#1975 『佐藤竹善/Rockin’ It Jazz Orchestra Live in Osaka 〜Cornerstones 7〜』

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Don’t Stop Me Now (Big Band – studio version) Music video

Text by Hideo Kanno 神野秀雄

佐藤竹善/Rockin’ It Jazz Orchestra Live in 大阪 〜Cornerstones 7〜
Chikuzen Sato / Rockin’ It Jazz Orchestra Live in Osaka -Cornerstones 7-

Universal Music Arts POCE-12141/2
発売日:2020年04月22日 価格:4,950円(税込)

DISK 1
1. Tell Her About It
2. VISION
3. If You Leave Me Now
4. Together
5. It Don’t Mean A Thing
6. Laughter In The Rain
7. Twilight Tone
8. FM
9. Heart To Heart

DISK 2
1. Birdland
2. Roxanne
3. It’s Only A Paper Moon
4. Lover, Come Back To Me
5. Do I Do
6. Don’t Stop Me Now
7. Can You Stop The Rain
8. Crazy Little Thing Called Love

Vocal: 佐藤竹善 Chikuzen Sato
Trumpet:エリック・ミヤシロ Eric Miyashiro、小澤篤士、二井田ひとみ、田沼慶紀
Trombone:中川英二郎、半田信英、鳥塚心輔、野々下興一
Sax/Woods:鍬田修一、真野崚磨、鈴木 圭、庵原良司、竹村直哉
Piano:青柳 誠、Bass:川村 竜、Drums:北井誉人、Guitar:梶原 順
Chorus:浦嶋りんこ
Special Guest:Flugelhorn TOKU
Arranger:エリック・ミヤシロ Eric Miyashiro
2019年12月28日(土)に大阪・オリックス劇場公演でライブ録音


佐藤竹善は、1963年、青森生まれ、同郷の藤田千章、西村智彦と結成したSING LIKE TALKINGで1988年にシングルデビューし、現在も活動の中心としている。また、塩谷哲とのデュオ・ユニット「Salt & Sugar」も24周年を迎え、その恒例イベントとして、多様なゲストを招きながら5月大阪での「Cross Your Fingers」と12月東京での「Saltish Night」を継続している。

そして、この「Cornerstones」は、佐藤竹善のソロ活動の中でも、1995年に開始した「カヴァー」にこだわったシリーズ。当時日本ではカヴァーがあまり認められない時代だったが、佐藤竹善が音楽的に影響を受けた邦楽から、ジャズやAORを含む洋楽までの名曲の数々を取り上げてきた。バックを”より本物”にすることにこだわり、これまでに、ビッグバンドとして、小曽根真 featuring No Name Horsesと<Continental>、 <Good Mornin’ Good Rollin’>などを収録している他、前アルバムは『My Symphonic Visions ~CORNERSTONES 6~ feat. 新日本フィルハーモニー交響楽団』として全曲オーケストラの演奏をバックに歌っていた。2019年リリースの『Don’t Stop Me Now~Cornerstones EP~』では、エリック・ミヤシロ率いるビッグバンドをバックにクイーンの<Don’t Stop Me Now>を歌い、他の曲ではTOKUをフィーチャーし、大儀見元率いるSALSA SWINGOZAとも共演している。冒頭のPVをご参照いただきたい。

『Rockin’ It Jazz Orchestra Live in 大阪 〜Cornerstones 7〜』は、そういった1995年からのCornerstonesシリーズの積み重ねを踏まえながら、その集大成として、2019年12月28日の大阪・オリックス劇場でのライブをそのまま2枚組CDに収めたものだ。洋楽の名曲に加えてSING LIKE TALKINGの 「Together」をあわせた17曲すべてをエリック・ミヤシロが編曲し、そしてバンドリーダーとなるビッグバンドがサポートする。コンサートに駆けつけることはできず残念に思っていたが、こんなに早くライブ盤として出るとは嬉しい誤算だった。

先にというか逆に言ってしまえば、エリック・ミヤシロの書くバンドアンサンブルとサウンドを愛するファンにぜひお勧めしたい。エリックは素晴らしい作編曲者でありながら、またBlue Note Tokyo All-Star Jazz Orchestra (BNTASJO) をはじめ幅広く活躍しているものの、アルバムとしては2010年の『Sky Dance』が最後となっていて、エリック独特のオリジナルを聴く機会も少ない。ここではブラスアレンジにおける”エリック節”が炸裂しており、全く手加減がない。<Birdland>などでは、旧EMバンドそのもののサウンドすら聴くことができる。

エリックは、1963年ホノルル生まれだから、竹善と同い年だ。高校3年生の時に、全米高校オールスターバンドのハワイ代表としてカーネギーホールにてメイナード・ファーガソンと共演し、バークレー音楽大学に学んだ後、メイナード・ファーガソン・オーケストラ、バディ・リッチ・ビッグバンド等で活躍していた。その後来日し、ファーストコールのトランぺッターとして君臨し、いまやブラス界のスーパースターだ。また小曽根真 featuring No Name Horsesのサブリーダーでもある。ストレートに演奏するから、集められた熟練の、あるいは気鋭のミュージシャンによるアンサンブルやソロも惜しげなく発揮されている。だから、エリックのファン、ビッグバンドファンにもお勧めしたい訳だ。とはいえ、エリックの新しいアルバム、オリジナルを主体にしたリーダーライブも引続き期待したいところだ。まずはBNTASJO plays Eric Miyashiroのライブを期待したい。

そのエリックが書いたアレンジを、またそのストレートなビッグバンドサウンドを竹善がそのまま受け止めて、最高の”うた”で応える。竹善の持つ抜群の歌唱力と表現力、本物の声があってこそ可能となっている。ビッグバンドの全力の音にまったくひけを取らない声量とパワーはさすがとしか言いようがないし。巧みなアレンジを前にシンガーの存在が小さく見えることもなく、その中で楽曲オリジナルの魅力が浮かび上がる。

15年前すでにNo Name Horseで共演し、素晴らしいハーモニーとスウィング、グルーヴを産み出していたものの、当時、全編ビッグバンドとのコンサートを構成するのが適当であったかどうかもわからない。その後もさまざまなジャズミュージシャンとも共演を重ねる中で機が熟して。今まさにビッグバンドとまっすぐ向き合う絶好のタイミングとなったのではないだろうか? 竹善による名曲カヴァーはSalt & Sugarでも多数観て来たが、カヴァーとは言え、オリジナルの真似ではなく、竹善自身の音楽として消化され、昇華されていく。今回もまさにその世界がビッグバンドサウンドとともに繰り広げられていった。

この素晴らしいコンサートが記録されたことを心から感謝しながら、いつか世の中で ”コンサート”が可能になり、このコンサートが再演されることを楽しみにしたい。

『Rockin’ It Jazz Orchestra Live in 大阪(Osaka) 〜Cornerstones 7〜』ライブアルバム PR動画

『My Symphonic Visions ~CORNERSTONES 6~ feat. 新日本フィルハーモニー交響楽団』

神野秀雄

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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