#1640 『tryphonic / Fiction』
『トライフォニック/フィクション』

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text by Hiroaki Ichinose 市之瀬浩盟

GoodNessPlusRecords  GNPR-1151 ¥3000+税

tryphonic :
山田貴子 (pf)
小美濃悠太 (b)
斉藤良 (ds)

01.Fiction (Yuta Omino)
02.Cala Rossa (Ryo Saito)
03.A Thrown Ball (Yuta Omino)
04.Born Under The Lucky Star (Takako Yamada)
05.Crepuscular Rays (Takako Yamada)
06.Lithographs (Takako Yamada)
07.Samba De Neve (Takako Yamada)
08.While You Stay Here, Everything MustChange (Yuta Omino)
09.Shading Off (Yuta Omino)
10.Now They Leave, Now They Feel (Yuta Omino)

Recorded at Music inn Yamanakako, Japan on 4th & 5th April 2018
Recording engineer: Sousuke Komuro
Mixing engineer: Hiroshi Kasuga
Mastering engineer: Kazuhiro Yamagata
http://www8.plala.or.jp/takakohp/


その出会いは突然やってきた。
高校時代から足繁く通い続ける地元松本の老舗ジャズ喫茶 “エオンタ”。しばらくぶりで行くと「久しぶり〜」などの挨拶もそこそこにマスターからチラシを渡された。「ウチの店45周年でさぁ、今度記念ライヴやるんだよ。」
“Tryphonic” …。欧州中心でなかなか和ジャスにまで手が回らないので初めて目にするお名前…。その日は生憎、店ではかかるタイミングを逸してしまった。ならば買えばよい。買って大正解。縁というものはどこで繋がるかわからないものである。

ぱっと見、インディーズ・レーベルから出たゆるいネオアコバンドのようなジャケットであるが降りかぶってくる音はまさに現在進行形ジャスピアノトリオであった。

例えば M1…。〈つくりばなし〉
耽美で玲瓏なピアノの調べがテーマを奏で、硬く骨太なベースがどすんどすんと、スピーカーの上のあちらこちらからシンバルが打ち上げ花火のようにそして残火もしっかりと降りかぶってくる。綺麗に録れている。テーマの後のベースソロにもピアノとドラムがゆっくりとじわりじわりと絡んでくる。気がつくと大海の真中で情熱的なピアノソロが高波の様に次から次へと押し寄せてくる。最後の大波をくらったあとはまた静かなテーマを奏でて終わる。静から動の切替りが見事なこれぞまさに「劇場型ピアノトリオ」である。

例えば M3…。〈放たれし球〉
一つの球が三人の中に投げ入れられたのだろうか、直ちにその球は数を変え、色を変え、形を変えて三人のなかを四方八方上下左右に飛び回る。しかし決して球は下に落ちることはない。ドラムの音が盛んに手を変え品を変え “間 (ま)” を変えて「おいでおいで」をしているようだが球たちは揺らぎながらあっちこっちを元気よく飛び回る。やがて三人の “ゆらぎ” の周期が同期した時、再びテーマを奏でて一つの球に収束し、三人の掌中に納まるのである。

例えば M9…。〈ぼかし〉
音数の少な目なテーマを奏でた後はベースソロがその流れを受け継ぐ。芯のしっかりした硬く重いベースにシンバルとピアノが “ぼかすように” 漂っていく。終盤にピアノとドラムが一瞬流れを変え、分け入ってくる。途端に情熱的なピアノソロに入るとそれまでの雰囲気が一変する。まるでそれまでの “ぼかし” を振り払うかのようだ。ドラムソロに受け渡されるとリズムが小刻みに震えだす。その後は再びテーマを静かに奏でる。これも「劇場型ピアノトリオ」の音。

小柄と見受けし山田のピアノは耽美で情熱的で力強く、速い旋律を奏でてもその打音は決して衰えることがない。聴いていて大変心強い。

来たる10月8日、松本にその音の波が押し寄せてくる。今度はその波を受け取るばかりか、こちらからも波動をお返しできる!双方から繰り出される波がある時は打ち消され凪に、またある時は何重にも重なり合う…。
そんな極上の場にこの身を置くこととなる。

“つくりばなし” が  “現実の体感” に変わる瞬間に立合えるのである。

山田 貴子

国立音楽大学ピアノ科、ボストン・バークリー音楽大学卒業。
日本ピアノ教育連盟オーディション奨励賞、全日本ソリストコンテスト奨励賞、浅草ジャズコンテストバンド部門銀賞、他受賞。
https://takakoyamada.amebaownd.com/

小美濃 悠太
1985年、東京生まれ。一橋大学社会学研究科修了。
幼少の頃より続けていたエレクトーンを通じてジャズに出会う。高校に入学後、ジャズを演奏できる楽器を習得するために吹奏楽部に入部。コントラバスとエレクトリックベースを平行して学ぶ。ジャズベースを山下弘治氏、アルコ奏法を高西康夫氏、斎藤輝彦氏に師事。
https://yutaomino.com/

斉藤 良
1978年広島市出身。7歳から和太鼓、12歳でジャズドラムに転向。16歳で市内のジャズクラブで清水末寿グループのドラマーとしてプロデビュー。19歳で上京後、鈴木勲、本田竹広、高橋知己、加藤真一等のグループに参加。2010年、初のリーダーバンド「秘宝感」を結成し、同年アルバムリリース。その後はジャズやブラジル音楽を中心に、小野リサ、saigenji、orange pekoe、tryphonic、松下美千代 Trio、DOMADORAなど多岐に渡る活動を繰り広げる。
https://ryosaito0707.jimdofree.com/


♫ 録音評(及川公生)
https://jazztokyo.org/reviews/kimio-oikawa-reviews/post-44477


市之瀬浩盟

市之瀬浩盟

長野県松本市生まれ、育ち。市之瀬ミシン商会三代目。松本市老舗ジャズ喫茶「エオンタ」OB。大人のヨーロッパ・ジャズを好む。ECMと福助にこだわるコレクションを続けている。1999年、ポール・ブレイによる松本市でのソロ・コンサートの際、ブレイを愛車BMWで会場からホテルまで送り届けた思い出がある。

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