#1493 『Kit Downes / Obsidian』
text by Masanori Tada 多田雅範
ECM2559
Kit Downes (pipe organs)
Tom Challenger (tenor-sax on Modern Gods)
This album is dedicated to John Taylor.
1. Kings
2. Black Is The Colour
3. Rings Of Saturn
4. Seeing Things
5. Modern Gods
6. The Bone Gambler,
7. Flying Foxes
8. Ruth’s Song For The Sea
9. Last Leviatha
10. The Gift
Recorded November 2016
St,John, Snape, Suffolk
St.Edmond, Bromswell, Suffolk
Union Chapel, London
Engineer:Alex Bonney
Produced by Sun Chung
湧き上がるくぐもったパイプオルガンの祈るような深淵なる響き、ジャケのイメージも鮮烈だ、この音楽には何かがある、そういう確信を維持し続けるサウンドのちからがある、
トーマス・ストローネンのユニット”Time Is A Blind Guide”、15年にECMで第1作が制作されている、プロデューサーはストローネンとECM第二のプロデューサーであるサン・チョン、そこでピアノを担っていたのがこのキッド・ダウンズ(1986-)、
ダウンズの最初の音楽体験が教会のオルガン奏者だったという、
これで謎解きになっただろうか、ジャズピアニストがその演奏身体でパイプオルガンを奏でてみせたというレシピ、プロダクションがなければ実現しないサウンド、
ECM第二のプロデューサーであるサン・チョンは、そしてピアニストのキッド・ダウンズもまた、キース・ジャレットとアイヒャーが歩んだ『インヴォケーションズ』(ECM1201/02)を視ていると思う、ほとんど評価されてこなかった遺産を継承する、
Obsidian 、黒曜石、占いやパワーストーンの意味をググってみたりする、ほんとうに?、
教会オルガンの音色が必然的に持ってしまう文化的な文脈、その抑圧といったちからとの相克、サン・チョンとダウンズが創ったこのサウンドを聴くわたしたちリスナーは試されているようだ、おそらくその力学の中にこの作品の価値は潜んでいる、