#1968 『Toshinori Kondo Plays Melodies/Born of the Blue Planet』

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Text by Kayo Fushiya 伏谷佳代

Toshinori Kondo Recordings
TKC016
2020年3月11日発売

近藤等則 Toshinori Kondo (electric trumpet)

Tracks:
1. Womb Song
2. Stars Night
3. Morning
4. A Song for the Small Planet
5. Pikadon
6. Blue Walk
7. Flying Soul
8. Peaceful Light
9. Back to Space

Total time: 38:59

All songs are composed by Toshinori Kondo
Recorded by Toshinori Kondo @ Kondo Soundbody Lab, Sep.2019
Jacket Design: Aki Zaoya


“Love the Earth”プロジェクトとしてIMAバンド名義でのライヴ盤『Typhoon19』と同時発売された新譜。『Typhoon19』が動ならば、この『Born of the Blue Planet』は静をなす。深いしじまへと誘うエレクトリックトランペット・ソロ9編。アルバム・ジャケットの瞑想的なブルーの滲みが暗示するように、無限の拡がりのなかへダイヴするような解放感と、心地よい脱力に呑み込まれる。まさに大海に抱かれる感覚だ。「青い星に生まれた命に捧げるメロディを吹きたくなった」とは本人の弁だが、世界のフリー・インプロヴィゼーション・シーンで常にフロントを張ってきた近藤等則と「メロディ」の組み合わせに若干の違和感を覚えるのもつかの間、エレクトリックトランペットの音色がとてつもなく凝縮された濃度を保ちつつ、独立した宇宙として浮遊していることに気がつく。「フリー」の身上である激音の発露と、エネルギーの総量に変るところはない。打ち込み部分とトランペットのソロ部分は、相乗はしても決して溶解することはなく、その水と油のような共存関係が逆に生のリアリティを深めてくれる。無意識を直撃するディストーションや掠(かす)れ、激しい圧に時おり揺さぶりをかけられつつも、心理的な鎧がどんどん瓦解してゆく。呼吸すること、耳を澄ますこと、静視すること、鼓動をシンクロさせること—そうした生命としての原初的な五感に肉体が解体される。一から組み直すように。アルバムを聴き終えた後に覚える、内臓が裏返るような清々しさはそれゆえだろう。テクノロジーのうえに成り立つ音楽であるのに、到達している境地は柔和で清澄。すっと心に浸透する音色が何より魅力的だ。そこには、さまざまな相剋を超越した後に訪れる虚無や、どこか東洋的な音韻もたゆたう。(*文中敬称略)


<関連リンク>
http://www.toshinorikondo.com/

伏谷佳代

伏谷佳代

伏谷佳代 (Kayo Fushiya) 1975年仙台市出身。早稲田大学卒業。幼少時よりクラシック音楽に親しみ、欧州滞在時 (ポルトガル・ドイツ・イタリア) に各地の音楽シーンに通暁。欧州ジャズとクラシックを中心にジャンルを超えて新譜・コンサート/ライヴ評、演奏会プログラムの執筆、翻訳などを手がける。

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