#2034 『Angelo Verploegen / The Art of Traveling Light』
『アンジェロ・フェルフーヘン/アート・オブ・tラヴェリング・ライト』

閲覧回数 4,907 回

text by Hiroaki Ichinose 市之瀬 浩盟

Just Listen Records

Angelo Verploegen (flugelhorn)
アンジェロ・フェルフーヘン
Wim Bronnenberg (electric guitar)
ヴィム・ブローネンベルク
Jasper van Hulten (drums)
ヤスパー・ファン・フルテン

1. Hub’s Hub (Verploegen) 03:38
2. You’d Be So Nice To Come Home To (Porter) 07:47
3. Estate (Martino) 05:56
4. Time After Time (Styne) 04:42
5. Nature Boy (Ahbez) 04:30
6. Een Beetje Zenuwachtig (A Bit Nervous) (Mengelberg) 06:22
7. Dance Of The Infidels (Powell) 05:43
8. Baubles, Bangles And Beads (Borodin, Wright, Forrest) 05:22
9. Cry Me A River (Hamilton) 06:41
10. File Under Exit (Verploegen) 04:43
11. In The Wee Small Hours Of The Morning (Mann, Hilliard) 02:05
Total time: 57:34

Recorded at MCO Hilversum, June 17 &18 2020
Recording & Mastering engineer: C. Jared Sacks
Higher rate mastering: Tom Cailfield
Producers: C. Jared Sacks & Jonas C. Sacks


以前本誌5月号で紹介させていただいたオランダのフリューゲルホーン奏者アンジェロ・フェルフーヘンの新譜を早くも聴くことができた。

前作『The Duke Book』で相棒役を務めたドラマー  ヤスパー・ファン・フルテンに今回はギターリストのヴィム・ブロンネンバーグが加わったベースレス・トリオである。
あの時書かせていただいたように、当時病に伏せっていた私にとっては前作は一服以上の清涼剤となった。爾来、感謝の気持を持ちつつ彼の作品を探し求め、
自身のワンホーン・クァルテット: 『The Ballad Album』 (’11/challenge records/CR73318)
小橋敦子とベーシストとの変則トリオ:『Virgo』 (’19/jazz motion records/JIM74714)
韓国出身でオランダ在住のピアニストSoo Cho Trioに参加した:『Prayer』(’06/challenge records/CR73265)
をめでたく手にすることができた。

どの作品でもアンジェロのフリューゲルホーンはクールそのものである。決して吹き過ぎない。速吹きなどほとんど無い。しかし一音一音共演者に投げかけるべき言葉を吟味して奏でるその淡々、飄々とした芸風は他のどのフリューゲルホーン奏者とも異なる唯一無比の格別の味わいがある。もともと私は対象の奏者を他の奏者に喩えて「誰だれ風」と呼ぶのを忌み嫌っている。その人にとってそんな失礼な喩え方は無いだろうと思っているのでアンジェロのこの音はいつも私の心に響き渡るのである。本当に心許せる仲間の奏者と演奏ができる歓びがひしひしと伝わってくるのである。

さて、前作はエリントン作品大会であったが、本作はアンジェロの筆なるM1,10の他は皆様も聴き馴染んでいる”永遠のスタンダード・ナンバー”を取り上げ、聴き手の首根っこを鷲掴みにして決して飽きさせない57分間に仕上げた。
前作でのドラマーのヤスパーがアンジェロに寄り添い、間 (ま)を埋めていくタイムセンスにおいちゃんは舌を巻いた。M4ではデュオでそれを再演してくれた。M5では一転、ヴィムとのデュオでこれまた控えめに寄り添うウィムのギターにアンジェロが優しく寄り添う。
「組んず解れつ」という言い回しは大抵熱く激しい様をあらわすようだが、そういった経験にすこぶる乏しいおいちゃんにはこの演奏の場合も大いにありなのではと感じてしまう。
最後はアンジェロが2人との出会いを総括するようにサラッとソロで締めくくる。

本作を制作した”Just Listen Records”なるレーベル、少し調べてみたらオランダ国内では、「世界最高峰の高音質録音と超一流の演奏にこだわり続ける名エンジニア、ジャレッド・サックスによって設立され、2020年に創立30周年を迎えたオランダのハイ・クォリティ・レーベル」として令名を馳せているそうだ。(参照・東京エムプラス)
レーベルのホームページにはクラシックの作品ばかりがある中でアンジェロの本作、前作ともう2作がなぜか載っている。

使い古した旅行鞄を重ね合わせたジャケットがこれまた秀逸である。ヤスパー用、ヴィム用の鞄を自分の鞄の上にのせ、その隙間に腰掛けてトランペットを吹いている。共演の2人の鞄の中から次々と取り射出される音にアンジェロが応えて3人で”極上の旅”へおいちゃんを誘ってくれた。ジャケットにはもう2つ鞄がある。その両方に3人が今回の演奏をしっかりと丁寧にシワを残さず綺麗に仕舞い込み、1つは3人が颯爽と持ち帰り、もうひとつはおいちゃんに「ほらっ、お前持って帰ろよ!」ってホイっと手渡されたような、そんな心温まるひとときを与えてくれたことに今回も感謝する次第である。

市之瀬浩盟

市之瀬浩盟

長野県松本市生まれ、育ち。市之瀬ミシン商会三代目。松本市老舗ジャズ喫茶「エオンタ」OB。大人のヨーロッパ・ジャズを好む。ECMと福助にこだわるコレクションを続けている。1999年、ポール・ブレイによる松本市でのソロ・コンサートの際、ブレイを愛車BMWで会場からホテルまで送り届けた思い出がある。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。