#1597 『Gidon Nunes Vaz / There’s No End』
『ギドン・ヌネス・ファズ/ノ-・エンド』

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text by Keiichi Konishi 小西啓一

TRITONE 2018

Gidon Nunes Vaz (tp, flgh)
Timothy Banchet (p)
Thomas Pol (b)
Yoran Vroom (ds)

Special Guest :
Denise Jannah (vo : 2,5,7,9)

1.No End (Kenny Dorham)
2.Yesterday’s Dreams (D.Sebesky/N.Martin/J.Ganni)
3.The End  Of A Love Affair (Edward Redding)
4.Street Of Dreams (V.Young/S.Leiws)
5.On A Misty Night (Tadd Dameron)
6.Lazy Afternoon (J.Latouche/J.Moros)
7.Embraceable You (G.Gershwin/I.Gershwin)
8.Scandia Skies (Kenny Dorham)
9.We’ll Be Together Again (C.Fischer/Fr.Laine)

Produced by Tritone Jazz records (c) 2018
Recorded at the MCO studio, Hilversum, The Netherlands on May 25,2018
Recording, mixing and mastering by Frans de Rond


この3月に単身来日、全国各地のライブ・スポットで日本のミュージシャンなどとライブ共演を行う、オランダの若きハード・バップ侍=ギドン・ヌネス・ファズ、5作目になる最新作である。ハード・バップ期を代表するトランぺッターの一人で、彼が師とも仰ぐケニー・ドーハムに捧げたワン・ホーン・アルバムを15年に発表して以降、ほぼ1年1作のペースで、それも様々なフォーマットによるアルバムを次々に発表、今やヨーロッパのジャズ・シーンを代表する若手として、着実にその地歩を固めている感も強い。良く言われるようにドーハムという人は、“静””動“&”陰””陽“というアンビバレンツな面を、そのアルバムで表出していたが(どちらかというと『静かなるケニー』に代表される”静”の面が愛されていたのかも知れない)、ギドンはその”動”&”陽“の側面を受け継いだ感もある若手だ。そうした彼が今回リズム陣を、オランダの若手代表格の面々に一新して臨んだこの新作、艶やかで朗々と良く鳴り響く”陽者“としての、ネオ・バビッシュな金管技は依然健在だし、欧州ネオ・ハードバップ路線の先導役としての役割は、さらに重要度を増しているとも言えそうだ。

ただ今作『ゼアズ・ノー・エンド』は、これまでの作品とは一寸趣が異なった面も感じられる。心の師とも言えるケニー・ドーハムのオリジナルを2曲取り上げ、彼へのリスペクトを表している点は従来と同様だが、毎回自身で提供していたオリジナルが1曲も無いこと。さらにそれ以上目立つのは、全9曲のうち半分近い4曲でオランダを代表する女性ボーカリスト~南米のスリナム出身のデニス・ジャンナ(アルバムも数多く、3年ほど前に出した女王エラ・フィッツジャラルドを偲んだアルバム『エラ』も好評だった)をフィーチャーしている点で、それだけに元気印ギドンの存在感がいささか薄められてしまった感は否めない。デニスはフランキー・レインの絶唱で知られる<ウィル・ビー・トゥギャザー・アゲイン>等、スタンダード・ナンバーを唄い上げその歌唱の旨さを披歴、なかでもダッド・ダメロンの銘品 <オン・ア・ミスティー・ナイト>での情感表現が印象深いが、ギドンも “彼女のバラード解釈から学ぶところが多かった” と感謝を表し、彼女を盛り立てるプレーにもその成熟振りを窺わせる。

タイトル・チューンになっているケニー・ドーハムのオリジナル<ノー・エンド>は、“ドーハム命”のギドンならでの曰く付きのナンバー。彼はドーハムの業績・足跡を探求する旅を敢行するほどの入れ込み具合だが、その道中で見つけ出した(?)ナンバーのようで、ドーハムの僚友の一人、テナー・サックスの名手、ジミー・ヒースの自宅から発掘したという貴重な1曲。ドーハム(1924年~72年12月)が死ぬ間際に書き上げ、死の2日前にヒースに託したものだというが、ドーハムには<ブルー・ボサ><ロータス・ブロッサム><ブルー・スプリング>等の忘れ難い佳曲も多く、コンポーザーとしても仲々の才の持ち主。この<ノー・エンド>もハード・バビッシュの”陽“要素が勝った好メロディーを擁する印象的ナンバーである。

今作は嬉しいことに彼の資質がより鮮明に表れるワン・ホーン作品だし、その上この発掘ナンバー(もう1曲バラード演奏の<ストリームス・オブ・ドリームス>もグッド)。この2つの要因だけでも充分に推薦に価するものだと思う。

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小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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