・ノーブル、サイモン・H・フェルなど英国勢のほか、米国の剛腕ウィーゼル・ウォルターとも共演し、参加作も数多い。アレックス・トーマスは、英国のスラッシュメタルバンドなどに参加するロックドラマーで、スクエアプッシャーのツアーメンバーとしても活動している。

バリトンサックスのティム・ヒルは、サマセットを拠点に、即興音楽のほか、ストリートバンド、エレクトロニカ、伝統音楽、パフォーマンス、サウンドインスタレーション、演劇や映画の作曲など、幅広い音楽制作を手がけるキャリア30年以上のベテラン。多士済々のブリティッシュフリージャズシーンでは、即興音楽家としてはアレックス・ワードとのコラボレーション以外に、ほとんど名前を目にする機会がないものの、多様な音楽に対応するサックステクニックは高い。筆者が彼を初めて知ったのも、アレックス・ワードのグループ「Predicate」(Alex Ward, Timm Hill, Dominic Lash, Mark Sanders)におけるプレイで、こちらはアルトサックスが中心だったが、その非常にクリアで良い音とバランス感覚に優れたプレイに惹きつけられた。

そんな3人による演奏は、エクスペリメンタルロックやらフリージャズやらファンク的要素やらを取り込んだ雑食性即興。アレックス・トーマスの叩き出すロックリズムに乗って、フレックス・ワードのファズギターが駆け回り、ティム・ヒルは低音域を中心に力強いリフを吹き倒す。ジャケットからも感じられる通り、ポップでもあり、とても楽しい音楽だ。

 

定淳志

定 淳志 Atsushi Joe 1973年生。北海道在住。執筆協力に「聴いたら危険!ジャズ入門/田中啓文」(アスキー新書、2012年)。普段はすこぶるどうでもいい会社員。なお苗字は本来訓読みだが、ジャズ界隈では「音読み」になる。ブログ http://outwardbound. hatenablog.com/

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