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CD/DVD DisksNo. 250

#1588 『峰厚介/バンブー・グローヴ』

text byYumi Mochizuki 望月由美

Tower Records/Day’s of Delight  DOD-02  2500円+税

峰厚介( ts, ss)
清水絵理子(p)
須川崇志(b)
竹村一哲(ds)

1.Bamboo Grove (峰厚介)
2.凍星 (Iteboshi) (峰厚介)
3.Rias Coast (峰厚介)
4.21 (峰厚介)
5.Late Late Show (峰厚介)
6.水蒸気(Suijouki)〜Short Fuse (峰厚介)
7.Head Water(峰厚介)

Recorded at Studio Greenbird on 20,21 August 2018
Recorded&Mixed by 塩田哲嗣
Mastered by Gene Paul @G&J Audio
Produced&Compiled by 平野暁臣


峰厚介(ts)の音色は美しく艶っぽい、そしてそのインプロヴィゼイションには深みがある。
ゲッツが<ソウル・アイズ>をふっと吹いたとき、コルトレーンが<ワイズ・ワン>を語りかけたときと同じ天上の美が峰の楽器からは広がる。

前作『With your soul』(MINE-G, 2011)は東日本大震災から3か月後のレコーディングで、震災直後の重苦しさを吹き飛ばすカルテットの推進力は心の救いであったが今回はさらにそれに加えて情感の重みが増していて峰の意欲がその一音一音から伝わってくる。
全曲峰のオリジナルで、前作ではテナー一本で通した峰が今回はテナーとソプラノを使い分けテナーの重厚さとソプラノの軽快さとでよりカラフルな音楽になっている。
峰は(2)<凍星 (Iteboshi)>と(4)<21>でソプラノを吹いているが(2)など曲名から類推するわけではないが澄み切ったストレートなソプラノはオレゴンのポール・マッキャンドレスを思い起こすメルヘンティックな味わいがあり、美しい。
かと思うと(3)<Rias Coast>はまるでボビー・ティモンズ(p、1935~1974、38歳没)の曲のようにファンキーな味わいのある曲で見事な場面転換、峰の懐の深さが作曲面でもうかがえる。
峰が先頭を切ってグルーヴィーに飛ばしたあと、須川崇志(b)にソロを引き継ぐ。
須川はピチカートで重心の低いしっかりとした音を一音一音紡いでゆく。
辛島文雄(p, 1948~2017, 68歳没)や日野照正(tp)というビッグのもとを経て現在、本田珠也(ds)、石井彰(p)、竹内直(reeds)等で鮮烈なリズムを創造しているが、この峰カルテットにおいても的確なビートでグループに刺激を与えグループを活性化している。

また、黄金のカルテットと讃えられたコルトレーン・カルテットにおいてもコルトレーンとマッコイ・タイナー(p)は僅か5年でそれぞれ別の道を歩んでいるが峰と清水絵里子とは既に10年以上にわたってコンビを続けている。
勿論、音楽的な疎通がとれていることが前提であるが、峰の温かい人柄、オープン・マインドな心の広さと清水絵里子の温和で物おじしない、また自らの方向性を変えないで溌剌と演奏する態度が10年という時間をかけて二人のコンビネーションを築き上げたものと思われる。
いわゆる手くせなどのない流麗で端正な清水絵里子のピアノはウオームな峰のサウンドと良いコントラストを保ち、お互いに音楽的な刺激としているようである。
(5)<Late Late Show>での清水絵里子のソロのバックにつける峰のオブリガードが粋だ。

村上寛(ds)や本田珠也(ds)といった歴代のヘヴィー・サウンズの後を継いで加入した竹村一哲(ds)も板橋文夫FIT!で培ってきたパワーを峰カルテットに注入し新風を送り込んでいる。

Courtesy of Days of Delight

『峰厚介/バンブー・グローヴ』(Day’s of Delight, 2019)は昨2018年10月にTOWER RECORDSが新たに創設したレーベルDay’s of Delightの第2弾として発表されたものである。
Day’s of Delightの第2弾では本田竹曠(P)、峰厚介(sax)、菊地雅章(p)、渡辺貞夫(sax)、日野皓正(tp)が「East Wind」や「Three Blind Mice」等に残した名演をコンピレーションした『VA/Days of Delight-躍動』を同時発表している。

レーベルDay’s of Delightは岡本太郎記念館の館長、平野暁臣さんをプロデユーサーに迎え1970年代のジャズのスピリットを継承し、当時のEast Wind やTBMなどの貴重な音源をコンピレーション化してリリースする。その一方で現在のジャズ・シーンで活躍しているアーティストの新作も並行して制作リリースしてゆくという。
また、活動の一環として東京青山・岡本太郎記念館にて「瞬間瞬間に生きる‐岡本太郎とジャズ」企画展やスペシャル・ライヴ、イベント等を実施している。
https://daysofdelight-music.amebaownd.com/
今後の活動に期待したい。

望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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