#1611 『鈴木良雄 BASS TALK / Beyond the Forest』

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text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌

FRIENDS MUSIC  FMSC-1001  ¥2,700(税込)

鈴木良雄(bass)
野力奏一(piano, keyboards)
井上信平(flute, alto flute, bass flute, piccolo)
岡部洋一(percussion , congas)
*ゲスト:石川滋(bass)

1.ザ・カイトThe Kite  6:59
2.筏衆 Ikadashu  6:41
3.Monet モネ*  4:44
4.Mountain Spirits マウンテン・スピリッツ  2:43
5.Brezza di Cremona ブレッザ・ディ・クレモナ  5:55
6.Autumn Embrace オータム・エンブレース *  4:39
7.Canoe カヌー  5:59
8.Beyond the Forest ビヨンド・ザ・フォレスト  3:38
9.Cheers チアーズ  4:17

All the songs composed by Yoshio “Chin” Suzuki, except “Ikadashu” by Yoshio”Chin”Suzuki & Soichi Noriki.
All the songs arranged & programmed by Soichi Noriki.

プロデューサー:鈴木良雄、伊藤潔
コ・プロデューサー:野力奏一
2018年11月 サウンド・シティ・スタジオ(東京)にて録音
録音:後藤昌司
2018年12月ニューヨークにてミックス
エンジニア:ジェイ・メッシーナ


鈴木良雄が「音楽生活50周年」を迎え記念のアルバムを制作した。結成18年を迎えたレギュラー・グループ「BASS TALK」の新作、グループの4作目だ。メンバーは不動だと思うが、2曲に読売日響のコントラバス奏者石川滋がゲスト参加、テーマにハーモニーに見事なアルコ演奏を聴かせる。鈴木のピッツィカートとの共演が聞きどころのひとつ。楽曲はすべて鈴木のオリジナル(1曲のみ野力奏一との共作)で編曲は全曲野力が担当。鈴木が曲を書き、編曲を野力に任せ、あとは演奏に集中したというところだろう。タイトルの『Beyond the Forest』(森の彼方)が示すようにテーマを自然界に求め、アルバム全体に清新さが漂う。鈴木の楽曲には自然界にテーマを求めたものが多いが、これは彼が木曽檜で知られる木曽福島で生まれ育ったことによるのだろう。彼の木曾に対する思い入れは強く、前作では木曾の太鼓をゲストに迎えていたが、今作では木曾木遣り筏衆に捧げる<筏衆>を演奏している。アルバムを通してフルートの井上信平の活躍が目立つが、鈴木は終曲の<Cheers>で野力のピアノを相手にメロディにソロに思う存分ベースを披露する。ドラムレスだが鈴木の懐の深いベースがバンド全体に安定感をもたらし、ベテラン揃いの演奏にヒューマンな香りさえ漂わせる。これはひとえに鈴木の人間性がバンド全体に浸透しているからこそだろう。長いバンド・キャリアながらいつまでも清新さを失わない貴重な存在である。本作は、日本で録音した演奏データをNYに持ち込み、鈴木がもっとも信頼を寄せるジム・メッシーナの手を借りてミックスするという念の入れ方でこのアルバムにかける鈴木の意気込みは大変なものだ。
50周年ということでChinさん(鈴木のニックネーム)との関わりをひとこと。
最初の出会いは今回も制作を担当したプロデューサーの伊藤潔の紹介で鈴木のNY録音『WINGS』を旧トリオレコードからリリースした1981年。鈴木と早稲田のダンモ研の同期だった同僚・原田和男の縁があったのか知れない。『WINGS』を米メジャーからリリースすべく2人でレーベル巡りをした。それから10年後、堀江謙一のTV番組『太平洋ひとりぼっち』の音楽を制作、『Alone in the Pacific』としてCD化 (King)。この時は作曲からピアノ、エレピ、ベースの演奏まですべてひとりでこなした。数年前、著作執筆にあたってアンケートに答えたが、完成した『人生が変わる55のジャズ名盤入門 (竹書房新書)を読んで驚嘆した。あの温厚なChinさんがキース・ジャレット・トリオのリズムへのダメ出しを始め、著名なアルバムに超辛口の本音でスバズバ切り込んでいるのだ。ミュージシャンとして人間として社交辞令の言えない正直な性格がそのまま反映されていた。嬉しかったのは、マイルス・デイヴィスの菊地雅章のロフトへの立ち寄りが事実だったこと。菊地本人から聞かされてはいたのだが、同席していたChinさんの同書での証言で確認できたのだ。おそらくシャイなPooさんがChinさんの同席を求めたのだろう。
ところで。
鈴木良雄の音楽生活50周年と『BASS TALK/Beyond the Forest』を記念したコンサートが今月予定されているという。アコースティックに定評のある白寿ホールなのでBASS TALKの素晴らしさを満喫できるに違いない。

*関連記事
https://jazztokyo.org/reviews/books/084-『人生が変わる55のジャズ名盤入門』/ ‎


鈴木良雄 音楽生活50周年記念
BASS TALK『Beyond the Forest』リリース記念コンサート
2019.5/26(日)5:00開演 白寿ホール(渋谷区富ヶ谷)

鈴木良雄(bass)
井上信平(flute)
野力奏一(piano)
岡部洋一(percussion)
*ゲスト:石川滋(contrabass *読売日本交響楽団)

問)friendsmusic@nifty.com
https://www.hakujuhall.jp/

稲岡邦彌

稲岡邦彌

稲岡邦弥 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。音楽プロデューサー。著書に『改訂増補版 ECMの真実』編著に『ECM catalog』(以上、河出書房新社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。Jazz Tokyo編集長。 https://www.facebook.com/kenny.inaoka?fref=ts

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