#1552 『Jessica Ackerley Trio / Coalesce』
text by 定淳志 Atsushi Joe
Jessica Ackerley Trio / Coalesce
(self-released)
Jessica Ackerley – guitar and compositions
Mat Muntz – bass
Nick Fraser – drums
- Clockwork 06:43
- Discoid 06:53
- Solo Guitar 03:07
- Minneola 05:55
- Day 2 06:10
- Snakes in the Grass 08:48
- ‘merica 09:41
Recorded February 2016 in Toronto
メアリー・ハルヴァーソンがジャズギターに革新をもたらしてから、はや10年以上が過ぎた。当然、彼女に影響を受けたギタリストたちが続々現れてくるだろう、と思いきや、個性こそ第一義とする音楽がジャズであるから、一聴してそれと分かる個性的サウンドを取り込みながら自身の表現を確立させるのは容易でないとみえる。しかし、ゆっくりながら確実に次世代は登場している。それを証明するのが昨年初頭にリリースされた本アルバムのリーダー、ジェシカ・アッカリーである。
彼女のプロフィールとアルバム制作の経緯については、本誌インタビューを参照してほしい(→リンク)。インタビューでも触れられているように、アッカリーはハルヴァーソンの『Dragon’s Head』に限りない愛着を表明し、ハルヴァーソンのレッスンを受けたことを奇貨としている。事実、つんのめるようなメロディーやフレージング、ハーモニーなど、アルバムの其処彼処にハルヴァーソンからの影響を感じ取ることは可能だ。しかしたとえば、3曲目に配されたソロギターにおけるディレイの扱い方には全く異なる個性を感じるし、後半の〈Snakes in the Grass〉では振り切ったようなフリージャズを聴かせ、最終曲ではひとつの音をひたすら変化させながら静の世界から激しいクライマックスへと昇り詰めてみせる。
彼女がこの本格デビュー作で示したいくつかの方法論を、どのように発展させていくつもりなのかは分からない。だが、今後もさまざまな音楽的経験(数多くのロックバンドに参加し、ジャズや即興の外の世界にも貪欲に関わっている)を本作タイトルが示すように「合体」させながら、個性的で新たな響きの探求を続けていくだろう。ソロギターや、サラ・マニングらとのカルテットのアルバムも企画されているようであり、楽しみは尽きない。
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