#1561『Cataclysmic Commentary / Audience Participation』
text by 定淳志 Atsushi Joe
Cataclysmic Commentary / Audience Participation
(Eschatology Records)
- Surprise Kitten Explosion 5000
- Nun Oil
- Mean Knees
- Crowded In Solitude
- Ode To Ella
- Texas Chainsaw Focus Group
- The Last Time You Used a Real Map
- Why Am I Not a Painter
- There’s Junk Mail & Terrorism
Ben Cohen, tenor saxophone
Eli Wallace, acoustic piano
Dave Miller, drums and cymbals
ブルックリンを拠点に活動するトリオ「Cataclysmic Commentary」のデビュー作。メンバーの Ben Cohen はテネシー州出身、地元大学を卒業後、NYに出て Ellery Eskelin に師事したテナー・サックス奏者。Eli Wallace はカリフォルニア州オークランド出身で、Rent Romus との『The Expedition』(本誌238号 #1486参照)など数多くの参加作品があるピアニスト。Dave Miller はアイオワ州グリンネル出身、Pet Bottle Ningen のドラマーと言えば最も通りがよいだろうか。
1曲目冒頭からのCohen のブロウにまず心をつかまれるが、そのままひたすら吹きまくることにはならない。全体を通じてみれば、爽快感や流麗さからはなるべく距離を置きつつ、どこかフランク・ロウを思い出させるぬらぬらした粘っこさで音楽を紡いでいく。対する Wallace のピアノは華麗に、クラシックや現代音楽にも精通するという多彩な技術で、サウンドを煌びやかに彩る。Miller のドラムはそうした対照的な2人をしなやかに受け止め、止揚するかのようだ。
2年間リハーサルとギグを繰り返しサウンドを練ってきたというだけあって、全曲5分未満の小品集ながらも、どの演奏も個性的かつ印象的で、アグレッシヴに攻め立てたかと思えば、時にユーモアや情緒的ムードも感じられる。サックス・ピアノ・ドラムスのトリオといえば、Cecil Taylor 以来伝統の編成であって、Cohen のテナーサックスには「昔ながらの」と形容したくなるところはあるが、Wallace や Miller の存在感もあって、伝統と現代的感覚のバランスが絶妙なフリージャズだ。
free jazz、jazz right now、Ben Cohen、Eli Wallace、Dave Miller