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Jazz and Far Beyond

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CD/DVD DisksNo. 265

#1977 『The MacroQuarktet / The Complete Night: Live at the Stone NYC』

Text by Akira Saito 齊藤聡

Out Of Your Head Records OOYH006

Dave Ballou (tp)
Herb Robertson (tp)
Drew Gress (b)
Tom Rainey (ds)

1. Neuroplasticity pt. 1
2. Neuroplasticity pt. 2
3. Neuroplasticity pt. 3
4. Ducks & Geese … Or Rabbits? pt. 1
5. Ducks & Geese … Or Rabbits? pt. 2
6. Ducks & Geese … Or Rabbits? pt. 3
7. Ducks & Geese … Or Rabbits? pt. 4
8. Basal D. Ganglia pt. 1
9. Basal D. Ganglia pt. 2
10. Basal D. Ganglia pt. 3
11. Crossing the Threshold pt. 1
12. Crossing the Threshold pt. 2
13. Crossing the Threshold pt. 3
14. Crossing the Threshold pt. 4
15. Crossing the Threshold pt. 5
16. No Planet B pt. 1
17. No Planet B pt. 2

Recorded live at the Stone NYC on June 30, 2007 by Jon Rosenberg.
Remixed and remastered by Jon Rosenberg February 2019.
Artwork, layout, and design by TJ Huff (huffart.com).
Volume One is a reissue of the album titled Each Part Whole, originally released on Ruby Flower in 2009.
Volume Two is the second set from the night, and the recording is being presented here for the first time.
Both CDs present long improvisations and have been given index markers placed at musically appropriate points. They are presented here as one continuous album, but Volume One ends with the track Basal D. Ganglia (track 10) and Volume Two begins with Crossing the Threshold (track 11).

ザ・マクロクォークテットは、ハーブ・ロバートソン、デイヴ・バルーというふたりのトランぺッターが揃ったグループである。「カルテット」でなく「k」を挿しての「クォークテット」なのだが、これは本人たちによれば「仔細に視たものと全体を視たものとの混成語」だということであり、すなわち仔細が素粒子のクォーク、全体がバンドサウンドということになろう。名前も変わっているが、中身はもっと変わっている。

ロバートソンの音はつやつやとしていて、楽器のもつ快楽原則に従うように長く吹いて共鳴させる。バルーは楽器をより逸脱のツールとして使い、トランペット的でない濁りや断片化もみせる。とは言え、どちらの音なのか判別できないことの方が多い。ふたりの相互干渉はときにシンプルな描線の執拗な交わりあいであり、ときにサイケデリックな面的な広がりを持つものともなっている。

そして残響とともに幅の広いプラトーを創っては、ふたりのトランペットの音を下からさまざまな形で押し上げ遊泳させる役割を、ドリュー・グレスのベースが担っている。彼の繰り出す音は、鋭角のビートを刻み旋律で彩りを添えるといったものとは異なる。

トム・レイニーのドラミングをいちどでも観た者は、その個性を実感できるだろう。それは、ドラムセットの上、自身の目の前にあるものをひたすら力業で下に叩き落とすがごときものだ。その動作をともなうサイクルが、一貫して、独特の大きなリズムを創り出している。金管とのコラボレーションを意識してか、シンバルを擦る音でトランペットの方に接近するところなどお茶目である。

手練れの四者による音の遊戯のごときサウンドである。

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』、『オフショア』、『Jaz.in』、『ミュージック・マガジン』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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