#1651 『Robert Majewski / My One and Only Love』
『ロベルト・マイェフスキ /マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ』

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text by Hiroaki Ichinose  市之瀬浩盟

ZAIR (Poland) ZAIRM001

Robert Majewski(flh)
Bobo Stenson(p)
Palle Danielsson(b)
Joey Baron(ds)

1. When I Fall in Love (E. Heyman, V. Young)
2. Body and Soul (E. Heyman, F. Eyton, J. Green, R. Sour)
3. My One and Only Love (G. Wood, R. Mellin)
4. A Child Is Born (T. Jones)
5. The Nearness of You (H. Carmichael, N. Washington)
6. Ballad for Bernt (K. Komeda)
7. Stella By Starlight (N. Washington, V. Young)
8. Nie Budzcie Mnie (J. Przybora, J. Wasowski)
9. Never Let Me Go (J. Livingston, R. Evans)

Recorded at Studio S-4, December 12-14, 2010
Recorded by Tadeusz Mieczkowski
Mastered by Piotr Kokosiński
Produced by Tomasz Gąssowski


私には仕組みはよく解ってはいないのだが、いまや音楽はCDやレコードを買うのでなく、ダウンロードするものだそうだ…。 レコード会社はもとより演奏者までが率先してネット配信に重きを置いているそうだ。 そもそもミュージシャンが1曲1曲、自身の身を削って作曲し、演奏、録音をして、曲順を吟味し、ジャケットのデザインを煮詰め、それら全てを紡ぎ上げて最後に完成したものがアルバムなのではないだろうか、自分はそう今まで信じてきたし、そう接してきた。だが今ではリスナーはネット上で簡単に試聴ができ、あろうことかアルバム1枚全部ではなく、気に入った曲だけを1曲1曲選んでダウンロードして曲順も好きなように並べ、それに対して対価を払うのだそうだ。自分が直に手にとって、見て、触れて…音より前に己の視覚・触覚に強烈に訴えかけてくるアルバム・ジャケットが無いのである(デジタル・ブックレットもあるそうだが) 。無論、決して手を抜いているとは思ってはいないが、ミュージシャンがリスナーに対して異常に謙(へりくだ)っているように感じてしまうのは私だけだろうか? そうやって聴いていて演奏者の殺気が感じ取れるのであればそれはそれでとやかく言う話ではないのだが、私には昨今の流れにはとてもついていけない。

前置きが長くなってしまったが、ポーランドのトランペット奏者ロベルト・マイェフスキのワンホーン・カルテットである。 演奏曲をご覧になってお解りの通り、全曲スローバラードで押し通した。どの曲も”締めの1曲”としてしんがりに控えそうな曲ばかりだがここには散漫さは全く無い。演奏者の力量の賜物である。共演者は今さら説明もいらない3人。ECMの看板奏者である。ドラムのジョーイ・バロンもスティーヴ・キューン、ジョン・アバークロンビー、フェレンツ・シュネートベルガー、ビル・フリゼール、ヤコブ・ブロなどと共演を重ね、今やECM常任ドラマーのおひとりとなっている。正直、私にはジョン・ゾーンの『MASADA』で強烈なイメージを焼き付けてくれているのでどうしても”えっ”と今でもなるのだが、ここでは見事に後方支援に徹している。 同じトランペット奏者ヘンリック・マイェフスキを父にもつロベルト、倅はピアニストのヴォイチェフ ・ マイェフスキという音楽一家。本作ではトランペットを持たず、フリューゲルホーン1本で挑んでいる。これが全曲にエッジが丸く、温かみのある優しい音となって聴き手にしっかりと響いてくる。この狙いが見事に成功したということだろう。 またジャケットが秀逸で、まさに作品のイメージを視覚から代弁してくれている。美しい情景が見事である。さらに3面デジパックを開くと、真ん中にディスクが収まり、左面にレコーディング演奏風景、右面に4士の写真が共にセピア色で載っている。この写真がまたたまらない。とくに4士の面構えが極上である。4人が共に互いを理解し認め合って演奏をしている、その気持ちがひしひしと伝わってくるのである。 スピーカーに向き合って演奏を味わい、ジャケットの写真に目を落しその情景に佇み、レコーディング・スタジオと4士のお顔に向き合いながらあたかもその場に居合わせるかのように…この身を優しく包んでくれるのである。

これからは本当に音楽も”ペーパーレス”になってしまうのだろうか…日々不安でしようがない。そうなってしまったら、もしかすると自分はもう新譜は買わない、買えないということになるのか…。 もちろん私は50〜60年代のジャズにリアルタイムで接してはいないが、今でも「この頃のジャスが1番、全て!」と大道を闊歩するファンが多いと聞く。時代はズレるがやがて自分も「この頃のジャズが最高!」とか言いながら己のコレクションのみを聴き篭(こも)る”ジャ爺”と化してしまうのではないか…最近本気でそう思うようになってきた。

市之瀬浩盟

市之瀬浩盟

長野県松本市生まれ、育ち。市之瀬ミシン商会三代目。松本市老舗ジャズ喫茶「エオンタ」OB。大人のヨーロッパ・ジャズを好む。ECMと福助にこだわるコレクションを続けている。1999年、ポール・ブレイによる松本市でのソロ・コンサートの際、ブレイを愛車BMWで会場からホテルまで送り届けた思い出がある。

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