#1529 『林正樹、鈴木広志、相川瞳/オーランドー』
Masaki Hayashi, Hiroshi Suzuki & Hitomi Aikawa / Orlando
Text by Hideo Kanno 神野 秀雄
SOUND INN LABEL SI-17008 ¥2700(税込)
林 正樹 (p, recorder、clap他)
鈴木広志 (ss, ts, bs, cl, bcl, recorder 他)
相川 瞳 (vib, perc, recorder 他)
1. オーランドー
2. エリザベス
3. サーシャ
4. 旅
5. オセロ
6. 氷結
7. 皇女
8. コンスタンチノープル
9. 変貌
10. 悦楽
11. 18世紀
12. 流転
13. リング
14. マーマデューク
15. 婚約
16. 20世紀
17. 鏡
18. 言葉と詩
19. 詩生
All composed by Masaki Hayashi 林 正樹
Recording & Mixing; Suminobu Hamada
Mastering: Yoshihiko Ando
Label Manager: Suminobu Hamada, Koichi Kono, Hinako Yamada
Courtesy of KAAT KANAGAWA ART THEATER / PARCO
Cover Art: Chisato Tanaka
Art Producer: Kazuki Saito (Sponge)
Design: Tadashi Kitagawa (Kitagawa Design Office)
2017年の特筆すべきパフォーマンスとして、KAAT(神奈川芸術劇場)を含む4劇場で上演された、ヴァージニア・ウルフ原作、白井晃演出『オーランドー』を(挾間美帆 m_unitとともに)選ばせていただいた。サラ・ルールの翻案・脚本に従い、林正樹が音楽を書き下ろし、林正樹、鈴木広志、相川瞳が全公演の舞台上で演奏した。
林正樹は、ソロ、「間を奏でる」、「のぶまさき」、「ダブルトーラス」など自身のさまざまなプロジェクトで文字通りオリジナルの音楽を創る一方、渡辺貞夫、小野リサ、菊地成孔、椎名林檎、エリック・ミヤシロらに重用され、今、日本で最も注目すべきピアニスト・作編曲家だ。鈴木広志と相川瞳はともに東京藝術大学器楽科の出身で、『あまちゃん』の劇伴をきっかけに結成された「大友良英スペシャルビッグバンド」、中島さち子とのTrio Mathemata (オーランドーからピアノが入れ替わる)などの参加が目を引く。鈴木は、「清水靖晃&サキソフォネッツ」、「東京中低域」をはじめさまざまなプロジェクトで中心的役割を担い、狩野永徳作の国宝「上杉本洛中洛外図屏風」とのコラボレーションまで、独自の活動の場を拡げている。相川は、2007年、ブルガリアで開催されたプロヴディフ国際打楽器コンクールDUO部門にて2位入賞(1位なし)、クラシック、現代音楽、J−Pops、演劇、そのレコーディングにライブに幅広く活躍する。
16世紀のイングランドに生まれた青年貴族オーランドーは、あらゆる女性を虜にする美貌を持ち、エリザベス1世の寵愛を受けたことに始まり、国を超え、時代を超え、性をも超えながら真実の愛を求めて400年の時を生きる。このストーリーはトランスジェンダーの研究対象ともなっている。その目まぐるしく移り変わる舞台に美しいテクスチャーと空間を創り、ストーリーに連続性を感じさせながら、優しく導いて行く特別な音楽を提供して、多部未華子、小日向文世らの好演とともに素晴らしい舞台を創り上げた。
公演を終えた3人があらためて録音し再構成したのが本アルバムで、芝居と台詞から離れ、または舞台を思い出しながら、オーランドーの旅をアンビエントなサウンドの中で自分が主人公であるかのように辿ることができる。一貫して清らかなサウンドに心を洗われるようでもあり、穏やかに気分が昂揚するような心地よい気分にさせてくれる。
なお、ラ・フォル・ジュルネ 2016 la natureで、ヴィヴァルディ「四季」のリコンポーズ版を庄司紗矢香が演奏していたが、そのリコンポーズしたマックス・リヒターも『オーランドー』に取り組んでいたことも興味深い。林もさまざまな既存の音楽を脳内分解して自分のオリジナルとして再構築する天才であり通じるところだ。KAAT『オーランドー』のプレイベントとして白井晃×林正樹のトークライブがあり、白井晃の求めに応じてその場で演奏したジャズ・スタンダードの数々は、林正樹ならではの演奏ではなく、まさにリコンポーズされた新しい音楽になっていたことに驚かされ、それがまさに白井が、小日向文世を起用して「オーランドー」を構想するにあたり、林の起用に思い至った理由だとわかる。林が創るのは劇伴ではなく、世界観そのものであり、これから創り出す新しい世界の数々を共に旅するのが楽しみだ。
<公演概要>
神奈川芸術劇場(KAAT) 9月23日〜10月9日、
東京国立劇場 中劇場 10 月26日〜29日
まつもと市民芸術館10月18日
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 10月21日〜22日
演出:白井晃
原作:ヴァージニア・ウルフ、翻案・脚本:サラ・ルール、翻訳:小田島恒志 小田島則子
出演:多部未華子、小芝風花、戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹、小日向文世
音響:佐藤日出夫 、美術:松井るみ、照明:高見和義、衣裳:伊藤佐智子、ヘアメイク:川端富生
振付:スズキ拓朗、映像:宮永亮、栗山聡之、歌唱指導:満田恵子、 舞台監督:福澤諭志、演出助手 : 河合範子
プロダクション・マネージャー:安田武司(KAAT)、宣伝:る ひまわり 、制作:三宅 彰(PARCO)
プロデューサー:田中希世子(PARCO)/石井宏美(KAAT) 、企画製作:KAAT神奈川芸術劇場/株式会社パルコ
L+R: 「オーランドー」発売記念コンサート 2018年5月16日 永福町ソノリウム ©星野泰晴
【関連リンク】
KAAT×PARCOプロデュース「オーランドー」(音楽:林正樹)
http://www.parco-play.com/web/play/orlando/
http://www.kaat.jp/d/orlando_kaat
林正樹 公式ウェブサイト
http://www.c-a-s-net.co.jp/masaki/
鈴木広志 公式ウェブサイト
http://suzuki-hiroshi.com/
相川瞳 公式ブログ
https://ameblo.jp/do-rry/
【JT関連リンク】
このコンサート2017(国内編)
林 正樹、鈴木広志、相川 瞳 『オーランドー』 /挾間美帆 Miho Hazama m_unit ブルーノート東京
https://jazztokyo.org/features/my-pick/my-pick-2017/performance-2017-local/post-23690/
La Folle Journée de Nantes 2016 “la nature”
ラ・フォル・ジュルネ2016「la nature」〜ナントのレポートと東京のみどころ
https://jazztokyo.org/reviews/live-report/
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2016 – la nature
https://jazztokyo.org/reviews/live-report/post-5904/
林正樹Pendulum
http://www.archive.jazztokyo.org/best_cd_2015a/best_cd_2015_local_05.html
Montreux Jazz Festival 2014 Japan Day
Blue Note Tokyo All Star Jazz Orchestra directed by Eric Miyashiro with special guest, Lisa Ono
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report728.html
Jakarta International Java Jazz Festival 2015
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report809.html
Blue Note JAZZ FESTIVAL in Japan 2015
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report851.html
大友良英 with あまちゃんスペシャルビッグバンド~アンサンブルズ・パレード・プレ・コンサート
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report542.html