#2006 『矢吹 卓/Modern World Symphony No.3』

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text by Yoshiaki Onnyk Kinno 金野 Onnyk 吉晃

* CD版とダウンロード版あり、いずれも全13曲
Piano and all composed by Taku Yabuki 矢吹卓

1. Black Moon
YUCCA (vo)  Atsuki Yoshida (vn&vla) Harutoshi Ito(vc) Hitomi Aikawa(vib)
Robert Bubby Lewis (b)  Charles Haynes (dr)  Miho Hazama  (strings arrangement)

2. Super Luminescense
Yuya Komoguchi (gt)  Irwin Hall( asax&tsax)  Shereef Clayton (tp) Anton Davidyants(b)  Federico Paulovich(dr)

3. Son Of A Gun
Mizuki Mizutani (vln) Kaori Sasaki (tb)   Yuya Komoguchi (gt)  Anton Davidyants(b)    Shane Gaalaas(dr)

4. Mind Blower
Frank Gambale(gt)  Mana Iwanaga (b)  Bam Alexander(dr)

5. Dance Of Ganesha
Atsuki Yoshida (vln)  Misaki Hatori(fl)  AH(vo)  Harutoshi Ito (gt)  Mana Iwanaga(b)   Hitomi Aikawa(mar)   Marco Minnemann(dr)

6. ZIP
Anton Davidyants(b)   Senri Kawaguchi(dr)

7. Future Paradox
Gianluca Ferro (gt)  Keiko Komori(ssax)  Atsuki Yoshida (vln)  Harutoshi Ito (vc)  Robert Bubby Lewis (b)  Marco Minnemann(dr)

8. Cats On The Keys
Atsuki Yoshida(vln,vla)   Harutoshi Ito(vc)   Hidehisa Sasaki(gt)   Mana Iwanaga(b)
Hitomi Aikawa(vib,glo)    Marco Maggiore(dr)    Miho Hazama  (strings arrangement)

9. Passion(CD版)
Marco Sfogli(g)   Philip Bynoe (b)   Senri Kawaguchi (dr)

10. Rising
Gianluca Ferro(gt)  Alberto Bollati (b)  Paolo Caridi(dr)

11. Dual Nature
Yo Onityan(gt)   IKUO(b)   Damien Schmitt(dr)  Yusuke Musumiya (vocoder)

12.Creation
AH (vo)    Hitomi Aikawa(vib,glo,mar,per)    Gianluca Ferro(gt)    Anton Davidyants(b)   Paolo Caridi(dr)

13.Activation
Marco Sfogli (gt)  Philip Bynoe(b)  Marco Minnemann(dr)  Alex Argento ( synth lead solo)

*ダウンロード版の9曲目は Memory Hill
9. Memory Hill (ダウンロード版のみ)
Allen hinds(gt)   Yuki Lin Hayashi(b)    Bam Alexander(dr)

Recorded at studio Dede, Japan and USA
Recording Engineer : Shinya Matsushita松下真也 , Akihito Yoshikawa吉川昭仁
Mixing Engineer : Masayuki Hoshi 星雅之
Mastering Engineer : Akihito Yoshikawa 吉川昭仁
Art design : Haruka Mori 森はるか


「量子化されたピアノは未来世紀の夢を見るか」

…あらゆる生気の流れとまことの温情とをこの身に受け入れよう。そして、明方になったら、燦爛たる忍耐で武装して、光り輝く街々へ入って行こう。(「訣別」西條八十訳 アルチュール・ランボー)

高円寺百景のキーボード奏者としても活躍する矢吹卓が、自らのプロジェクトとして世界中から30名以上の手だれを集め、梁山泊さながらの世界を作った。実に華麗、壮麗、絢爛である。その輝かしさに目がくらむ思いだ。冒頭に掲げた詩を真っ先に思い出したのは、この音楽にエラン・ヴィタールを感じたからだ。

年寄りの常として、この音楽を過去の誰かに例えるならば、フレスコバルディ?いやイタリアン・キーボード・プログレの世界だろうか。シンフォニックな、ルネッサンス合唱音楽の極みのような美観は、プレミアータ・フォルネリア・マルコーニや、あるいは国は違うけれどパトリック・モラーツの音楽を思い出さずに居られない。それは決してリック・ウェイクマンや、キース・エマーソンのそれではないし、ましてやアラン・ガウエン、デイヴ・スチュワートら、英国系の影のある音ではない。

そうだ、この音の明るさはラテンジャズか。彼等の演奏は、どの音域でもまるで同じ音圧で迫ってくる。それでいて決してデジタルではない。矢吹のピアノも陰影が無く、オルガン、チェンバロのように均等でタッチを感じない。もはや(いや既に?)指が「デジタル」なのだ。

プログレという言葉はジャズと同じくらい、語る人の主観で揺れ動くが、私としては、ある程度実験的であり、また一つのイデオロギーなどをもった前衛精神があるべきかと思う。その意味では矢吹の音楽は、テクニカルでマニエリスムに溢れているが、プログレではない。しかし、変拍子と複雑なリフと意外な和声といったプログレ要素を全部備えている。トラック5などザッパ的でもあり、そのあとに牧歌的なテーマのトラック6を配置、再び5のテーマが回帰して重なって行く弁証法的構造は見え透いているが、思わずにやりと。その後ミニマル的なフレーズの細胞が増殖して行く。

それでも不思議に何も残らない。音数が多ければ多いほど、イメージを押し流して行く奔流。それでいいのかもしれない。高速度で変化するカレイドスコープ、飛翔する音の妖精達。彼等の笑い声だけが残る。

「モダーン・シンフォニー」というのが、現代における交響楽という意味だとして、それが何程を内包するのか。言葉は空虚だ。その空虚に音が響く。

作品が悪いというのではない。非の打ち所がない。その光輝が私を避けさせるのだとしたら呪われているのは私なのだろう。



録音評(及川公生)
https://jazztokyo.org/reviews/kimio-oikawa-reviews/post-54706/
Interview #209(矢吹卓)
https://jazztokyo.org/interviews/post-55246/ ‎

金野

金野 "onnyk" 吉晃

Yoshiaki "onnyk" Kinno 1957年、盛岡生まれ、現在も同地に居住。即興演奏家、自主レーベルAllelopathy 主宰。盛岡でのライブ録音をCD化して発表。 1976年頃から、演奏を開始。第五列の名称で国内外に散在するアマチュア演奏家たちと郵便を通じてネットワークを形成する。 1982年、エヴァン・パーカーとの共演を皮切りに国内外の多数の演奏家と、盛岡でライブ企画を続ける。Allelopathyの他、Bishop records(東京)、Public Eyesore (USA) 等、英国、欧州の自主レーベルからもアルバム(vinyl, CD, CDR, cassetteで)をリリース。 共演者に、エヴァン・パーカー、バリー・ガイ、竹田賢一、ジョン・ゾーン、フレッド・フリス、豊住芳三郎他。

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