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CD/DVD DisksNo. 251

#1598 『板垣光弘トリオ+米田裕也/Love is Blue』

text by Yumi Mochizuki 望月由美

 

Board Wall Records  BWJC4004  2,500円+税

板垣光弘 (p)
吉木 稔 (b)
三科律子 (ds)

ゲスト;
米田裕也(as,ss、fl : 5,6,8)

1.SORA~空(板垣光弘)
2.Cherokee(Ray Noble)
3.Love is Blue~恋は水色(Andre Popp)
4.きよら(板垣光弘)
5.Funky Vision(板垣光弘)
6.風神・雷神(板垣光弘)
7.Horizon(板垣光弘)
8.Snow Land(板垣光弘)
9.Green Green Green(板垣光弘)
10.星に願いを(Leigh Harline )

プロデューサー:板垣光弘
録音・ミックス・マスタリング:富 正和
録音:2018年8月16,17日 at Volta Studio
写真:品川之朗(ピットインミュージック)


このトリオ、本アルバムで初めて聴かせていただいた。
ということでリーダー板垣光弘(p)のバイオグラフィーを見させていただくと既に20年のプロ活動をしているヴェテランである。
東京中野の出身で4歳からピアノを始め大学時代に辛島文雄(p,1948~2017 68歳没)に指導を受ける。
既に2000年には本田珠也(ds)のグループに参加、宮崎勝央(as)、金井英人(b)等のグループを経て自己のトリオJUNCTIONを結成、現在は自己のトリオのほか鈴木勲(b)のOMA SOUND、宮本信子(vo)のSpecial Jazz Live など多角的な活動をしている。

ブルースを弾いてとリクエストされたら直ちにブルースを、スイングしてと云われたら平然とスイングするよい意味でのプロフェッショナルであり、明快で快調に飛ばす楽しいピアノ・トリオである。

アルバムのタイトル曲(3)<Love is Blue~恋は水色>にこのトリオの色合いがよく発揮されている。
いわゆる黒っぽさとか何々流といった誰かに媚びることもなくユーモアをもったトリオである。
この曲は板垣光弘(p, 1971~)が生まれる前の1968年にポール・モーリア(1925~2006 81歳没)オーケストラの演奏が日本でも大ヒットした曲で板垣にとっては新鮮なスタンダードと映ったのかもしれず、原曲に引きずられることなくアンドレ・プレヴィン(p, 1927~)が『マイ・フェア・レデイ』(1956, Contemporary)を調理したようにスインギーに仕立てている。

また(2)<チェロキー>といえばジャズ・ファンであれば真っ先にローチ、ブラウンの『スタディ・イン・ブラウン』(1955, Emarcy)が頭に浮かぶ演奏の一つだと思うが板垣光弘(p)と三科律子(ds)がリッチー・パウエル(p, 1931~1956 24歳没)とマックス・ローチ(ds, 1924~2007 83歳没)にならって丁々発止と掛け合いを演ずるあたりはなかなか茶目っ気もある。

こうした古い名曲をちりばめているが実際はこれらのスタンダードと並んで板垣の曲が大半を占めており、気が付くと板垣のオリジナルであったと気づくほど起伏に富んだメロディアスな曲調であり曲作りでもアピール。

さらにゲスト参加の米田裕也(as, ss, fl)がアルバムを面白く色づけしている。
山下洋輔ニュー・カルテットでの演奏で知られているが、リズムが変わってもフリー・ブローイングは健在で(5)(6)(8)の3曲で板垣に強い刺激を与えている。

板垣は学生時代に辛島文雄に指導を受けたことがあるということで本アルバムも辛島文雄に捧ぐ、と明記されていて、今年の2月24日、新宿ピットインで催される辛島文雄TRIBUTE SPECIAL NIGHTにも参加予定である。

アルバム『Love is Blue/板垣光弘トリオ+米田裕也』(Board Wall Records)はライナーノーツを本田珠也(ds)、ジャケット写真をピットインの品川之朗さん、曲解説は板垣自身が受けもつという、いわば地域密着型の作品で、ピットインをはじめ都内のライヴ・ハウスを中心に板垣光弘トリオのコンセプトを発信中である。

望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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