#1139 『佐藤允彦トリオ / 童心戯楽』

閲覧回数 11,940 回

text by 横井一江 Kazue Yokoi

BAJ Records BJSP-0006

佐藤允彦 (p)
加藤真一 (b)
村上寛 (ds)

1. Dog On the 4th Street, The 四番町の犬
2. Snip Nip Snap チョッキンな
3. Spring Peeper 春アマガエル
4. Fledgeling ひなまつり
5. Pop Goes the Weasel ぴょんっとイタチ
6. Born of the Sea 我は海の子
7. Moonlit Desert 月の沙漠
8. Red Dragonfly あきあかね
9. Officer Wan Wan オフィサー・ワンワン
10. Yamadera 山寺
11. Goat the Postman ヤギ・ザ・ポストマン
12. Momiji もみじ
13. On a Balmy Day うらら

Recorded at ONKIO HAUS, Studio 1, December 11 & 12, 2013


ペーソスとユーモアをもって表現された音楽

佐藤允彦の戯楽シリーズの3枚目。最初の『巴翁戯楽』は天上のバッハに苦笑させ、2作目『江戸戯楽』では出囃子をジャズにしてしまった。私はこの戯楽シリーズが大好きで、はてさて3作目はどうなるのかと密やかにずっと楽しみにしていたのだが、待つこと数年…。遂にリリースされた新作は『童心戯楽』。トラック・リストを見れば、原曲が想像つく。<四番町の犬>は<四丁目の犬>、<チョッキンな>は<あわて床屋>、<春アマガエル>は<春よ来い>という具合に。そうなると妙に懐かしい気持ちになる。昭和のニオイ、そうか、子供の頃に聞いた唄か、と。しかし、ジャズアレンジした日本の歌の類は随分聴いてきたので、それでは前2作に比べてヒネリが足りないのでは、いささか平凡なのではという不安が一瞬頭をよぎった。もっとも、そのような邪念はCDをプレイヤーに入れたとたんに氷解。佐藤の編曲だから、いかにもジャズアレンジしましたよという凡庸なものである筈がない。軽快にピアノを弾く佐藤、ベースの加藤真一もドラムの村上寛も手慣れた捌き、淡々と楽しげな演奏。だからこそスゴイのである。よく聴けば聴くほどにそのヒネリ具合に、アレンジの妙にタメイキをつくのみ。元になった曲のイメージがどんどん膨らんで、発展していって、そこにアドリブがあり…ジャズと相成る。加藤も村上もいとも軽々と嬉々として佐藤の編曲を弾いている。難しいこともさりげなく弾きこなし、さらにインプロヴァイズしてしまうスゴさ。まさに「戯れ」「楽しむ」、すなわち「戯楽」である。スタンダード曲のよくある演奏を遙かに超えてジャズのエスプリを表現している。なるほどペーソスとユーモアをもって音楽を表現するとはこういうことなのかと改めて納得。はやくも戯楽シリーズの次作が楽しみになっている。

横井一江

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。The Jazz Journalist Association会員。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。海外レポート、ヨーロッパの重鎮達の多くをはじめ、若手までインタビューを数多く手がける。 フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

↓ ロボットでないかお知らせください。 * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。