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Jazz and Far Beyond

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CD/DVD DisksNo. 219

#1325 『Jane Ira Bloom / Early Americans』

text & photo by Takehiko Tokiwa  常盤武彦

OUTLINE OTL142

Jane Ira Bloom (ss)
Mark Helias (b)
Bobby Previte (ds)

  1. Song Patrol
  2. Dangerous Times
  3. Nearly
  4. Hips & Sticks
  5. Singing The Triangle
  6. Other Eyes
  7. Rhyme Or Rhythm
  8. Mind Gray River
  9. Cornets Of Paradise
  10. Say More
  11. Gateway To Progress
  12. Big Bill
  13. Somewhere

Recorded & mixed by Jim Anderson at Avatar Studios, Studio B, NYC on July 16 & 17, 2015.

Produced by Jane Ira Bloom & Jim Anderson


異能のソプラノ・サックス・プレイヤー、ジェーン・アイラ・ブルームの長いキャリアで初めてのトリオ作品は、リズムとメロディが交錯する野心作だ。16枚目のリーダー作で、自らのレーベルOUTLINEからは、6作をリリースしている。パートナーに選んだのは70年代半ばから共演しているマーク・ヘライアス (b) と、2000年から共演しているニューヨーク・アンダーグラウンド・ミュージック・シーンの重要人物のボビー・プリヴェット (ds) だ。コードの束縛から解放され、ブルームのフリーキーなメロディが、柔軟なリズムにのって飛翔する。前作のバラード集『Sixteen Sunset』の静謐な音世界に、迸る激情が加わり、トリオとは思えない壮大な音世界がひろがる。オープニング・チューンの“Song Patrol”は、このトリオのステートメントを高らかに宣言した。シンプルなテーマ・メロディが、リズムの刺激され、ブルームのストレートなトーンと、正確なピッチで、自由奔放に駆け巡る。ヘライアスとブルームのデュオで幕明ける“Singing The Triangle”は、プリヴェットが加わるとドラスティックに変容し、リスナーを音楽的高揚に導く。骨太なヘライアスのラインは、このトリオの骨格をなし、プリヴェットはドラムスとパーカッションで、サウンドに鮮やかなカラーリングを施している。ファンキーなリズムの“Rhyme Or Rhythm”では、ブルームはエフェクターやマイクのオン・オフを駆使して、独自の音像を創造する。前作『Sixteen Sunset』の録音を手がけ、本作でも共同プロデューサーに名を連ねるレコーディング・エンジニア、ジム・アンダーソンの匠の技が、見事な瞬間を捉えた。前作の5.1chのサラウンド・ヴァージョンは、グラミー賞のベスト・サラウンド・サウンド部門にノミネートされた。本作も、サラウンド・サウンド・ヴァージョンでも、リリースされている。メランコリーでスピリチュアルな“Mind Gray River”は、このトリオの広大な表現領域を端的に顕している。唯一のカヴァー曲、バーンスタイン&ソンドハイムの“Somewhere”で、静謐に包まれてエンディングに至った。

6月5日のニューヨーク、コーネリア・ストリート・カフェにおけるリリース・ライヴは、インティメイトな空間が激しくも美しい3人のインタープレイで満たされた。ブルームは、ソプラノ・サックスを振りかざし、サウンド・エフェクトをかけ、プリヴェットは、シェイカー、リムショット、はてにはステージのパイプ配管まで叩き、ブルームに匹敵する奔放なプレイを展開。ヘライアスがどっしりと支えていた。力強いパートナーと共に、ジェーン・アイラ・ブルームの音楽的冒険は続く。

関連リンク Jane Ira Bloom  http://www.janeirabloom.com/

 

 

 

 

常盤武彦

常盤武彦 Takehiko Tokiwa 1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。2017年4月、29年のニューヨーク生活を終えて帰国。翌年2010年以降の目撃してきたニューヨーク・ジャズ・シーンの変遷をまとめた『New York Jazz Update』(小学館、2018)を上梓。現在横浜在住。デトロイト・ジャズ・フェスティヴァルと日本のジャズ・フェスティヴァルの交流プロジェクトに携わり、オフィシャル・フォトグラファーとして毎年8月下旬から9月初旬にかけて渡米し、最新のアメリカのジャズ・シーンを引き続き追っている。Official Website : https://tokiwaphoto.com/

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