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CD/DVD DisksNo. 263

#1963『大西英雄/ヒデヲの間』

text by 金野ONNYK吉晃

地底レコードB91F

大西英夫 (ds, vo)

1.いぬ
2.チーズはどこにも行かない
3.ファットボーイ笛
4.はと
5.うし
6.せみ
7.キツネ
8.カタツムリ
9.ぞうさんのおさんぽ
10.キイロテン
11.やさい
12.にわとり
13.7と5
14.富士山
15.スペインの村
All songs written by 大西英雄 except [富士山」written by 電気グルーヴ

Recording, mixing & mastering engineer: 采藤史朗
Recorded at Tuppence House 1st Studio & 目黒倉庫
Produced by大西英雄


「これ、なんですか?」
「だから、ドラマーが歌って叩くという曲集だよ」
「ドラムだけ聴くとかなりタイトでカッコいいですよね」
「じゃ、歌はダメなの?」
「ていうか無意味な歌ですよね。遊び歌みたいな」
「我々日常の言葉の大半は無意味じゃないか。今更普段は意味があることだけ言ってるようなフリをするなよ」
「いやいや、これを聴くと、まあ普段はベースとかギターとかキーボードとかが重なって、いわゆる音楽っぽくなってるんだよな、ということを逆照射してくれますね」
「気障な言い方だな。例えばね、タブラ奏者が弟子に教える時って全部フレーズを口で言う訳だ。それを覚えてじぶんで再現する。だからドラムやってても、楽譜で指示するだけじゃなくて、『そこでドラッタタ、ダラディカドンとくるわけよ』とか言えば勘のいい奴は分かるじゃない。その延長上にあると思ってもいいんじゃないか」
「なるほどね。確かにこうしてドラムだけ延々と聴くってことはあまりないですよね。」
「いやあっても。即興で、あまり定型リズムをとらずに勝手気ままに叩きまくるのが多い訳だ。まあ色々思い出してもほとんどそうだ。」
「トラック12は即興じゃないでしょうかね。不定型で。タイトルが不思議。他はみな近い所にあるけど、いきなり『スペインの村』」
「うん、一番面白く無いのはそのトラックだな。不定型なのに先が見える。よくあることだが、リズムキープに優れた人の即興がいまいちで、その逆もある」
「けどソロアルバムを出すのは後者でしょ」
「だから定型リズムでソロアルバムを創るというのは相当にユニークだ。紋切り型のなかに自己を嵌め込みつつ聴かせるというのは確かに伝統音楽、伝統芸能にはあるかな」
「仙波清彦の弟子という事ですから」
「即興に良くあるドラムソロみたいなのはもうクリシェとして陳腐化しているという意味では、こんなあり方もあるんだというアンチテーゼになる」
「あ、そう言えばかなり近い存在を思い出しましたよ」
「吉田達也?」
「いえ、彼より、吉田が私淑しているというチャールズ・ヘイワードですよ!」
「ああ、それは言えるかもな。トラック12の『にわとり』なんてミックスからしてそういう感じがある。トラック1から3あたりの脳天気な雰囲気は払拭される」
「でしょ!オカズ叩きまくりじゃないところも近い。もしこれでハイハットがもっとビシビシきたらヘイワードですよ」
「誰かに似てるって言ってレビューにしたら手抜きだな。まあヘイワードは歌詞が結構現状批判を表明しているがね」
「歌詞にメッセージ性が乗せられないのは本人のどのような意志なんでしょうかね。音それ自体がメッセージだとでもいうような」
「まあシンプルに見えてかなり音の取り方には気を使っているし、多重録音も効果的だ。絵もシュールでいいね」
「次はカバー集を期待しますよ」

金野 "onnyk" 吉晃

Yoshiaki "onnyk" Kinno 1957年、盛岡生まれ、現在も同地に居住。即興演奏家、自主レーベルAllelopathy 主宰。盛岡でのライブ録音をCD化して発表。 1976年頃から、演奏を開始。「第五列」の名称で国内外に散在するアマチュア演奏家たちと郵便を通じてネットワークを形成する。 1982年、エヴァン・パーカーとの共演を皮切りに国内外の多数の演奏家と、盛岡でライブ企画を続ける。Allelopathyの他、Bishop records(東京)、Public Eyesore (USA) 等、英国、欧州の自主レーベルからもアルバム(vinyl, CD, CDR, cassetteで)をリリース。 共演者に、エヴァン・パーカー、バリー・ガイ、竹田賢一、ジョン・ゾーン、フレッド・フリス、豊住芳三郎他。

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