#2010『Ondřej Štveráček Quartet『Jazz na Hradě (Jazz at Prague Castle)』
『オンドジェイ・シュトヴェラーチェク・カルテット/ジャズ・アット・プラハ城』

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text by Ring Okazaki  岡崎 凛

中欧の注目プレイヤーとそのアルバム紹介

<このアルバム紹介シリーズでは、中欧と呼ばれる4か国、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、ポーランドのジャズ・プレイヤーのアルバムを取り上げます。そのほか、中欧のジャズ全般の情報、著者が中欧のジャズを聴くようになった経緯などを書いていきます>

① Ondřej Štveráček Quartet『Jazz na Hradě (Jazz at Prague Castle)』(CD, 2011/レーベル:Multisonic)

Ondřej Štveráček (tenor saxophone)
オンドジェイ・シュトヴェラーチェク
Ondrej Krajňák (piano)
オンドレイ・クライニャーク
Tomáš Baroš (bass)
トマーシュ・バロシュ
Marián Ševčík (drums)
マリアーン・シェフチーク

1. Úvod (Introduction by President of the Czech Republic Václav Klaus)
2. What’s Outside
3. Sash
4. Dedicated
5. Weaver of Dreams
6. Out-Sight
7. Trane’s Slow Blues
(composers: 2., 3., 4., 6. by Ondřej Štveráček, 5. by Victor Young, 7. by John Coltrane)

Recorded at Prague Castle in Prague, Czech Republic on Nov 23, 2010
Produced in association with the Prague Castle Administration


本作はチェコのサックス奏者、オンドジェイ・シュトヴェラーチェク(Ondřej Štveráček) のリーダーアルバム、2作目、2010年録音。
2020年までに8枚のリーダー作を出した彼について語るには、もっと新しい作品を選ぶのが望ましいかもしれないが、ファーストの『What’s Outside』に続くこのライヴ盤では、勢い余って異世界に突入しそうなテナーサックスとピアノのソロとの出会いがあり、彼のカルテットの持ち味を知るのにぴったりのアルバムではないかと思う。
その後も力作をリリースし続けた彼は、2020年に大きく作風の変化した最新作『Space Project』を出すまで、ほぼ一貫して「コルトレーン・トリビュート」を重要なテーマとしてきたと言えるだろう。2010年代にあえてハードバップとコルトレーンの探究を続けた彼のカルテットは、この『Jazz na Hradě』のような荒々しく疾走感に満ちたライヴ・アルバムで特に魅力を増していく。

本作はスロヴァキアの街Šahyに住む友人から送られてきた中欧CDの中の1枚で、チェコ大統領が自ら司会者を務めるプラハ城での定期ジャズコンサートに出演したオンドジェイのカルテットの演奏を収録している。最初に大統領の挨拶がチェコ語で1分流れたあと、オンドジェイのオリジナル曲〈What‛s Outside〉が大音量で始まり、その迫力に驚かされる。しばらく聴いて、このサックス奏者がジョン・コルトレーンを敬愛しているのは間違いないと思ったが、単にコルトレーンっぽく吹いているわけではないと直感した。彼のテナーは、深く沈み込むかと思えば、激しく咆哮しはじめる。そんな彼に応えるように、スロヴァキアのピアニスト、オンドレイ・クライニャーク (Ondrej Krajňák) の演奏も激しさを増していく。4曲めの〈Dedicated〉という、いかにもトリビュート作らしいタイトルの曲では、どっぷりとコルトレーン追悼ムードに呑み込まれてしまった。

このカルテットなら日本で人気が出るかもしれないと思って調べてみると、彼のアルバムをすでに入手して聴いているという日本のジャズファンのブログが見つかった。そこにはやはり、オンドジェイのサックスにコルトレーンへの思いを重ね合わせるような言葉が書かれていた。そして予想通り、彼のアルバムはその後日本のジャズCD通販サイトに続々と登場するようになった。

彼の名前は、Ondřejという綴りのために、オンドレイと発音する人も多く、苗字につけたカナもまちまちである(シュトゥヴェラチェクというカナ書き名のほうが、検索で多数の結果が出るかもしれない)。名前の読み方の難しさはとにかく、これだけ日本のジャズCD市場で注目されたチェコのサックス奏者は記憶にないので、Ondřej Štveráček のデビュー盤と本作のインパクトはかなり強力だったのだろう。
なお、ピアニストの名前はOndrejで、特殊文字ではない「r」が使われ、こちらの読み方は「オンドレイ」となる。

〈What’s Outside〉Ondřej Štveráček Quartet『Jazz na Hradě』:

オンドジェイ・シュトヴェラーチェクはまだ正式に日本のツアーを行っていないが、いつか来日を果たしてほしいと思う。彼のカルテットはジーン・ジャクソン (ds) の参加アルバムを2020年までに5枚リリースしているので、ジーン・ジャクソンと彼の日本ツアー実現を願っている。できることなら、日野元彦の〈流氷〉と板橋文夫の〈渡良瀬〉の2曲をリクエストして、オンドジェイのサックスで聴いてみたい。

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〈中欧ジャズアルバムの紹介にあたって①〉

中欧と呼ばれる4か国、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、ポーランドの音楽に関する寄稿をしたいという思いは以前からあったが、どこから手をつけたらよいか分からず、そのままになっていた。だが最近2人の中欧ミュージシャンの紹介原稿を書く機会があり、これが刺激となって、もっとこの地域のジャズについて書きたいという思いが強まった。

そのきっかけは、関西のライター仲間、しらきたかね氏、小島良太氏とネットラジオ「どたばたジャズ争論」を開設したことにある。自分も未熟ながらトークに加わることになり、各自が単独で音楽紹介をする企画では、チェコのヤロミール・ホンザーク(bass)とオンドジェイ・シュトヴェラーチェク(sax)を取り上げた。トークでカバーできない部分が多いので、動画の下に表示するテキストをしっかり書くことにした。

(Ondřej Štveráčekについての参考動画)

https://youtu.be/w_hsFv266K4

このネットラジオの企画を終えて、もっとさまざまな形で中欧のジャズについて語りたいと考えるようなった。毎月の投稿はできないかもしれないが、今後しばらく中欧ジャズ紹介を続けたい。

アバター

岡崎凛

岡崎凛 Ring Okazaki 2000年頃から自分のブログなどに音楽記事を書く。その後スロヴァキアの音楽ファンとの交流をきっかけに中欧ジャズやフォークへの関心を強め、2014年にDU BOOKS「中央ヨーロッパ 現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド」でスロヴァキア、ハンガリー、チェコのアルバムを紹介。現在は関西の無料月刊ジャズ情報誌WAY OUT WESTで新譜を紹介中(月に2枚程度)。ピアノトリオ、フリージャズ、ブルースその他、あらゆる良盤に出会うのが楽しみです。

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