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CD/DVD Disks~No. 201

#94 『佐藤允彦/佐藤允彦プレイズ富樫雅彦 #3』

text by 横井一江 Kazue Yokoi

ewe EWSA-0102

佐藤允彦(p, fender-rhodes)
作曲:富樫雅彦

1. Contrast
2. Floating
3. Let’s Hurry
4. Pot of Desire
5. Shower
6. Bridge
7. Haze
8. Variation
9. Today’s Feeling
10. I Miss You

録音:2004年9月17日


Masahiko Plays Masahikoも三作目。前作は、富樫雅彦のメロディー・メーカーとしての側面をクローズ・アップしたものだったが、本作はフリー・インプロヴィゼーションの余白がたっぷりある作品群。作品にあるモチーフを一種のマテリアルとして、さらなる創造的空間を構築する鮮やかな手腕は佐藤ならではのもの。しかし、この空間の捉え方、音色に対する美学は、富樫の世界でもある。自由なインプロヴィゼーションの世界の中でさえ、富樫の音楽観が佐藤のピアノに重なる。長年に渡ってさまざまな場面で富樫と共演してきた佐藤だからこそ描くことのできる世界なのだろう。ピアノ一台でそれを表現する演奏力の裏付けは言うまでもない。また、最後の曲で弾くフェンダー・ローズの独特の味わいをもつ音色が沁みる。ところで、今年(2005年)のメールス・ジャズ祭に佐藤はオーケストラを率いて参加、富樫の作品を演奏するという。『スピリチュアル・ネイチャー』に匹敵するようなコンサートとなるだろうと期待を込めて予測しているのだが、こちらも是非CD化してほしい。

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。ドイツ年協賛企画『伯林大都会-交響楽 都市は漂う~東京-ベルリン2005』、横浜開港150周年企画『横浜発-鏡像』(2009年)、A.v.シュリッペンバッハ・トリオ2018年日本ツアー招聘などにも携わる。フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)、共著に『音と耳から考える』(アルテスパブリッシング)他。メールス ・フェスティヴァル第50回記。本『(Re) Visiting Moers Festival』(Moers Kultur GmbH, 2021)にも寄稿。The Jazz Journalist Association会員。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

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